第55話 新人騎士
突っ込んできたモルトは俺の前までくると手に持っている剣を上から下に振り下ろしてきたので体を少し動かして避けると振り下ろされた剣は途中で向きを変えこちらに向かってくるが俺はそれを剣で受け止め、モルトの顔を確認すると驚いたような顔をしていた
攻撃を受け止められたモルトは動きを止めてしまっていたので
「攻撃を止められても足は動かし次の動きを考え続けろ、本当の戦闘なら足を止め、考えるのをやめたら死ぬぞ」
俺はそう言ってから殺気を軽く放つ
今回の模擬戦は普通の模擬戦として終わらせるつもりはない。モルトの動きからおそらく戦闘も自分よりも弱い魔物以外とは戦ったことがないのだろう。だが迷宮街の防衛騎士団は冒険者を相手にすることもあるのだ。そのとき、もし自分よりも強い相手と戦った場合、最悪の場合は自分が死ぬ可能性もあるので対人の戦闘経験が少ないモルトに冒険者と戦うときのどういったことをされるかを教え、死ぬ可能性を少しでも減らすための訓練のような物にするつもりだからだ
俺が殺気を放つとモルトは後ろに飛んで俺との距離をあけ分かりました、と言ってきた
そのあとのモルトの動きは徐々に良くなっていた。攻撃をしたら一度離れ、受け止められたときの驚いた顔はしなくなりすぐに別の攻撃をしてきたりと止まることが少なくなった
「モルト、お前の武器はその剣だけか?」
突然聞かれたモルトは最初は何を言われたのか分からなかったようだが一度自分の体を確認したときに言われたことの意味が分かったようだった
モルトは今までの攻撃に剣だけを使っていたのだが体を使えばさらに攻撃手段が増えるということを分かってもらえたようで次の攻撃からは蹴り等の攻撃も少しずつ加わり始めた
少しヒントを与えればそのヒントからすぐに答えを見つけ、自分の力に変えようとするモルトを見ていると全く力を出さないと失礼になると思い、モルトに注意をする
「モルト、いいものを見せてもらった礼に俺の力の一部を見せてやる。止めれるなら止めてみろ」
今教えておいた方がいいと思ったことは一通り教え終わったので自分の力を見せようと思いそう言ってから構えをとる
俺が構えをとってからモルトの体が固くなったように見えた
あとで注意しておかないとな、と俺はそう思いながらも一気に近づき手に持っている剣を横に振りモルトの首の横に止めた
「しょ、勝者、シキ!」
アルフのその声が聞こえたあと剣を下ろすとモルトはその場に座り込んだので声をかける
「お疲れさん、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。緊張が解けてしまって」
「そうか、それなら良かった。ひとつ言っておくが途中からの動きはよかったが最後のはダメだったな、しっかりと訓練しておけよ」
俺はそう言ってモルトから離れ、アルフとシズクがいるところへ向かうとシズクが近づいてきてお疲れ様でした、と声をかけてきたのでとりあえず頭を撫でようとして途中で腕を止めてみた。
するといつも撫でられるときは目を閉じているシズクはなかなか頭に俺の手が置かれないことを不思議に思ったのか少しずつ目を開け、俺が手を途中で止めていることに気づいたのか頬を膨らませこちらを見てくるので頭に手を乗せて撫でながらアルフと話しをする
「アルフ、騎士達には一から礼儀を教え直した方がいいと思うぞ。それとモルトだが悪いところはちゃんと指摘してやれよ」
「その通りだな。礼儀は教え直さないと街の人たちにも迷惑をかけそうだからな。モルトのこともちゃんと見ておこう」
俺たちがそう話していると
「マスター、たくさんの人が見ているのでさすがにそろそろ恥ずかしくなってきました」
シズクが赤くなった顔を伏せながら俺にそう言ってきたので撫でるのをやめ、アルフに模擬戦じゃなくなったことを謝り騎士団の人たちに挨拶をしてからギルドでおすすめされた宿に向かうため詰め所を出た
次回は宿に向かったあとのことを書こうと思います
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