過去④
「リッカさまは”神林”の湖を通ってこちら側にきました」
落ち着いたアリスさんは祈るように話を再開します。その言葉に、その場にいた子供を除く全員が顔を見合わせ、話し始めます。
「―――では、彼女が……」
「―――■■■■■様が」
「―――これで救われ……」
一斉に話し始めたので、あまり聞こえません。
わかるのは、私に敵意が向けられてなくて、むしろ歓迎されて……? いる事だけした。
「お静かに。ご理解いただけましたね。……では、よろしくお願いします」
そう伝えるアリスさんですが、その顔はあまり乗り気ではないようです。その表情には見覚えがあります。それは……母と一緒の、あの顔でした。
「リッカさま、もうしばらく準備に時間がかかりますので……もう少々お待ちくださいませ。私も皆さんと一緒にいきますので」
何の準備なのかは、分かりませんけれど……とりあえず、待ちましょう。
「はい、わかりました。……えっと、書くものをいただけませんか? 日記、書いておきたいんです」
私の趣味のひとつ、日記。今日の分は多くなりそうです。何から書けば良いのか分からないっていうのも、初めての経験ですね。
「―――。はい、すぐお持ちしますね」
にこりと笑って、走っていきました。「リッカさまも日記を……」そう聞こえたような気がします。アリスさんも書いてるのかな?
本当にすぐ、日記に使えそうな冊子が届いたので、聞き間違いではないのだと思いました。
「それじゃあ、私は広場の椅子のところで書いてますね」
「はいっ」
アリスさんの笑顔に見送られて、広場の椅子に向っていきます。
さて、何から書きましょう……。