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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
29日目、思い出いっぱいなのです
325/934

転移29日目 記入日 A,C, 27/03/24



 彼女と過ごす、最後のきやすばる王国、王都。

 彼女の温もりと共に起き、堪能し、今日が始まりました。


 明日からも一緒に居られますけれど、違った雰囲気のものとなるでしょう。

 行くのは、四人。

 共和国を救うために、エルさんを救うために立ち上がった、シーアさん。

 最初は険悪で、今にも殺そうとしていた自身の父ライゼさんを助けるために前を向いた、兄弟子さん。


 生まれた時から巫女としての資質を兼ね備えた、最高峰の巫女であり、この世界の救世主。多くの人に幸せを届けるために赤い瞳を煌かせる、彼女。

 そして、最初からこのためだけに世界にやってきた、私。


 最初はなりゆきだった。

 なりゆきで、敵と対峙し、倒してしまった。

 なりゆきで世界を救う事になってしまった。

 なりゆきでこの国にやってきた。

 全部、なりゆき。


 でも、なりゆきじゃなく、確固たる決意を持ったものがあります。

 私の弱い心、蓋で閉じ込めた秘密。十六年間、ずっと逃げていたそれらを跳ね除け突き進んでもなお止まらないほどの、私の想い。

 彼女への想い。


 世界の救世主には、私はなれなかった。

 犠牲を出してしまった。涙を流させてしまった。見て見ぬ振りをしてしまった。

 だけど彼女の英雄には、まだなれます。

 彼女が、なって欲しいと言ってくれた。

 

 彼女のためだけに、刀を振るうことは出来るんです。

 私は彼女ためになら、なんにだってなれる。

 彼女の望むこと全てを、してあげたい。

 明日から、彼女だけの私です。


 きやすばるでは、多くの人に出会いました。

 コルメンスさん、エルさん、酪農家の皆さん、市場の皆さん、ラヘルさん、デリアさん、ロミーさんリタさん、支配人さん。クランナちゃん。

 でるくさん、ライゼさん――アンネさん。

 兄弟子さん、シーアさん。

 他にも色々な人に出会いました。

 

 凱旋なんて、大それた事は必要ありません。

 魔王を倒して帰ってきたら、少しだけ労ってもらえればいいです。

 おいしいケーキやお肉料理、ささやかな花束、味わい深いコーヒーに、優しい言葉。

 みんなが笑顔で出迎えてくれたら、それだけでいいです。


 明日出ます。


 私の膝で眠るように目を閉じてくれている彼女。空き部屋に居るエリスさんとゲルハルトさん。

 三人の家族の笑顔を、私が守ります。


 神さま、楽しみにしていてください。

 世界に貴女の優しさを、届けてまいります。


 私と、大切な彼女で。



ブクマありがとうございます!

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