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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
12日目、喧嘩にも色々あるのです
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4人で任務②

 


「では、依頼の話しに参ります」


 アンネさんが仕事の顔になりました。


「ライゼ様がリツカ様の武器を作るために工房へ篭っているため、しばらくは四人で回していただきます」


 アンネさんが私たちを見渡し、異論がないのを確認し進めます。


「本日の依頼ですが、一件ございます。すでに足止め班が先行しています。……先に言っておきますが、リツカ様。ご安心ください。足止め防衛に適した者たちのチームで行っております。犠牲が出たという報告はありません」


 港の事件以来初めてのマリスタザリア討伐の依頼です。アンネさんから忠告が出るのは仕方ありません。それに、アンネさんはアンネさんであの時のことを悔やんでいるようです。


「はい、もう、大丈夫です。ごめんなさい……」


 そうはいっても、私の肩は小さくなるのでした。


「リッカさま」

「ありがと……アリスさん」


 アリスさんが肩を抱いてくれます。


 アンネさんが続きを言います。


「報告では一件ですが、出現したマリスタザリアは三体。熊、インパス、ドルラームです」


 ドルラーム。たしか、羊のような動物でしたね。角が大きいですから、そこが変化発達しているでしょう。


「場所は王国から十二キロ北です。山が近く、少し寒いのでご注意ください。近くに小さい村があります。よろしくお願いいたします」


 アンネさんからの事前情報を受け、四人で話し合いをします。


「俺も行くのか」


 兄弟子さんが言います。


「相手は三体です。万全を期すべきでしょう」


 油断していい相手ではありません。持てる戦力で行くべきでしょう。


「そうですネ。熊さんは力強く、見た目に反して結構素早いでス。インパスはスピード特化で力は弱いでス。スピード特化と言うだけあっテ、その速度は魔法だけでは捕らえるのは難しいでしょウ。ドルラームは力も強くスピードもありまス。角がどのような変化をしたかによりますガ、気をつけるべきでス」


 シーアさんが敵の特徴を述べ、対策を立てやすくしてくれます。やはり、多くの敵を倒してきたのでしょう。実績が違います。


「熊とインパスは経験がありますけれど、同じ変化をするかは分かりませんね……。何より、言葉を話すマリスタザリアも確認できています。やはり四人で行くべきでしょう」


 アリスさんから提案があります。


「分かったよ。分かった分かった」

(チッ……ライゼが居るってのに……何でこんな事しないといけねぇんだ)


 心底面倒そうにですけど、兄弟子さんは了承はしてくれます。


「言葉を話すマリスタザリアは私は出会ったことがありませン。どのような感じだったのですカ?」


 シーアさんでも見たことないとなると……やがり魔王が、関係しているのでしょうか。


「私を殺すという思いだけで発せられた魔法で、火の壁が私に迫ってきました。純度も威力も高いです。アリスさんが水の付与された”盾”を出してくれなければ死んでいました」


 あれ以来出会ってませんけど、あれ以降はほぼ一撃でしたから、見る事が出来なかっただけかも。一層の注意をしなければいけません。


「水の付与された”盾”、ですカ。複合連鎖できるのですネ」


 シーアさんがアリスさんへ質問します。


「はい。私は”拒絶””治癒””光”が得意です。その他の魔法も一部を除いて中級四段階目より上にはなっております。複合連鎖、連続複合連鎖による大魔法が可能です」


 アリスさんが自身の手札を見せます。これから一緒に戦う以上、自分の手札を見せることが信頼に繋がるでしょう。……あれ? そういえばライゼさんの魔法聞いてないですね。私たち。


「えっと、私は”強化””抱擁””光”です。武器の関係で対動物型マリスタザリアでは、”強化”しかできません。”抱擁”はよくわかりません。”光”と全力発動はこの木刀でないとできません」


 自分で言ってて悲しくなります。でも、現実です。ライゼさんが作ってくれる刀があれば、やれることは一気に増えます。今の手札で最高の戦果を上げるしかありません。


「巫女様は特別って聞きましたけド。本当ですネ。”拒絶”、”強化”、”抱擁”。どれも聞いたことない魔法でス。巫女様にしか扱えない”光”も気になりまス。三つも得意があるからその木刀がないといけないのですカ? 気になって仕方ありませン!」


 シーアさんの目がキラキラと光ります。もしかしなくても、魔法の研究が好きとかでしょうか。その喜び様は、年相応の無邪気さがありました。


「コホン。失礼ヲ。私の得意は”水””火”でス。その他の魔法、私が覚えた範囲でなら全て、上級の五段階でス。連続連鎖、複合連鎖、連続複合連鎖、もできまス。女王から『エム』の名を頂けるのハ、国で一番の『魔女』である証でス」


 シーアさんからまた出てきた女王という言葉。移動の際に聞いてみましょう。


 そして私たちは兄弟子さんを見ます。


「……チッ。”風”と”纏”だ」


 ”纏”、何かを纏う? 私は考えてしまいますけど、アリスさんもシーアさんも分かっているようです。これも、後で聞いてみましょう。


「それでハ、行きましょウ」


 シーアさんが立つのにあわせて、私たちは立ち上がりました。



 十二キロです。急いで行ったほうがいいでしょう。


「兄弟子さン。船出してくださイ。私持ってきてますかラ」


 シーアさんが兄弟子さんに提案します。

 船――あっ。


「あん? なんで俺が。てめぇがやれよチビっ娘」


 やっぱり嫌そうな顔をします。


「”風”もしっかり使えますけど、せっかく得意魔法持ちがいるのでス。やってくださイ。速いほうがいいに決まってまス」


 シーアさんがそう言いつつ足早に北口に向かっていきます。


「やっぱ餓鬼はやりづれぇ……」


 頭を抑え心底嫌そうにつぶやきますけど、しっかりと北口に向かっています。ライゼさん関係だけのようですね、兄弟子さんが強くイラつくのは。


「リッカさま。私たちも」


 アリスさんが私を促します。


「うん、急ごう」


 三体同時発生。悪い予感しか感じません。



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