転移27日目 記入日 A,C, 27/03/22
二日も私は寝ていました。
彼女を、一人に。
一人ではなかったと、彼女は私が居てくれたからと、言ってくれました。
ですけど、意識のない私をずっと看病してくれた彼女の悲しみは、私が目覚めた時の表情で全て分かったのです。
何が起きたのか分からないという表情を一瞬見せ、私と目が合うと、幸福の花が彼女の表情に咲いたのです。
私を抱きしめる腕は、震え、力が込められていました。
ですけど、私を壊さないようにと、優しく。
私の怪我は、どのようなものだったのでしょう。
視界が、真っ赤に染まったところまでしか、覚えていません。
痛みよりも、彼女の絶望した表情が、私には印象深いのです。
死ぬかもしれないと、彼女以外が考えてしまうような怪我だったのは、確かです。
私は、死に、かけたんですね。
否応なく、死を意識します。
泥中を泳ぐように、体が重く、死が纏わり尽きます。
そんな私を守るように、彼女が私を抱きしめてくれる。
暖かく、柔らかいです。
シーアさんから、司祭の死は、私だけの所為ではないと伝えられました。悪意が司祭の魔力を全て持って行ったのだと。
殺してしまったと、思っていました。
でも、いつかは、そうなるでしょう。
甘えは全部、西の戦場に置いてきました。
私は壊れてしまいました。
感知が出来ません。
世界が未知なものだと、知ります。
彼女しか、今の私には感じ取れません。
でも、それでもいいと思ってしまいます。
それでは、ダメなのに。
魔力も、練る事ができません。
体の補助も出来ず、魔法も使えず……。
早く治さないと、彼女を守れません。
早く、早く……。
普段日記を書くとき、彼女とは別行動を、しています。
でも今は、離れたくありません。
ですから、私は彼女を抱きしめて、私の顔が見えないように、彼女の顔をお腹に押し付けるのです。
少しくすぐったいですけれど、彼女が傍に居るだけで、いつもよりマシなのです。
私のお願いをしっかり聞いて、私にしっかりとしがみついてくれている彼女の頭を、撫でてみました。
ぴくんと動いた耳が可愛いです。それと同時に吐息がお腹を更にくすぐり、声が出てしまいました。
帰ってこれた歓びと、彼女が傍に居てくれる事の奇跡。
私はやっぱり、幸せものです。
だから、犠牲者のために、私は立ち止まりません。
幸せな私に出来る、この世界への恩返し。
ライゼさんも、取り戻します。
魔王を倒すまで、止まりません。
止まり、ません。
私のせいで、多くの命が奪われてしまったのですから。




