表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱者が英雄になります  作者: もとじ りゅうが
3/11

2「置いてきぼり」

 「お前、だれだよ!?」

 少女はまったく反応しない。

 凌は生まれてから一度も自分の部屋に、家族以外の人を入れたことがない。

 だから、俺がナンパして、ここまで連れて来たことは、あり得ないーーはずだ。

 こんな時に誰か来たらどーー。

 「凌、少し話をしたいの。入るわよ」

 え? 今なんと言いました? 部屋に入る? は!?

 「ちょ、ちょっと、待って!? 今、着替えてるから!」

 「解ったわ。できるだけ早くして」

 いったい何事だろう。母が俺の部屋に入ろうとするなんて、珍しい。というか、話をしようと声を掛けてくるのも珍しい。

 取り敢えず、少女を急いでベットの布団を被せて隠した。

 「いいよ。入って」

 母はドアを開けて入ってきた。

 「どうしたの? 母さん」

 物凄く、険しい顔をしていた。

 「あのね、凌。私達引っ越すの」

 正直、少し驚いたが、そこまで驚くようなことではなかった。この後の言葉さえ聞かなければ......。

 「そうなんだ。何処に引っ越すの?」

 「ごめんなさい。教えられないの」

 「え......。なんで?」

 「あなたは、ここに残って高校に通うからよ」

 「え......」

 その一瞬、母の発した言葉の意味を理解できなかった。

 「その、だから、高校生活頑張ってね。あと1時間後には、私達ここを出ていくから。家のローンとかは、もう払っておいたから、心配しないで。生活に必要な物も全て置いていくから。定期的に仕送りもするから。心配しないで」

 母はそう言って凌の部屋を出ていった。

 やっと母の発した言葉の意味を理解した。

 捨てられるのだ。家族から。家族だけは、俺を見捨てないと思っていたのに。

 凌は必死に涙をこらえようとしたが、雫は頬を伝って、落ちていく。

 「どうして、泣いているの?」

 不意に背後から声が聞こえた。凌は、声がする方に振り返った。

 そこには、さっきの寝ていた少女がいた。

 「どうして、泣いているの?」

 どう答えたらいいのだろうか。今、俺が喋れば間違いなく、八つ当たりしてしまうだろう。

 「少し、そっとしていてくれ」

 凌はなんとかその言葉を言い切った。そして、そのまま床に蹲った。

 そこから記憶が途切れた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ