生きてる②
緊張と興奮で震える手で、アリスさんの予備のローブを受け取ります。ただ一緒に、横になっていただけなのに、私すごく……興奮? しています。
(興奮は違うか。えっと……)
「あ、あの……こちらをどうぞ。リッカさまに合わせて繕ったローブです」
顔を真っ赤に羞恥に染め、手渡ししてくれるアリスさんにドキドキしてしまいます。何でしょう。扇情的? 良く分かりません。私の語彙では、今のアリスさんを形容出来ません。
(私に合わせて……?)
と、言われましたが……もう作れたのでしょうか。まさか寝ずに。
「いえ……その辺りも含めて、今日ちゃんと……全部説明します」
「わかりました。お願い、します」
顔に出ていたのか、私の疑問に対しての答えが返ってきました。聞きたいことは、山ほどあるので……その言葉に、頷きました。
きっと、説明を受けると……私の日常は終わるのでしょう。ただの軽い、不思議な海外旅行。その程度と思っていた私の日常は――。
渡された服は、しっかりと私の体に合わせて作られていました。
主に胸の辺りとか。変更点は他にもあり、アリスさんの物とは違い、私のローブにはスカートの横部分、昨日戦いの最中切り裂いた場所に、大きなスリットが空いていました。
袖はより手が扱いやすいように調整されているのか、まったく邪魔になりません。
私が……戦いやすいように作られたかのような仕上がりに、私の心臓は少し強めに跳ねます。
でも私はこの仕上がりに、まったく嫌悪を感じませんでした。何故ならこれは、アリスさんが考えに考え抜いて作ったものだからです。
「――っ」
アリスさんが心配そうに、そして、まるでこの世の終わりと言わんばかりの悲しみに目を伏せます。
だから私は、アリスさんの頬を撫でました。
「とっても馴染みます。アリスさん、ありがとうございます」
大丈夫、そんな顔をしないで。と、頬からアリスさんの手へと指を滑らせ、握り、微笑みかけるのです。
そのまま手を繋いでいるのも、悪いので手を離します。
「ぁ……。――コホン。それでは、朝食の場までお連れします」
アリスさんが微笑みながら先導してくれます。少し落ち込んで見えたような。
アリスさんの家じゃなくて、昨日と同じく食事処で皆で食べるようです。皆で食べるのが、この集落の習慣のようですね。祈りを捧げるから、でしょうか。
道すがら、広場の椅子に、昨日まで居なかったピンク色の髪をした女性が座ってぼーっと空を眺めていました。
アリスさんはその女性を一瞥し、目礼をして歩いていきます。
(お偉いさん? 私も、したほうがいいのかな)
アリスさんに習って、私も目礼をしてから通ります。その女性がなぜか首を捻っています。
アリスさんの知合いでしょうか。
それにしても、綺麗な人でした。
アリスさんと出会ったときのような、痺れるような、魂を直接抱きしめられたような感じはありませんでしたが、あの女性を見ると、なぜか懐かしいような……?