私は強くなる⑩
支配人さんを問い詰めた所、珍しいのは確かだけど、増えているのは事実なのでどうかお気になさらず、そのまま。と、言うことでした。恥ずかしいって話なんですけど。変えてもらえそうにないですね。
(はぁ……。まぁ、アリスさんは楽しみにしてるみたいだし……)
いい、かなぁ?
診察と給仕は滞りなく終わりそうです。
今日はアリスさんだけで診察できる範囲だったので、私がずっと、ずっっと給仕です。
やけに視線を感じます。
普段の視線と、質も量も変わらないのに。私が自分を認識したから? それだけでこうも変わるの……? 自意識過剰すぎなんでしょうか……。
「剣士娘」
ライゼさんが休憩所の一角に座っていました。
「来てたんですね。アンネさんは一緒じゃないんですか」
どうやら一人で来ているようですね。
「仕事があるっつって、断られたよ」
ちゃんと相手のスケジュールは確認するべきでは? 肩を落とし落ち込むライゼさんに、そんなことを思ってしまいます。
「まぁ、俺のこたぁいい。挙動不審だがどうした」
「誰のせいだと」
立ち直ったライゼさんの質問に、私は冷ややかな答えを返しました。ライゼさんが私に自覚させちゃったからでしょう。どういうわけか私も注目浴びてるって知りましたし。
「まぁ、気にしすぎるな。そうやって落ち着きがないのも目立つぞ」
「そうなんですか。確かに気になるとは思いますけど」
視界の端で変な動きしてる人がいたら、気にしますよね。
「そういうんじゃねぇが。まぁ、いいか。剣士娘。この後巫女っ娘と一緒に広場にこい。剣と弟子の話だ」
そう言ってライゼさんは席を立ちました。
「分かりました。次はアンネさんと来て下さいね」
ライゼさんが扉を開けるのを失敗するほど動揺します。
「……立ち直ったようで、安心したぞ。剣士娘」
「ありがとうございました。またのお越しをー」
ライゼさんは声を震わせていました。お礼はしっかりと、です。
全ての業務を終えたので、支配人さんに事情を伝えて、給仕の仕事を少し早めに切り上げました。
今は広場に向かっています。
「ライゼさんからどんな話をされるのでしょう」
アリスさんも気になっているようです。
「剣と弟子の話、かぁ。剣は色々と注文つけちゃうと思うし、弟子の件はすでに、良くしてもらえてるんだよね」
この世界の柄では、木刀を加工しての柄にできません。片刃で、峰があり、曲線を描いた刀身、柄は木で、鍔の問題もあります。作り方はおまかせしますけれど、この条件だけは必要と思ってます。
弟子にしても、技術面はまだ全然教えてもらえてはいませんけれど、すでに精神面で良くしてもらえています。
ライゼさんが居なければ、私はあのままだったでしょう。
「とにかく、行ってみよ?」
「はいっ」
「――来たか、お二人」
ライゼさんが椅子に座って空を眺めていました。
「それじゃ、まぁ早速だが。剣……いや、刀っつったか」
職人の目になったライゼさんが、早速切り出します。
「刀ってなぁ、どんなもんだ? この剣とどう違う」
そう言って、ライゼさんは剣を抜いて私に突きつけました。その動きに周囲が少しざわめきますが、ライゼさんは特に気にしてないようです。私も気にしません。見やすい様にしてくれただけですし。
「そうですね、まず刀身はこんなに真っ直ぐじゃないです。この木刀のように曲線をえがいてます。何より片刃です。硬さも、もっとしなやかですね。ですけど、切れ味はこっちのほうが良さそうです。元の世界の私の家にあった刀もそこそこ良いものでしたけど、それより斬れそうです」
私も普通に接することで、なんでもないと周囲にみせます。そして、鍔と柄の問題も伝えました。
「そうか、曲線か」
引いて斬るのに必要です。
「硬さ切れ味、どっちをとる?」
「切れ味が欲しいです。今の剣も”精錬”で補ってますけど。強度七、切れ味三で強化されてます。元の切れ味を上げれば、この比率で問題なく両断できます。何より、柄に木刀を加工して使ってくれれば、”強化”を全力発動できますから」
ただの”強化”の魔法では限界が近いです。全力の”強化”で更にそこから派生させないと。
「分かった。俺の技術じゃ、今はこの剣が最高傑作だ。あんさんの注文通りと行くかはわからんが作ってみよう」
刀の問題はなんとかなりそうです。本当にライゼさんには感謝してもしきれません。
「そう申し訳なさそうな顔をするな。言ったろう、俺のためでもある。刀は俺にとってもいい武器になるかもしれんしな」
そう言って、ライゼさんは立ち上がりました。
「んじゃ、弟子についてだが。まぁ、精神修行はそこまで必要ないな。気の抜き方さえなんとかなりゃ、あんさんはいっぱしの剣士だ。問題は技術。独学じゃ限界は早ぇ。俺の流派の教えになっちまうが、いいか?」
ライゼさんの流派は、私にそのまま使えるはずです。回転斬り、読みと経験からくる先の先。相手より早く、鋭く、強烈に。
「覚悟は決まっとるな。よし、明日からやるか。時間空けとけ」
「ありがとうございました」
そう言って、ライゼさんはギルド側に歩いていきました。私はお礼を言います、けれど――。
「えっと、アリスさんも呼んだのはなんでです?」
疑問があります。
「それはだな……あぁ言わんよ。とにかく必要だった、それだけだ」
何か言いたげでしたけど、ライゼさんは何でもないと言った風に手を振って離れていきました。男の人はよくわかりませんね。
「んー。アリスさん良かったの? 結局何も用事ないのに呼ばれたみたいだけど」
アリスさんは私の付き添いってことになってしまいました。
「はい、これで良かったのです。たぶん呼ばれなくても行ってましたから」
アリスさんは嬉しそうですけど、どういうことだろう。
「さぁ晩御飯の材料を買いに行きましょう」
「うん、ありがとう。アリスさん」
そう言って微笑み、アリスさんが差し伸べてくれた手を――私は取りました。何かあるみたいですけど、アリスさんが楽しそうだから良いのです。市場に向けて歩き出しましょう。
(ほんと……)
また、こうやって歩けてよかった。港でアリスさんに置いていかれたときは、本当に……。
「今日はとびっきりのスープにしましょう」
「ほんと? 楽しみ!」
掛替えの無い日常に、心がほっとします。
元々のこの部の話は
あまりにふざけすぎていて、世界観を壊し
ライゼの話までいくことなく
テンポも悪いひどいものでした。
申し訳ございません!
以後、眠い中書くのはやめようと思いました!
せっかくブクマしてくれたのに失望させてしまって申し訳ないです!
またしてもらえるように気をつけます。




