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黒き竜  作者: copan
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第九章 お披露目会

学校が終わる頃、時計の針は五時を指していた。

 

「リョウ。」

 

隣にいるルルが話しかけて来た。後にはミリーやスヒル、ノベスがいる。 

「広場で使い魔の御披露目会をしない?この五人で、」

 

〔使い魔の御披露目会か〜。そういえば、テトとマナにまだ何も言ってなかったんだよな〜〕

 

『ああ、良いぞ。』

 

亮はテト、マナ目的で誘いに乗った。

 

「やったー。実はリョウの使い魔もう一回見てみたかったのよね〜。じゃあ、行きましょう。」

 

ミリーが嬉しそうに言って、みんなを手招きし、教室から出て行った。

 

そのあとに亮達はついて行った。ただ、ノベスは御披露目会には参加するが、あまり乗る気でないらしい。恐らく、自分の使い魔に馬鹿にされるのが嫌なのだろう。

 

 

 

広場は学園の中央に位置しており広さも闘技場くらいに広く、芝生の中にレンガの敷き詰めた道があり、中央には一つの巨大な噴水と木製のベンチがいくつかおいてある。五人は広場の中央部。つまり噴水付近に集まり、みんな一緒に使い魔を召喚した。

学園の広場に三頭の竜と一頭のグリフィン、一人のヴァルキリーが現れた。

 

周りから見るとドラゴン三頭だけでもかなり迫力ある見ものなのだが、それに加えグリフィンとヴァルキリーまでもいるのだからかなりの見物だろう。

 

〈何の用で呼んだんだ?〉

 

亮に召喚されたジョゾは周りを見渡し亮に聞いた。

 

『使い魔の御披露目会だとよ。

それより、テトとマナには俺の事言ったか?』

 

後半部分はルル達に聞かれるとまずいので小さく囁く[ササヤク]ように言った。

 

〈いや、ギガ様とルーマン様には言ったがテト達には言ってない。〉

 

『そうか。』

 

 

「それじゃあ、私から紹介するね。」

 

ミリーが亮達の前で張り切って言った。

 

「この子はヴァルキリーのフィア。ちょっと、キビキビしたところがあるけど良い子だし、強いわよ。これからよろしくね。」

 

ミリーに紹介され、フィアは頭を軽くペコリと下げおじぎをして下がった。

 

 

「じゃあ、次俺な。」

 

ミリーに代わって今度はノベスが一歩前に出た。

 

「こいつはグリフィンのバグ。

口が悪くて俺をいつも馬鹿にするが、こいつの良いところは………

まあ、よろしく。」

 

ノベスは途中、口がごもっていたが誤魔化した。

ノベスと代わって前に出たのはスヒルだった。

 

「こいつは、ウィンドドラゴンのテトだ。接近戦を得意としているらしい。

よろしく頼む。」

 

スヒルの短い紹介を終えるとテトは軽く頭を下げた。

 

「今度は私ね。この子はウォータードラゴンのマナ。初めはなかなか馴染めなかったけど今ではよく話す私のパートナーよ。」

 

マナは主人に誉められて嬉しいのか顔を少し赤らめておじぎをした。

 

 

『最後は俺か。』

 

〈かっこいい紹介を期待しているぞ。〉

 

ジョゾが悪戯に笑いながら言った。

 

〔かっこいい紹介か〜〕

 

亮は紹介の内容を考えながら前に出た。

 

『ええと、こいつはファイアドラゴンのジョゾ。よろしく。』

 

〈みじか!〉

 

ジョゾは礼を忘れて亮を睨みつけた。

 

『悪い。よく考えてみたら、お前のかっこいい所見つかんなかった。』

 

亮は苦笑いをし、詫びるように言った。それを聞いたジョゾはため息を吐き深く落ち込んでいた。

 

「これでみんな紹介終わったわね。

じゃあ、ノベスジュース買ってきて。」

 

ミリーが言った。


 

「なんで俺?」

 

「あんただけじゃないよ。お金は後で出すから。

私とスヒルは何か食べ物買ってくるから、亮とルルはここで使い魔達を見てて。

 

さ、行きましょ、スヒル。」

 

「ああ。」

 

どうやら、ミリーはここでパーティーでもするつもりらしい。

ミリーはテキパキと指示すると、スヒルを連れてどこかに行ってしまった。ノベスもミリーの奢りという事もあって嬉しそうに走って飲み物を買いに行ってしまった。

 

広場に二人が残っているのは亮とルルだけだ。広場の周りの生徒は五体の使い魔を見ている。

 

「私、ちょっとお手洗いに行ってくる。」

 

ルルはそう言って行ってしまい、亮一人になってしまった。

 

そんな中、テトとマナが竜語で何やら話している。

【……って訳でさ〜いろいろ大変なのよ。でも、私ミリーの使い魔になれて良かった。】

 

【ふ〜ん、僕の主人のスヒルもあんまり話とかしないけど、あの人にならついていきたいと思う。】

 

どうやら、自分の主人についての話らしい。

 

『でも、あいつギルドで魔物退治とかしているんだぞ。』

 

亮はさり気なく会話に参加。

 

【え!?そうなの?それじゃあ、僕も竜族と闘う可能性が高いってことか〜

 

って、え!?君、僕たちの言葉分かるの?】

 

テトは途中、亮が自分たちの竜語を理解していたことに気付き、急に驚きの表情をして言った。マナもテトと同じように驚いている。

 

『匂いを嗅いでみろ。』

 

亮はにやついて言った。

亮に言われて二頭は亮に近づいて匂いを嗅いだ。

 

【え、もしかしてリョウ?】

 

マナが匂いで気付いたようだ。

 

『やっと、気付いたか。

って、いうよりお前たち俺がルル達からリョウって呼ばれてたの気付いてたろ。』


確かにこの二人には亮の人間の姿を見せていないが名前で分かる筈である。

 

【いや、それはまた同姓同名の別人かと思ってた。】

 

テトが言うとマナも深く頷いた。

 

【それより、なんで魔界にいるんだい?人間界に帰ったんじゃ…】

 

驚きを隠せないテトが亮に聞いた。

 

『まあ、それは話せば長くなるからそこで寝ているジョゾに聞いてくれ。』

 

亮は丸くなって寝ているジョゾを指差して言った。

 

【そういえば、リョウはジョゾ様を召喚したのね。

リョウの使い魔になれるなんて羨ましいな〜。】

 

マナは寝ているジョゾを羨まし気な目で見て言った。

 

『でも、スヒルやマナとは仲が良いから、また一緒になれる時もあるだろう。』

 

【ああ、そうだね。】

 

『お、ノベスが帰ってきたみたいだぞ。じゃあ、また今度話そう。俺の正体については誰にも話すなよ。』

 

【ああ。分かった。】

 

【ええ。】

 

ノベスの匂いを察知した亮はそう言ってテトとマナから離れた。

「お待たせ〜。ジュース買ってきたぜ!あれ、ルルは?」

 

ノベスは全速力で走って来たのか荒息を掻いている。

 

『トイレに行った。』

 

「そっか、早くミリー達も帰って来ないかな〜。」

 

ノベスの息はまだ荒い。ノベスは喉が渇いたのかミリー達の帰りをまだかまだかと待っている。

 

「お待たせ〜。あっ、ノベス戻っていたんだ。」

 

ノベスの次に帰ってきたのはルルだ。

 

「なあ、リョウ。このジュース飲んでいいと思う。」

 

ノベスは目の前にあるジュースを美味しそうに見つめた。

 

『いや〜、ミリーのお金で買ったんだからミリー達が戻ってからの方が良いだろう。』

 

亮は苦笑しながら言った。それから、ノベスは購買のある方向をじっと見つめ始めた。その頃ルルはマナと何やら話しており、残りの使い魔は寝ている。

 

「お、きたきた。」

 

ノベスが一点を見つめ騒いでいる。亮がノベスの視線の先を見ると両手いっぱいに袋を下げ歩いてくるミリーとスヒルの姿があった。


 

『また、よくあんなに買ったな〜。五人じゃ食べきれないぞ。』

 

亮が苦笑しながら言った。

 

「大丈夫よ。あのくらいなら足りないくらいだと思うわ。」

 

『え!?

もしかして、使い魔達も食べるのか?』

 

「ううん、使い魔は人間の物を食べないわ。」

 

ルルは首を横に振って言った。

 

『じゃあ、誰が食べるんだ?』

 

「彼女よ。」

 

ルルがミリーに視線を移して言った。

 

『え……』

 

亮は絶句した。ミリーは小柄で全然太ってなどおらず、むしろスリムな体型だ誰がどう見ても大食いには見えないだろう。

 

「後で分かるわ。」

 

『…』

 

亮とルルが話しているうちにミリー達が亮の元へ辿り着いた。既に、ノベスは犬のようになっており、ご主人様の許しを待っている。

 

「さっ、食べましょ。」

 

ルルがそう言った瞬間にノベスはじっと狙っていた炭酸ジュースを手に取り蓋を開けた。あとの四人は紅茶やコーヒーである。

 

 

すると、


シュワーー

 

 

「わー!?」

 

ノベスがジュースを開けると缶から空気が漏れる音と同時に中身が噴き出した。

 

「ノベス、何やってんのよ!」

 

ルルがもったいないと言わんばかりにノベスに叫んだ。

 

ノベスが持っている缶の中にはほとんど中身は入っておらず、本来の十分の一程しか残っていなかった。

 

「お、俺のジュースが…」

 

『お前が炭酸ジュースを買ったのに全力で走って来るからだろ。』

 

亮が呆然としているノベスに呆れて言ったが、ノベスからは返事がなかった。

 

ノベスはため息を吐きながら、ルルから借りたハンカチで自分の衣服を拭き、残った炭酸の抜けた炭酸ジュースを無言で飲み干した。

そんなノベスをよそにミリーは目の前の獲物に次々と食らいつき、ルルとスヒルは静かに食べ物を食べ、亮は次々に口に詰め込むミリーを見て固まっており、ノベスを気遣う者など誰もいなかった。

 

10分後、目の前に山のようにあった食べ物の四分の三はミリーの胃の中に収まり、あとは四人の胃の中に収まった。

「あ〜、食べた食べた。さあ、食事も終わったこと出し使い魔の御披露目会も終わりにしましょうか」

 

ミリーはそう言って、フィアを引っ込めた。

食べたと言ってもミリーを見て呆然としていた亮や、ジュースをこぼして衣服を拭いていたノベスはほとんど食べていない。

 

ミリーが言うのと同時に他の五人も自分の使い魔を引っ込めた。

 

亮が辺りを見回すと西の山に半分没した太陽が見える。先ほどまで広場にいた生徒は次々と寮に戻って行く。

 

「さあ、帰ろうぜ。」

 

ノベスが爪楊枝[ツマヨウジ]を口に加えながら言った。

 

「それぞれの用事もあることだしな。」

 

スヒルが亮を睨みつけて言った。

亮はその目を見て、今朝のことを思い出した。

 

食べ物の容器を片付け、食い足りないミリーとノベスは学食にルルと亮、そしてスヒルは寮に向かった。

 

『ミリーのやつあんなに食っておいてまだ食うのか。』

 

沈黙の帰り道、初めに亮が口を開いた。



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