胸騒ぎ②
お腹が鳴るの、しかたないですよね。私……お花見しようとしてたからお昼食べてませんし。何も食べ物もってませんし。これでも成長期ですし。
何でよりにもよって、アリスさんの前で。あぅぅぅ……。
「―――」
そうやって悶絶している私を、本当に、本当に愛でるようにニコニコと笑顔で見つめるアリスさん。 この追い討ちに私の顔はさらに赤くなってしまいます。
(うぅぅ。恥ずかしい……。もうゆるしてぇ……。私、ここに来てから良い所一つも見せれてないよぉ……)
「リッカさま、ご安心ください。料理には自信があります。きっと満足していただけます」
アリスさんも作ったのかな、食べてみたいなぁ。なんて考えていたものだから、頬が緩んでしまいます。
そんな私をアリスさんは、愛でるように見続けています。お母さんとは、別物の愛でるような視線です。私の頬を上気させる視線に、どぎまぎ。
(私、アリスさんには勝てそうにないなぁ)
そんなアリスさんを見ながら、ただただ笑顔がこぼれてしまいました。自嘲的な意味合いはなく、アリスさんとのちょっとした駆け引きが楽しくて仕方ないといった物です。
「!」
アリスさんまで、頬を赤くしてしまいました。見間違い? この集落から見える夕日は、本当に朱色ですから、ね。
食事処に到着したとき、私は驚いてしまいました。そこには机一面に並べられた料理の数々が、私達を迎えていたのです。
(え、どういうこと? 誰かの誕生日?)
もしかしてアリスさん? と考えそうになったとき、また頭に鈍いノイズが走ります。なに……?
その痛みに集中していたら、アリスさんの拍手が集会場に響きました。
「リッカさま、ようこそおいでくださいました。神林集落全員。あなた様を歓迎しております」
―――私の?
「リツカ様、こちらをどうぞ」
守護長オルテさんが、飲み物を持ってきてくれました。ほどよい酸味の香りが空腹にのたうつ私の食欲を刺激します。何のジュースでしょう。私の町にはありませんでしたね。
「えっと……私の、ですか?」
まだ、あまり状況を飲み込めていない私に、アリスさんの満面の笑みが飛び込んできます。
「はい。リッカさまの歓迎会ですっ」
どうやら、聞き間違いではないようです。
疑問は多いですけど、アリスさんから歓迎されているというのは……悪い気分はしません。