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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
1日目、私って森フェチなのです・・?
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神林集落②



 その集落は、現代的なものが一切ありません。


 家は完全に木造、藁や葉が屋根を覆っています。窓にガラスなどはなく、板のようなもので閉ざされています。開けるときは板を外すようです。


 水道も、ありません。井戸が集落の中央あたりに見えます。当然、電線もありませんし、パイプ等もありません。


 どれも、教科書でしか見たことのない、昔の家。家の外で炊かれている焚き火……晩御飯の準備でしょうか、酸味をともなった香りが混じってきました。あちらに干されているのは……生肉……? 


「アルレスィア様!」


 この森に来て初めて聞く、アリスさん以外の声。野太く力強い、男性の物です。


 武術の心得がある私には、なんとなくわかります。この声の主は鍛え抜かれているのだろうと。


「オルテさん、ただいま帰りました」


 アリスさんがにこやかにその声に答えます。私の心に鈍い違和感が生まれます。チクリと刺すような……?


(……? なんだろ……。風邪の前兆?)

「リッカさま、こちらはオルテさん。この集落の守護長です」


 守護長。聞きなれない役職ですが、先ほどのアリスさんの説明で察しはつきました。この方はアリスさんを守る人々を束ねる、リーダーということですね。


「初めまして。オルテさん、で呼び方はいいのでしょうか……。えっと私は―――」


 そこまで言って、ふと思います。


(アリスさんの守護者……アリスさんの隣にいて”神の森”と同じように部外者立ち入り禁止と思われる”神林”から出てくる正体不明の私)


 ―――少し身構えそうになる私を見ていたオルテさんは、警戒する事無くじっと私を見ています。


「彼女は、そういうことなのですね。アルレスィア様」


 意味深な、強い意志感じる目で私を射抜き、アリスさんへ向き直ります。


(咎め、られないのかな……?)


 その目に敵意を感じませんでした。アリスさんが笑顔でいたこともあるのでしょうが、それにしてもおかしいです。


「はい。そうです。決して怪しい方ではありません。ですから皆様へお伝えください。後ほど集会を開きますので、ご参加をと。私は先に集落の案内を、リッカさまにいたします」


 重々しく告げられるアリスさんの言葉、深刻そうに告げる顔と声音はあの時、”巫女の存在理由”を語っていたときに似ていました。それだけの何かが、これから起こるという示唆なのでしょう。でも私は……考えないようにしました。


「かしこまりました。―――初めまして、オルテ・ライズワースであります。どうぞオルテとお呼びください」


 アリスさんの例からわかるように、この国では名姓の順になっているのですよね。


 この国では初対面でも名前で呼び合うのが普通なんでしょうか。あとで聞いてみましょう。


「はい、オルテさん。改めまして、六花 立花です。私のことは―――」


 リッカと呼んでください。と伝えようと思いましたけど


「リツカとお呼びください」


 なぜかリッカと呼ぶのは、アリスさんだけが良いと、思ってしまったのでした。


「わかりました、リツカ様。では、アルレスィア様、リツカ様、私は皆へ伝えに行きます」


 一礼をして、オルテさんは隙のない動きで立ち去っていきました。


「―――!!」


 私の少し後ろに居たアリスさんが、また虚空へ向かって何か話していることに気づいた私は少し待ちます。多分神さまが何かを伝えているのでしょう。


「リッカ……さま。それでは、集落を案内いたします」


 私の名前を呼ぶときに少し熱がこもっていたいたような気がしましたけど、気のせい?


「えっと、アリスさん。ちょっと質問が。この国では名で呼ぶのが普通、なんですよね? 私いきなりオルテさんって呼んじゃいましたけど、失礼じゃなかったでしょうか。敬称は『さん』でいいのでしょうか……」


 同じくらいの歳であろうアリスさんだけのときは気にならなかったことが、ふつふつと湧き出てきます。


 この世界でどれほど滞在することになるか分かりませんが、少なくともすぐ帰ることはできないでしょうから、この国のマナーに沿っているか気になってしまいます。


「はい、大丈夫です。敬称も『さん』で問題ありません。私たちがリッカさまを『さま』とお呼びしているのは……後ほどお伝えいたします」


 アリスさんは皆に『さま』つけなのかと思ったら、オルテさんは『さん』でした。何か、理由があるようですね。


「ふふ、真面目なのですね。リッカさまは」


 無邪気に笑顔を見せるアリスさんに、私の疑問もどこかへ行き、一緒になって笑い合うのでした。



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