私と彼女の世界
高台に登る前にアリスさんが家に寄りたいというので、着いていっています。
(神さま。どういう、ことだろう)
私の頭では、オルテさんの言葉が反芻されています。違和感が、波のように押し寄せました。
(神さまがこの集落にいるなら、なんであんなにも、無視するような状況だったんだろう。神さまが現れたにもかかわらず、誰も反応しなかったし。そもそも本人がいるなら、神さまに向かって祈りを捧げるんじゃ……)
気になることが次々出てきて、混乱してきたころ、アリスさんの家に到着しました。
「リッカさま。すぐ戻りますので、少々おまちください」
「はい、わかりました」
そう言って、アリスさんは中へ入っていきました。
(……わからないことは、聞こう。きっとそれも含めて、あの人は教えてくれる……気がする)
アリスさんが家の中から、魔法使いがもっているような杖を携え出てきました。
「それは?」
思わず、聞いてしまいます。
「これが、必要です。使わなくていいのなら……それが一番でしたが、あのようなことがあった後では」
アリスさんが、本当に、悲しそうに答えてくれます。
何かをするのに、必要なのでしょうか。私の頭には、昨夜の不思議な力を使うアリスさんの姿が、思い浮かんでいました。
少し重い空気のまま高台に登ると、見張りの方がいました。昨日のことがあったせいでしょう。いっそうの緊張感と集中力で臨んでいます。
崖の縁で腰掛ける女性には気づいていないかのように―――。
アリスさんが見張りの方に少し席を外して欲しいとお願いしています。ですけど――。
「アルレスィア様、昨日のことがあります。我々が欲にかまけたばっかりに……。ですから、今回はお聞きすることは出来ません」
昨夜の件で責任を感じてしまっている見張りの方々が重々しく、責任を感じています。
「昨日の件は、私に非があります。私がしっかり守りを固めていれば。ですから、今日はご安心ください」
アリスさんが見張りの方たちのせいではない、と杖を強く握り締め伝えています。
そして、強く輝き出した眼差しと共に、昨夜の私に起きた変化と同じく……ローブの紋様が、アリスさんの髪色のように綺麗な銀色に……光輝きだしました。