第八章 召還と生成
〜〜教室〜〜
亮達5人が教室に入ると中はうるさかった。今日は授業で使い魔の召喚や魔器の生成を行うからであろう。
亮はもう鐘の鳴る時間と言うこともあって着席した。するとスヒルが近づいて来て亮に耳打ちをした。
「今夜、俺の部屋で」
亮は静かに頷いた。スヒルはそれだけを伝えると自分の席についた。
〔やはり、もう分かってしまったか。〕
亮は小さいため息をついた。
ちょうどその時に鐘がなり担任が入ってきた。
「おっ、ノベス。ちゃんと来ているじゃないか、これで連続遅刻記録も破れたな。」
担任が嫌みたっぷりににやつきながらに言うとノベスは暗い顔をし俯いた。
「さて、今日はお前たちが楽しみにしていた儀式、使い魔召喚と魔器生成を行う。
持ち物はいらない。闘技場に集合だ。」
担任はそれだけを言って教室を出ていった。担任が出ていくと教室にいる生徒もぞろぞろと廊下に出て移動を始めている。
亮達もあとに続いて廊下に出た。みんな自分が何を召喚するのだろうと話している。
「やっぱ、俺はドラゴンだろうな。」
調子に乗っているノベスが言う。
「何言ってんの?それはあんたの叶わない夢でしょ?ノベスは良くてラットじゃない?」
ミリーが笑いながら言った。
「ラットって…おい一番弱いやつじゃねーか。」
「ノベス自体弱いのに強い使い魔が出ちゃったら使い魔にも馬鹿にされちゃうよ。今でさえみんなに馬鹿にされてるのに」
ルルがいうと、その言葉を聞いた周りの人はクスクス笑って、ノベスが黙った。
この時亮は思った。
〔ルルって意外に黒い。〕
それから暫くの沈黙の後亮達は、東京ドームくらいの大きさの闘技場についた。
「ここが闘技場よ。
ここで学園のイベントとが儀式をするの。最大収容人数は7万人よ。ここだったら何が召喚されても大丈夫でしょ?」
ルルが丁寧に亮に説明してくれた。闘技場の中に入ると中央にがたいのでかい全身毛むくじゃらの男が立っていた。恐らく召喚術の先生だろう。その人が亮達を確認すると叫んだ。
「よ〜おし!みんなこっちに集まれ!!」
みんながその男の元に寄るとその男は言った。
「よし!みんな集まったな!俺は召喚術の担当の教師だ。これからお前たちの使い魔を召喚してもらう。みんなこの時の事を楽しみにしていた奴は多いと思うが、真剣に聞いてくれ。これから使い魔を召喚するが、一つ注意をする事がある。
それは、使い魔を奴隷として使わないことだ。使い魔と言えどちゃんとした生物だ。だから、使い魔にもちゃんとした感情ってやつがある。もし使い魔を奴隷扱いにし続けていたら、いざという時に言うことを聞いてもらえなくなる。最悪の場合殺される。だからその事を肝に命じて、使い魔は自分のパートナーとして扱え。
以上だ。」
周りの生徒は真剣に先生の話を聞いている。
「やり方は簡単だ。
まず、あの魔法陣を見てくれ。」
先生はフィールドに描かれている一つの魔法陣を指差して言った。
「まず、あの魔法陣に手をつき全力で魔力を込めるんだ。
すると、お前達に合った召喚獣が出てくる。その時に使い魔との契約が成立し、契約者どうし会話が可能になる。つまり、第三者から使い魔との会話を見ると人間が独り言を言っているようにしか見えないって訳だ。
それじゃあ、ここに一列に並んでくれ。」
先生が亮の前に立ち、列を作るように指示した。なので、先生の目の前にいる亮は自動的に先頭になった。
〔一番初めの人が失敗するのは嫌だよな〜〕
亮は自分の力に心配していた。
「おい、リョウ。羨ましいぞ。」
不意に後ろからノベスの声が聞こえた。亮の隣に座っていたノベスやルルらは最後の方に並んでいる。
「じゃあ、始めてくれ。」
亮は先生に指示され、魔法陣に魔力を込め始めた。
亮は多少魔力を抑えたが、まだ魔力が足りないようなので最大限に魔力を放出した。
気がつくと、雲一つ無かった空が曇り始め辺りが暗くなってきた。すると突然、魔法陣が輝き亮は白い光に包まれた。亮は目を開けてはいられず目を瞑っていたが光が収まるのを感じ目を開けると目の前に見覚えのある。赤い鱗のドラゴンがいた。
そのドラゴンは亮を見るや否や驚きを露わにして叫んだ。
〈リョウ!?〉
『ジョゾ!?』
亮は驚きのあまりに叫んでしまった。
ジョゾの言葉は亮にしか聞こえないのだが、亮の言葉は驚きのあまりに唖然としている教師や生徒達の耳に入っていた。
「ジョゾ?」
不審に思った先生は、亮に尋ねた。
『え?あっ!ええっと、ジョゾは突然思いついたこいつの名前です。』
亮はハッとして慌てて言って誤魔化した。
「そ、そうか。じゃあ、次。」
先生は亮の後ろに並んでいた呆然と立っている男子生徒に背中をそっと叩き指示した。
「すげ〜よな〜。リョウの奴、初めっから最上級使い魔のドラゴンなんかだしちゃってさ。しかも、四本指だぜ?
あれじゃあ、リョウの次にやる人が可哀想じゃね〜か。」
ノベスは後ろにいる3人に話しかけた。竜の場合、指の本数はその竜の地位を表している。実際に召喚される竜は二本指が普通で、良くて三本。四本指はめったに見られない。亮のような王族クラスの五本指は歴史上召喚されたことがない。
「そう言えばそうよね〜。でも、リョウ自身ドラゴンを召喚するなんて思っていなかっただろうししょうがないんじゃない?」
ルルがノベスに賛同するように言った。
「あっ、あの人(リョウの次の人)はユニコーンみたいよ。
でも、結構上位使い魔なのに本人はあまり喜んではいないわね。可哀想。」
ミリーが亮の次の男子生徒を見て気の毒そうに言った。
そんな中、スヒルは亮とそのドラゴン、ジョゾを眺めて何か考え事をしていた。
〈で、何でリョウがここにいるんだ?人間界に帰ったんじゃないのか?〉
ジョゾが召喚されていく使い魔達を眺めながら落ち着いた口調で聞いた。亮もジョゾと同じ方向を向いている。
『いや〜、人間界かと思ったら魔界に来ちゃったんだよね〜。そして、事の成り行きってやつでこの学校に入っちゃったって訳。』
亮が頭をカリカリ掻き笑いながら答えた。
〈はぁ〜、それで召喚術の授業で俺が召喚されちゃったって訳か。〉
ジョゾは溜め息を吐きながら言った。
『ははは、そう言うことだね。まあ、そんなに落ち込むな。そんなに俺の使い魔が嫌か?』
亮が聞くと、
〈別に、竜王子の使い魔って言うのはすごい栄誉的な事なんだけど…
面倒くさい。〉
『そうか、それはドンマイ。
まあ、これからもよろしくな。』
〈ああ、よろしく。〉
ジョゾは憂鬱そうに答えた。
〈ところでリョウ、お前自分が竜であることを誰にも言っていないだろうな?〉
「ああ、そのことは友達を含めて誰にも言っていない。
だけど、、、」
〈だけどどうした?〉
ジョゾがまじまじと迫ってきた。
「疑いを持たれている。いや、もう俺の正体の事を確信しているかもしれない。」
〈誰にだ?〉
亮はスヒルを見てジョゾに合図をした。
〈あいつか?〉
ジョゾはスヒルに気づいたようだ。
「ああ、昨夜あいつと少しあってな〜。」
〈そうか…〉
「でも、大丈夫だ。あいつは悪い奴じゃない。」
亮は念を押すように言ったが、ジョゾはスヒルを睨みつけた。
『お、次はノベスの番かさて何が召喚されるのやら…』
〈ノベス?リョウの友達か?〉
『う〜ん。まあ、そんな感じかな。』
ジョゾは納得したように頷いた。
「ハァァァァァ!」
ノベスは叫びながら全力で魔法陣に自分の魔力を込めた。
すると、みんなと同じように魔法陣が光り出し、光がノベスを包んだ。光が収まるとノベスの目の前にはグリフィンがいた。
グリフィンとは鷲の頭、翼、前足を持ち、かつライオンの尾や後ろ足を持つ魔物で獰猛[ドウモウ]と言える性格をしているが知能は低く、使い魔としてのランクも真ん中くらいだ。
それでも、良くてラットだと言われたノベスは大いに喜びはしゃいでいた。
〈うるさいぞ、人間。〉
ノベスがはしゃいでうるさくしていると、突然グリフィンが機嫌悪そうに言った。
「え?誰?」
ノベスの頭の中はグリフィンが召喚されたことに喜んでおり、契約者同士が会話できることすっかり忘れていた。
〈お前の目の前にいるだろう。
はぁ、俺も堕ちたものだな。よりによってこんな馬鹿な人間と契約することになるとはな。〉
ノベスのグリフィンは溜め息を吐きながら言った。ノベスは知能が低いグリフィンに、しかも会って間もない使い魔にいきなり馬鹿と言われて急に落ち込んだ。
「ノベス、意外と普通のが出たね。」
ミリーがグリフィンを見て言った。
「そうね。でも、ノベス早速落ち込んでいるわよ。」
ノベスを見てルルが言う。
「どうせ、早速グリフィンに馬鹿にされたんじゃない。」
機嫌の悪そうなグリフィンと落ち込んでいるノベスを見るとある程度想像はつく。
「グリフィンって言うのがある意味運が悪いね。グリフィンは人間を毛嫌いする習性があるから。」
ルルの言うのはその通りで、グリフィンは特に人間と馬を嫌う傾向がある。なので、グリフィンは最も人間になつかない使い魔なのだ。
いつまでもノベスが魔法陣に手をついて落ち込んでおり、儀式の邪魔なのでミリーは物体浮遊でノベスを闘技場の隅に飛ばした。
「さて、今度は私ね。」
ミリーは声を弾ませながら言い、魔法陣に魔力を流し始めた。
ミリーもみんなと同じように光に包まれた。
光が消えるとミリーの前には羽飾りのついた黄金の兜、黄金の鎧を身にまとい、右手に長剣、左手に楯を構えた金髪で長身の美しい女性が立っていた。
「え…?」
ミリーは半ば口を開け、放心状態になっている。目の前の女性は魔物とはとても言い難く、神聖的な感じがした。
「ヴァルキリー!?」
ルルが不意に声を上げた。驚いていたのはこの二人だけでなく、それを見た者全員が驚いていた。
(亮も見ていたが彼女の事を知らないので特に驚きはしなかった)
ヴァルキリーとは、知の神、オーディンの僕[シモベ]であり、“戦死者を選定する血塗られた乙女”と言われている。
普通、オーディンの僕である時点で召喚される訳がないのだが、なぜかこういう結果になってしまった。
〈主よ。〉
ヴァルキリーは放心状態になっているミリーに声をかけた。
「え?あっ、何?」
不意に声をかけられミリーは混乱していた。
〈さっきからぼ〜っとしているが、何か喋らないのか?〉
「え、あっ、その〜、あなたの事を教えてくれる?」
いつもの調子に戻れないが、何とかまず知りたいことを聞けた。
〈我の名はフィア、見ての通りヴァルキリーだ。〉
「ヴァルキリーってオーディンの僕でしょ?何で使い魔として召喚できたの?」
ミリーは恐る恐る聞いてみた。
〈分からない。だが、我々ヴァルキリーは運命というものを信じる。私が主の使い魔になったことは元々そういう運命だったからでだろう。〉
「そ、そう。分かったわ。」
ミリーは実際分からなかったのだが、後ろにまだルルとスヒルがいるので話を終わらせフィアを連れて魔法陣を出た。
「ミリーとあのヴァルキリー、何を話していたんだろう?」
ミリーが魔法陣から出てルルがスヒルに聞いた。
「さあな、後で聞けば分かるだろう。」
スヒルはそっけなく答えた。
「そうだね。
じゃあ、行ってくるね。」
ルルはそういって魔法陣に向かった。
ルルが魔法陣に立つとルルは深い深呼吸を一回して魔法陣に手をつき魔力を流し始めた。するとルルは光に包まれた。光が消えるとルルの目の前には水色の鱗を纏った一頭の竜がいた。
亮はジョゾとルルが光に包まれ、それが消えると同時に驚いた。
〔マナ!?〈マナ!?〉〕
ルルの目の前の水色の竜はマナだった。
【あれ?ここはどこ?】
マナはいきなり見慣れない所にきたのでかなり戸惑っている。
【マナ、落ち着け。お前は使い魔として人間に召喚されたんだ。】
ジョゾはマナを落ち着けるように言う。マナは人間と一緒にいるジョゾを見つけた。
【お前の目の前にいるのがお前の主人だ。その者に伝えたい言葉を念じてみろ。そうすれば、お前の伝えたい事はちゃんと彼女に伝わる。】
ジョゾはそれだけを言って静かに頷いた。マナも頷き返しルルと向かい合った。
その頃ルルは、自分がドラゴンを召喚したことに驚いていた。まさか自分が三本指のドラゴンを召喚するなど全く思っていなかったのである。ルルは唖然としただ、辺りを見回し焦っている目の前のドラゴンを見つめるだけだった。
〈あなたが私を召喚したのですか?〉
ルルはそのドラゴンに突然尋ねられた。気がつくとそのドラゴンから焦りの表情はほとんど消えていた。
「ええ、そうよ。私の名前はルル。これからよろしくね。」
ルルは焦らず穏やかに言っていたが、彼女の手は僅かに震えていた。
〈私の名前はマナと言います。これからよろしくお願いします。〉
ルルはマナの挨拶を聞くと安心したように一息吐いて、手の震えを止めた。それからマナを連れて魔法陣から出た。
「さて、お!スヒルで最後か。期待しているがもう俺は驚かんぞ。」
先生が微笑しながら言った。
「最後は俺か、大丈夫だ。別に凄い奴を召喚させるつもりはない。」
スヒルはそう言いながら踏まれて消えかかった魔法陣に自分の魔力を注いだ。
魔法陣を覆っていた光が消えるとスヒルの目の前にまたしてもドラゴンが出現した。それは灰色の鱗に三本指の竜だった。
その時、スヒルは周りにいるルルのドラゴン、亮のドラゴン、そして亮から一斉に強い視線を感じた。
スヒルによって召喚された竜は辺りを見渡し、すぐに状況を判断したらしくスヒルに声をかけた。
〈僕の名前はテト。君が僕を召喚したの?〉
「ああ、そうだ。俺の名はスヒル。これからよろしく頼む。」
「よろしく。」
『ルルは、マナ。スヒルはテトか〜。まさか、俺の友達が友達を召喚するとはな〜。』
亮はスヒルが召喚したテトを見て言った。
〈良かったじゃないか。またあいつらに会えるようになるんだから〉
『ああ。』
ちょうどその時、
ゴーン、ゴーン、ゴーン
授業の終わりを知らせる学校の鐘が鳴った。
「よおーし!みんな終わったな。
それじゃあ、今日の授業はここまでだ。」
先生がそういうと周りの生徒は次々とその場を去っていった。
『次って、剣術の授業だっけ?』
亮が授業が終り、闘技場からの帰り道に言った。今現在使い魔は、五人とも引っ込めている。
「ええ、確か集合場所は武道場よ。」
亮の質問にルルが答えてくれた。だが、亮に武道場と言われても見たこともないし、場所すらも分からない。
〔まっ、ついて行けばいいか。〕
ノベスは、グリフィンに散々馬鹿に去れたのが珍しく無口になっており、ミリーはいまだに自分がヴァルキリーのフィアを召喚したことに驚いているのかこちらも何も話そうとしない。スヒルは何やら考え事をしているらしく反応ゼロだ。
それから五人は誰も沈黙を破らずに歩き続け気づかぬ間に武道場に着いていた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
授業の始まりの鐘が鳴った。
生徒は武道場の床で体育座りをして前に立っている老いた男性教諭を見ている。
「さあ、授業を始めようかのぉ。
君達は今日初めて剣術を学ぶ訳じゃが、まず初めに魔器生成を行ってもらう。
儂の話が終わったらあそこから一人一つ魔法石を取りなさい。」
先生が鉄鉱石みたいな黒い光を放つ石の置いてある机を指差しながら言った。
そして心を無にし、外部からの感覚を全て断ち切るんじゃ。それができたらそれを維持しながら石に魔力を込めてみよ。さすれば、石は主らの魔力に反応し己に適した魔器に姿を変えるじゃろう。
よし、以上じゃ。」
先生の話が終わるや否や生徒は立ち上がり机の上にある魔法石を取りに行った。
「誰か俺の石も持ってきて〜」
いつの間にか本調子に戻っているノベスが言った。
「嫌よ。自分で取ってきなさいよ。」
ミリーが断った。こちらも本調子に戻っている。
「じゃあ、じゃんけんで負けた奴が五人分の石を取りに行くってのは?」
「それなら良いわよ。ね?ルル。」
「ええ、良いわよ。」
「良いだろう。」
『俺はパ…』
亮はじゃんけんに信じられないほど弱い。だから、パスしようとした。
が…
「「「じゃんけんぽい」」」
出してしまった。
「トホホ…」
五人分の魔法石を持ってきたのは最初に言い出したノベスだった。亮は奇跡的にじゃんけんに勝っていたのだ。いや、厳密に言うと奇跡というより当然だった。実はノベスはじゃんけんに勝ったことすらなかったのだ。しかも、それよりも致命的なことに、自分がじゃんけんで勝ったことがないということを皮肉な事にノベス自身気づいていないのだ。ノベスの連敗記録はどこまで続くのであろうか。
亮はノベスから石を受け取ると早速目を瞑って心を無にし、それが出来たところで魔力を流した。
すると亮は、手を伝って魔法石が変形していくのを感じた。亮は石の変化が止まったと感じると目を開けた。
亮が目を開けると手には青白い光を放つ剣が握られていた。柄の部分には二頭の竜の絵が彫られており、鞘の部分には小さく“牙竜剣”と金色の字で書かれていた。
亮はその牙竜剣を眺めていた。
ふと横を見ると、スヒルがおりその手には昨夜の時の物とは違う双剣が握られていた。そして、ルルの手には長弓とその矢、ミリーの手には死神が持っているような巨大な鎌、ノベスの手には巨大な鎚が握られていた。
他にも槍を持つ者や、巨大な斧を持つ者、ヌンチャクを持つ者など様々いた。
「うむ、皆魔器を生成したようじゃな。
付け足しておくが、主らの魔器にはどこかにその魔器の名前が書いてあるはずじゃ。
それを見つけたら、心の中で消えろと念じてみぃ。さすれば、魔器を消すことができる。その反対も可能じゃ。」
亮は半信半疑でその一連の動きをやってみた。すると見事に魔器を消したり、現れさせたりすることができた。
「それじゃあ、こんなものでいいかのぅ。
よし。じゃあ、鐘が鳴るまで素振りでも何でも好きにするがよい。
しかし、危ないことはするでないぞ。」
先生は長く白い髭を撫でながら言った。
その言葉と同時に生徒達は真面目に素振りをしたり、自分の魔器を自慢してたりしていた。
「お〜い。リョウ。勝負しようぜ?」
早速ノベスがハエのごとく寄ってきた。
『勝負って、おい!それって危ない事に入るんじゃね〜か?
しかも、なんで俺?』
「ん?気分だ。それに先生がアレだから。」
そう言ってノベスは武道場の角にいる口を半開きで上を向きながら椅子で鼾を掻いて寝ている先生を指した。
〔おい、この世界は授業中に先生が寝てていいのかよ!〕
「あ〜、なるほどね〜。まあ、別にやってもいいか。」
亮は自分の力を試したい事もあり、昔浩治や拓海とよくチャンバラごっこをして遊んだ為それなりに自信があったのでその誘いに乗った。
「ダメよ。先生が見てないからってそんな危ないことをしちゃあ、もし事故でも起こったら先生の責任になるのよ。」
ここで優等生のルルが早速止めに入った。
「大丈夫だって、怪我をしない程度にやるんだからさ。さっ、やろうぜリョウ。」
ノベスはルルの忠告を無視して言い、魔器を生成した。
「担任に言いつけるわよ。」
ルルのその言葉はノベスの心を貫いた。
「う…、
リョウ、止めよっか。」
ノベスの表情が急に焦り顔になり言った。
『ああ。』
亮はノベスと闘いたいのだが、自分に飛び火するのは真っ平御免だ。
亮は何もする事がないのでただ牙竜剣の素振りをするだけだった。
ふと、横を見るとスヒルが双剣で素早く次々と技をこなしている。
〔そういえば、昨夜も双剣を使っていたな〜〕
亮は手を止めスヒルの繰り出す技に長い間見とれていた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
亮が見とれているうちに授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
その後亮は基本魔術、錬金術、魔法歴の授業をこなしていった。
亮は基本魔術は竜界で学習していたため授業には難なくついていけたが錬金術や魔法歴はさっぱりだった。ただ、意味の分からない用語が次々と出てきてしかも、以前と違って90分授業なので亮にとっては地獄としか言いようがない。
五時限目の魔法歴の授業が終わったと同時に亮は机にだらしなく伏せた。
〔これからこうゆうのが毎日あるのか〜。不登校になりそう…。みんなから遅れている分勉強しないとな〜。〕
亮はそんな事を思いながら帰りのHRをやり過ごした。




