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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
14日目、認識は大事なのです
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吹き荒れる

A,C, 27/03/09



 今日は、寝覚めがいいです。


 起きたら、アリスさんにしっかり抱かれていました。笑顔のアリスさんと真っ赤に染まった私の顔が、近いです。


 本当に、今日は……寝覚めがいいです。

 心臓が朝から元気ですからね。


「お、ぉはよ」

「えぇ。おはようございます!」


 いつもなら私の顔を覗き込むように起き上がっているんですけど……なんで今日は抱きしめて……?


「今日は少し寒かったものですから。リッカさまで暖を」


 アリスさんが笑顔でそう言います。確かに肌寒い、のでしょうか。私の体は今燃えるように熱くなっているので、わかりません。


「そ、そうなんだ。じゃあ仕方ない、かな?」


 仕方ない、ですね。それなら、もうちょっとだけこのまま居てもいいですよね。


「えぇ、ですからもう少し温まりましょう」


 アリスさんの笑顔に、自然と私も笑顔になっていきます。

 あったかい。



 朝の日課中、兄弟子さんは襲ってきませんでした。

 その代わり――。


「あら、リツカちゃん。今日も走ってるのかい」


 お花屋のお姉さんが話しかけてくれます。


「お姉さん。おはようございます!」


 本当は毎日会ってますけど、声をかけてもらえたのは初めてです。昨日接点が増えたからかな?


「あぁ、おはよう。ほどほどにしなよ」


 心配されてしまいます。


「ありがとうございます! でも大丈夫、私こう見えて強いんです」


 少しドヤ顔になってしまいます。朝あんなことがあったから、ちょっと気分よすぎました。


「あっはっは! そりゃそうか。それでも無理はいけないよ、がんばんな」


 母が偶に見せていたものと重なる、そんな笑顔で送り出してくれます。


「はい!」


 今日は、心地よく走れています。




 ギルドには人がまばらでした。こんなギルドを見るのは初めてかもしれません。何かあったのかな。


「人少ないですね」


 アリスさんも気になるようでした。アリスさんが分からないなら、何か行事わけじゃないようです。


「そうだね。何かあったのかな」


 少し緊張が高まりますが、不穏な空気は流れていません。たまたまかな?


「おはようございます。アルレスィアとリツカです。アンネさんはいらっしゃいますか」


 いつものように受付に話しかけます。


「はい、おはようございます。早速お呼びしますね」


 その間私は周りを見ます。

 少ないのは、冒険者。その他の商業、農業、工業などのギルドはまばらとはいえ慌しいです。


「お待たせしました。おはようございます。アルレスィア様リツカ様」

「「おはようございます」」


 アンネさんがすぐに来てくれます。


「アンネさん。今日何かあるんですか?」


 私はとりあえず聞いてみることにしました。


「はい。もうじき神誕祭があります」


 神誕、祭ですか。多分、神さまの誕生を祝う日ですよね。それならもっと忙しくなるような。


「神誕祭では多くの物資を運び入れたり、人の行き来が盛んになりますので。ギルド全体で国外に出ています」


 なるほど、冒険者が一番少ないのは護衛ですか。


「神誕祭ですか、何か聞いたことがあるような。アルツィアさまのお誕生会はしていましたけれど、お祭りは初めてです。こんな時だからこそ、普段通りが一番ですからね」


 アリスさんが何か思い出そうとしています。アリスさんの言うとおりですね。変に沈み込むより、普段通りでいなければ。


「はい。ぜひお二人も楽しんでください。計画ではお二人も陛下と一緒に演説してもらうことになっておりますので」


 神誕祭楽しみですね。祭り自体、行ったことがありません。学園祭を祭りというのなら、行った事はありますけれど。


 それに陛下と一緒に演説ですか。どんなこと――。


「え?」

「わかりました」


 アリスさんが了承しちゃいます。


「……うそ」


 どうしてこんなことに。



 今は考えても仕方ないです。仕方ないです。仕方ないです。


「そう思いたいのに思えない」


 演説、学校での表彰式のようなもので喋ったことはありますけど。


 国民の前で? 七万人ですよ。いえ、祭りで他方から来ることを考えれば十万、二十万……?


「リッカさま?」


 アリスさんが心配そうに私を覗き込みます。

 アリスさんが決めたことです。私が断るわけには……。


「う、うん。大丈夫。大丈夫……」

「演説、いやでした?」


 ずばり、その通りだったりします。


「本当は、ちょっとだけ」


 アリスさんは、大丈夫そうです。


「アリスさんは、大丈夫なの?」


 演説したことあるのでしょうか。


「少し不安ですけど、リッカさまと一緒ですし、お祭りを楽しもうと思いまして」


 一緒なら……。そう、ですよね。迷っても仕方ありません。祭りを楽しむなら、迷うことはないでしょう。


「そう、だね。楽しみたいもんね。演説も楽しんじゃおっか」


 こうなれば行くとこまでいきましょう。英雄には演説がつきものです。それなら、国民に安心してもらうために私はやることをやるだけですね。


「はい!」


 アリスさんが笑顔で隣に居てくれるなら、頑張れるのです。



 大勢が集まる以上、私たちの出番は多いでしょう。


 楽しめる時間があるかは微妙ですけど、そこは神さまのご加護がありますように、といったところですかね。


「神誕祭、思い出しました」


 アリスさんが考え込んでいましたけれど、思い出したようです。


「何かあるの?」


 神さま関係でしょうか。


「はい、王国ではアルツィアさまを奉るお祭りがあると、アルツィア様が言っていました。その昔、あの痛ましい事件が終わった時に、これからの平和を想ってアルツィアさまが核樹の欠片をこの地に落としたらしいです。その核樹に祈りを捧げるようですね」


 痛ましい事件は、魔力持ちによる弾圧のことでしょう。それよりも……核樹の、欠片?


「見れるのかなっ!」


 もはや条件反射のように神林関係でテンションが上がってしまいます。

 体が勝手に求めるかのように。


「えぇ、その日だけは公開しているようですよ。一緒に見に行きましょう」

「うん!」


 アリスさんが私の頭を撫でながら約束してくれます。


 楽しみが増えました。それにしても、私が神林の波動を感じ取れないとは、どこか地下深くにでも奉納していたのでしょうか。


「これが、噂の……」


 アンネさんがぼそっと呟きました。

 でも興奮していた私は聞き逃すのでした。



「またリツカお姉さんが森馬鹿ってまス」


 シーアさんが私たちの傍まできていました。


「し、シーアさん。いつの間に」


 また見られました。けど、もう知られたからには隠しても仕方ありません。そのネタで私はいじれませんよ。


「リツカお姉さんが幸せそうに巫女さんに撫でられている時からでス」

「……ぁぅ」


 そっちでいじるのかぁ。そっかぁ。

 効きました。


「おはようございまス。皆さん」

「おはようございます、シーアさん。ほどほどにお願いします」


 アリスさんが庇ってくれます。


「珍しく攻め時ですガ、やはり二人同時に攻め落とすのは難しいでス」


 不穏なことを言いますね。シーアさんはライゼさんとは別の意味で要注意です……。


「おはようございます、レティシア様。揃いましたので依頼の話を始めます」


 ん?


「野蛮お兄さんはどうしたんですカ」


 シーアさんが辺りを見ながら言います。


「ウィンツェッツ様は、本日は別件です。護衛任務についています」


 兄弟子さんが護衛、ですか。想像できませんね。


 ただ、一応任務には誠実でした。問題はないでしょう。ライゼさんことがない限りは普通なんでしょうね。あぁ、私も含まれてそうですね。嫌ですね。


「なるほド。では今日は三人ですカ」


 アリスさんは兄弟子さんの名前が出ると眉を寄せ少し怒りを灯してしまいました。宥めようかと思いましたけれど、いつまたアリスさんを使って私を挑発するかわかりませんし。警戒心を持ってもらうのはいいと思ったのでした。


「はい。お三方は護衛も出来ますが、それ以上に討伐の迅速さが冒険者の中でも抜きん出ていますので。遊撃として国周辺を警戒していただこうかと思っております」


 護衛の援護と、マリスタザリア発生時誰よりも早く現場に向かう役ですね。


「今から国外に出るのは五組。神誕祭のための買い付けですね。一組十人前後の組合員と五人前後の冒険者です。五組目にウィンツェッツ様が殿として入っています。五組目は大丈夫と思いますので、一から四組目の遊撃としてお願いします」


 正直、今のマリスタザリアの成長を考えると兄弟子さんも不安なのですけれど……心配しすぎもダメですね。


 一から四組目の安全確保。そして、極端に減った国内の冒険者の変わりに私たちが国の防衛最終ラインです。


「流れとしましては、国の警備をしつつ、隊商の危機には駆けつけていただく。といったものです。今までで一番過酷でしょうが、どうかお願いします」

「えぇ、お任せください」


 アリスさんが強い想いを込め、私たちを代表して返事をします。


 刀がまだない以上、私がサポート、アリスさんとシーアさんがメインです。最大限二人が戦いやすいようにしましょう。



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