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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
22日目、しゃるうぃー?なのです
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後日祭⑧



 神さまが居なくても、祈りに来てくれる方の数は多いです。もう少しで祭りが終わるという事もあるのでしょうけど、神さまの降臨と核樹の変化を聞きつけたのか二度目の方もいらっしゃいます。


 今、私達に駆け寄ってきてくれている子も、その一人です。


「巫女様!」

「こんにちは、また来てくれたんだね」

「こんにちは、元気でしたか?」

「はい!」


 初日で、疑いの目を向けられる中声をかけてくれた女の子です。


「お名前を教えて欲しいな?」

「ナターリエです! リツカ様、アルレスィア様!」

「ありがとう、ナターリエちゃん」


 元気に名前を教えてくれます。金色の髪がウェーブがかっていて少し跳ねています。少し親近感。


「リツカ様、アルレスィア様」

「久しぶり、クランナちゃん。お散歩かな?」

「はい、お父様が三日目だけお休みを取れたので少しだけ」


 クランナちゃんがご家族と一緒に広場にやってきました。

 

「……」


 クランナちゃんが私達の顔を見ています。


「どうしたの?」

「……良かったです。お二人の事が、信じてもらえて」

「え?」


 クランナちゃんが意味深な事を言います。


「友達が、リツカさんはうそつきだって」

「うそつき?」


 クランナちゃんの言葉にアリスさんが反応します。


「はい。巫女だって証拠なんて何もないし、普段何してるか分からないからって、親から聞いたって」


 泣きそうになりながらクランナちゃんがぽつぽつと話します。


「私が、お父様はリツカ様とアルレスィア様に助けられたって言っても、証拠がないって……」

「証拠って、必要なんですか……お父様が助かったのは本当なのに……」


 クランナちゃんが泣き出します。

 私は、クランナちゃんの頭を撫でます。


「ありがとう、クランナちゃん」

「リッカさまのために、泣いてくれるのですね」


 アリスさんが膝をつき一緒に撫でます。慈しむように優しく。


「確かに私は正体不明すぎるね」

「リッカさまはどうしても目立ってしまいますから、気になるのでしょう」


 私の言葉に、アリスさんが困ったように笑います。


「それで、昨日の演説で?」

「はい。誤解が解けて、良かったです」


 アリスさんの確認にクランナちゃんがはにかみます。


「大丈夫?」

「ありがとう。あなたは――」

「私ナターリエ!」

「私は、クランナです」


 子供達がすぐに仲良くなります。やっぱり、子供は純粋ですね。


「クランナちゃんは巫女様たちとお知り合いなの?」

「うん。お父様を助けてもらったの」

「そうなの? すごい!」


 クランナちゃんが誇らしげに答え、ナターリエちゃんがぴょんぴょんと喜びます。


「リツカ様かっこよかったね」

「うん! アルレスィア様も素敵!」


 話題は私達のようです。微笑ましいですが、少し恥ずかしいですね。


「クランナ、巫女様たちはこれから祈りをするんだ。そろそろ行こう」

「ナターリエ、私達も行くよ」

「お父様、ナターリエちゃんと一緒でいいですか」

「お父さん!」

「あぁ、構いませんか?」

「えぇ、もちろんです」


 どうやら丸く収まったようですね。残り少ないですが、楽しんで欲しいです。


「アルレスィア様、リツカ様失礼します」

「またいつかお会いしましょう!」


 仲良く手を繋いで駆けて行きました。


「またね」

「いずれまた」


 アリスさんと一緒に手を振って、見送りました。


「子供は、すぐ仲良くなるね」

「私達がそれを言いますか?」

「それもそうだね」


 出会ってすぐ仲良くなった私達は微笑みあい、改めて祈りを受け始めました。



 喫茶店に入って、一時間程ですか。


 説教自体はすぐ終わりましたが、後ろでうろうろするくらいなら一緒に居なさい、とは。


 こんな甘い空気のところで一緒になんていられません。

 早いところ撤収します。


「シーア?」

「そろそろ清掃です。私は戻ります」


 皆リツカお姉さんと巫女さんの事で色々言ってますけど、どう考えても男女の睦言に比べたら可愛いものです。


「我々も王宮に戻るとしましょう」

「えぇ、シーア。広場まで一緒に行くわよ」

「はい」


 そううまいこと脱出させてもらえませんね。


「清掃の景品とは何なのでしょう?」

「木製のアクセサリーですね。職人の方達に協力していただき五万点程」


 お姉ちゃんと国王さんが話しています。清掃の景品がアクセサリーって太っ腹ですね。


「ただの木なんですか?」


 核樹ってことはないでしょうけど、気になります。


「ツァルナだよ。ツァルナ以外の木は神林以外ではアクセサリーに出来るほど強くないんだ」


 神林の木は核樹周辺の数本以外は人間が植えたものでしたね。リツカお姉さんと巫女さんが言ってました。


 ツァルナに関してはリツカお姉さんが喜ぶ程神林を感じるようですけど、他はそうでもないようですね。


「ツァルナのアクセサリーなら、リツカお姉さんも頑張って清掃しそうです」


 私の言葉に、冗談と思っているのか二人が笑っています。リツカお姉さんなら冗談にはならないと思うのですけどね。


「演説の時核樹の事をアルツィア様に聞いていたのでしょうけど、目に見えて喜んでましたからね。ありえるかもしれないわね」


 お姉ちゃんが笑っています。


 あの時のリツカお姉さんは完全に()()()()()()でした。

 核樹が急成長してるって聞いて居てもたっても居られないって感じです。


「リツカさんには程ほどにするように伝えましょう。皆さんも欲しいでしょうから」


 国王さんが苦笑いです。

 ツァルナは神林にも生えているっていうのは、そんなに知られていないと思います。国王さんみたいな神林好きやお花に詳しい方でもない限りですけど。



「お二人さん」


 シーアさんとコルメンスさんエルさんが帰ってきました。


「おかえりなさい」


 アリスさんは丁度浄化中なので私だけで出迎えます。


「そういえば、清掃の景品って何です?」

「ツァルナの木で作ったアクセ――」

「ゴミ袋一杯でしたね」


 シーアさんの言葉を聞き終える前にゴミを拾い始めます。


「ロミーさんもそうだけど、つあるなの花とか木をどうやって手に入れたんだろう。あれは神林だけのものじゃ……」

「いえ、ツァルナもその周辺の木もどこにでもあります。ツァルナは神林以外での育成は難しく、その他は育つには育ちますが普通の木ですね。あくまで神林だけが特別なのです」


 コルメンスさんが苦笑いで教えてくれます。”神林”の木は核樹の力で特別なものになっていますから、もはや別物ですね。

 私がつあるなを好きな理由は、アリスさんの……ですから。


「なるほど、じゃあ一杯集めて一杯貰いますね」

「いえ、欲しいのでしたら貴女には特別に――」

「自分で手に入れてこそです!」


 コルメンスさんが苦笑いで私を見ていますが気にしてはいけません。

 大物を狙っていけば一杯になります。


 広場には……。


「ゴミが、ない?」

「巫女様たちへの祈りの場となっていましたから、ゴミを捨てる人なんて居ないと思いますよ?」


 エルさんがクスクスと笑いながら私を見ています。


「そうですね。目ぼしい物も皆さんが拾ってくれていましたから」

「そうだったね……」


 アリスさんが微笑みながら戻ってきました。浄化は無事終えたようです。


「警備もあるし、諦めるしかないかな」

「大通りも余りありませんでした」


 私の落ち込んだ声にシーアさんが追い討ちをかけます。

 皆の美意識の高さに舌を巻きます。街が綺麗なんです、それでいいのです。



「そこまでゴミが集まるわけではないので、少しでもゴミを持ってきてくれた方に先着順で渡しているのですけれど」

「巫女さんとリツカお姉さんが率先して拾っていたら他の方も頑張るでしょうし、知らせずに居た方がいいのでは?」


 コルメンスの言葉にレティシアが微笑しながら応える。


「それで構いません。少しでも力になれるのなら」


 真面目に考えこむリツカを眺めながら微笑んでいるアルレスィアは、レティシアの提案に乗った。


「リッカさまなら、知っていても一杯になるまで頑張るでしょうから」 


 裏通りが一番多そう……でも私の管轄じゃない……。そう呟いているリツカを、アルレスィアが慈愛の目で眺めている。


「何にでも全力で取り組みます」


 肩を竦めて見送っているレティシアをよそに、アルレスィアはリツカに近づいて行く。清掃の事を話すのだろう。

 



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