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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
16日目、街には噂がいっぱいなのです
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街の日常2-③



「それにしても、どなたが私の噂を革命軍に流したのでしょう。あの時はまだ先代の巫女が居ましたので、私のことを信じる人は少なかったのですけれど」


 アリスさんが疑問を呈します。でも、私はなんとなく分かります。


「多分、ゲルハルトさんかエリスさんじゃないかな」


 二人なら、アリスさんのために何でもしそうです。


「そうです。我々に報せに来たのはオルテさんでしたが、ゲルハルト様とエリス様からの伝言があるとのことでした」


 コルメンスさんが私の予想を裏付けてくれます。


「お父様と、お母様が……」


 アリスさんが少し嬉しそうにしています。なんで少しなのかは、分かりませんでした。


「では、神誕祭の流れを確認していきましょう」

《はい》

「「はい」」


 進行の流れと、私たちの役割を確認していきます。

 

「神誕祭の流れですが、神誕祭は三日間あります。前日祭、当日、後日祭です」


 三日間のお祭りですか。盛大ですね。


「まず前日祭は普通のお祭りです。出店や花火などで大いに盛り上げ楽しむお祭りになります。一日中街が解放されます」


 花火あるんですね。元の世界でも楽しかった思い出があります。川を挟んで、対岸から見るだけでしたけど、花火って大きいんですよね。


「神誕祭当日は、楽しむよりも鎮魂祭の面が強くなります。ここで演説があります。広場の中心に櫓を作りますので、そこで行ってもらいます。その後黙祷を捧げ、黙祷後は自由時間となります」

「後日祭はお祭りの延長ですが、最後に清掃を皆様に行ってもらいます。小さい袋をお渡しし、それ一杯にゴミが入りますと各門にて高価なものではありませんが景品と交換します。ちょっとした遊びですね」


 ゴミ掃除する代わりの景品、遊び感覚で出来るのはいいですね。きっとゴミ類が多く出るでしょうから、その後の掃除を楽にするための考えです。常に国民のことを考えるコルメンスさんらしいと、まだ二回しか会っていませんが思います。


「後夜祭として王宮に職員と冒険者たちを招きちょっとした慰労会をしようと思っておりますので、お二人もぜひ」


 お祭り中、持ち回りで警備をすることになる皆さんのことも考えられています。


《それで、コルメンス様。今年の演説ではどなたが出席なさるのですか?》


 エルさんが演説について聞きます。きっとエルさんも出るのでしょうね。


「えぇ、私とエルヴィ女王。アルレスィアさんリツカさん。そして――」

「ゲルハルト様とエルタナスィア様です」


 コルメンスさんが名前を言っていきます。……?


「「えっ?」」

「お父様とお母様も来るのですか……?」


 アリスさんが驚愕に、手を口に持って行きました。


「えぇ、この世界最大の一大事に、”神林”に一番近い場所に住む、巫女様以外の人間代表として話してもらうつもりです」


 すでに神林には異変が起きています。それを話すのでしょう。不安を煽りますが、そのための私たちです。


 で、あるならば――。


「でしたら、順番としてゲルハルトさんとエリスさんの演説の後に私たちがいいですね」


 不安を煽っても、私たちが居ると見せることでより希望を強くする。詐欺師のような手口ですが、それを詐欺にしないために私たちは日々動いてます。


《そうですね。リツカさんの仰るとおりの順番がよろしいでしょう。理想はコルメンス様、私、ゲルハルト様エルタナスィア様、アルレスィアさんリツカさんですね》


 エルさんから太鼓判を押されます。でもトリは余計プレッシャーが。


「えぇ、私もそう考えております。注目度からしても、お二人には最後にやっていただきたいと思っております」


 逃げ道がないです。ミスしても、フォローが入る途中と違い、最後は……。覚悟を決めてもプレッシャーは感じます。


 アリスさんは両親が来ると聞いてなにやら考えています。


「アリスさん、ゲルハルトさんとエリスさんが心配?」


 集落から王国までの道のりで襲われていないか心配なのだと思いました。


「はい、無事辿り付けるか……」


 何がおきるかわかりませんからね。


「迎えに行く?」

「いえ……今は、二人を信じます。途中で仕事を投げ出していては怒られますから」


 そういって笑顔を作りますけれど、やっぱり力がありません。


「ご安心ください、アンネに頼んで護衛を送っております」

「ありがとうございます……」


 コルメンスさんからそう聞かされ、アリスさんは安心するのでした。




「次私ね。リツカさんの噂ってどこまで本当なの?」


 リツカの噂は多い。その全てについて知りたいということだろう。


「えっと、昨日アルレスィアさんが訂正したのはいいとして……。他は何を聞きたいの?」


 血まみれ、男を投げれる捻れる、給仕、広場での特訓は昨日言った通りだ。


「私大男の人投げられるって聞いて、すごく怖い人って思っちゃってたんだけど……見たら、私と変わらないくらいの人だったから、どうやったんだろうって……」


 この子が気になるのはリツカの技術についてみたいだ。


「私は赤の巫女様は子供っぽいって聞いたんだけど……」


 質問を躊躇うように言うのは、昨日アルレスィアから怒られたからだろう。


「そんなに、言い難そうにしなくていいと思うよ。アルレスィアさんもリツカさんも言ってたでしょ。知って理解して欲しいって。知るためにはやっぱり聞かないといけないんだから」

「昨日怒ったのだって、リツカさんを噂のままの姿って勝手に思い込んで糾弾したからだし、ただの疑問なら普通に答えてくれるんだよ?」


 アルレスィアもただの疑問の間はしっかりと答えていた。ただ、糾弾に変わるきっかけとなった部分は許容できなかっただけだ。


 アルレスィアはリツカへの不当な糾弾を許さない。アルレスィアにとってリツカとは、それほどの存在なのだから。


 リタはしっかりと応えていく。皆の気が済むまで、言える範囲で、二人のことを知ってもらうために話す。大事な部分は伏せて。


 二人が、世界のために振舞っている秘密については話せない。二人の努力を踏みにじってしまうから。




「……やっと動き出しましたね。どうやら指輪は諦めた様子」


 まさか、本当にサイズが分からないとは。お馬鹿にも程があるのでは。知る方法すら知らないなんて、それであんなに軟派なんですか。面白……いえ、お馬鹿ですね。


「まったく、サイズすら知らないのに買おうとするとは。リツカお姉さんのこと馬鹿に出来ませんよ、お師匠さん」


 普段私と一緒にリツカお姉さんをイジってますが、これではお師匠さんも対象ですね。ポンコツ度ではダントツです。リツカお姉さんは微笑ましい感じですが、お師匠さんのは……呆れちゃいます。


「そういえば、リツカお姉さんがお師匠さんについて何か気づいてましたね。後で聞きましょう」


 何に気づいたのでしょう。このポンコツさ? そんな風ではなかったですね。


「次の向かう先は、裏通り?」


 この国の裏通りはどんな風でしょう。多分どこでも一緒でしょうけど。注意していきますか。



(ついでに警備でもと思ってきてみたが、大人しいな流石に)


 今日初めてライゼルトは、真面目な顔で歩く。国の治安を維持するために、警戒していると見せるのは必要なことだった。


(少しは、頭が冷えたか? まったく、こんなところ誰かに見られるわけには――ん?)


 ライゼルトが何かに気づいた。レティシアが小さい体を更に小さくし隠れる。しかし――。


(ありゃ、なんだ。新しく出来たのか)


 ライゼルトの目に留まったのは、昨日リツカも気になっていた宿泊所だ。派手な装飾と妖しい看板、数時間利用も可能な宿だ。


 リツカは字を読めなかったから知らないが。


(ここ、は……)


 ライゼルトの頭が急速に再沸騰する。剣術に明け暮れたライゼルトはそういったことに免疫がなかった。


 それに今日のライゼルトはアンネリスのことしか考えていない。


 この有様でリツカに気をつけろとか、なんでそんなに知らないのかとか、巫女馬鹿とか言っていたわけだ。


(――!)


 ライゼルトは頭を振りながら足早にその場を離れていった。



「何に気づいたんでしょう。私ではないようですが」


 もし私だと気づいていたら、あんな露骨に気づくような動作をしませんね。

 さて、何に…………。


「うわぁ」


 これはどう見てもアレですね。これを見て頭振って足早に去っていくって。何を考えたんです? お師匠さんの評価をまた修正しないといけません。


「はぁ、指のサイズすら知らない人が先走りすぎでは。男って怖いですね」


 きっとまだ手すら握ってません。握っていたらどの程度か分かるはずです。触れたことすらないのでは?


「リツカお姉さんと巫女さんに注意喚起します」


 お二人に危険はないでしょうが、一応ってやつです。リツカお姉さんも巫女さんも、傍から見れば無防備ですからね。実際は違いますが。


 まァ……アンネさんへの報告は止めてあげますよ、お師匠さん。流石にかわいそうですからね。



「食事処を探したが、あいつらの休憩所が一番か。しかし、あそこには……」


 ライゼルトが追い込まれたのか独り言を零す。


「結局何一つ解決してねぇぞ……?」


 ライゼルトが焦り始めていた。


「まさか誘えるとは思ってなかった、準備をなんもしとらん」


 ライゼルトは頭をかきながら考える。


「……そうか。そうだな。これしかねぇな」


 何かを思いついたのか再び歩き出した。



「……」


 ここまでひどいとは。贈り物一つ用意できず、食事処すら探せず、リツカお姉さんたちの視線を気にしてしまう、あの休憩所の食事処にはいけず。


「はぁぁぁぁ……。誘ったのに準備してないって。ダメダメです」


 王様はまだ上手い事やっていました。指輪をいきなり渡すという面白……お馬鹿行為を見せましたが、食事への誘いもその後の雰囲気作りも完璧でした。お姉ちゃんの顔が完全に乙女の顔でしたし。まぁ、王様のヘタレでその場は終わってしまいましたが。


「何か思いついたようですが、ダメかもしれませんね。お二人の噂収集に戻ります」


 アンネさんも物好きですね。あんなダメ男に惚れちゃうなんて。


 まぁ、どんな失敗しようともアンネさんはお師匠さんを嫌ったりしませんよ。安心して呆れられてください。クふふふ!


 さて、リツカお姉さんのポンコツ集を集めましょう。


 きっとまだまだありますよ。


「あ、そこのお姉さン。昨日巫女さんたちが何かやってませんでしたカ? ――――エ? 学校デ? 詳しく教えてくださイ!」



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