6 星が流れて
前回のあらすじ
ダークヒーロー見参!
月に変わってお仕置きよ!
(ポォポォうるさいのがやっと終わり)
6-N
またしても噛んでしまいました。
チルちゃんが居てくれたお陰でいつもより上手く話せてると思ったのにな。
あの後チルちゃんがさっきの戦いについて聞きたい事があるって言ってたので、ご飯やお風呂などを済ませたらもう一度あの高台に集まることになりました。
「お姉ちゃん、ご飯温め直したよー」
「はーい、今降りまーす。」
いい匂いがします、お肉はあるでしょうか。
サラダに唐揚げ、オニオンスープだー
わーい、おにくー
「「いただきます」」
「お風呂も洗って今入れてるからね、ご飯食べ終わる頃には入れるよ」
「チルちゃんは良いお嫁さんになれるなー」
「嫁になんていかないもん、ていうか家ではゲーム名はやめて、どっちにしても間違ってるけどさ」
「あう、だってこないだユグドラシルで本名呼んだら怒ったから…」
「お姉ちゃんには分からないかもしれないけどあっちの世界ではティルなの、でも完全に日本人のこっちでティルなんて呼ばれたら恥ずかしいでしょ?」
「ソース顔の時はチルちゃんで醤油顔の時はちーちゃんでいい?」
「そうだけど醤油顔って言わないで!」
「年頃の女の子は難しいわぁ」
「お姉ちゃんが変わってるの!」
「えへへ、こよたんにも言われたー」
「男の人苦手なのに随分と仲よさそうね」
「こよたんは話すの待ってくれるし面白い人だから…」
そうだ、ちーちゃんにはこよたんにプロポーズされたことを話さないと
「あ、あのね、突然なんだけどお姉ちゃん、ちーちゃんに報告しないといけない事があって…聞いてくれる?」
「私のプリン食べたのなら知ってるよ?」
「バ、バレてた!ごめんなさい!」
「明日帰りに買ってきてくれたらいいよ」
「はい、了解です!ってそうじゃなくて、聞いて…ごほん、実はプロポーズされまして…」
「誰が?薫さん?おめでとうって言っておいてよ」薫さんは私の唯一のお友達です。
「違うよ〜私だよ〜」
「それホントに言ってる?」
「ホントー」
ちーちゃんはううーんと唸っていますねー
しばらくしたらグイッと顔を近づけて目を見つめられます。
「お姉ちゃん、その人は本当にお姉ちゃんの事を守ってくれる?」
「命に代えても守りますって言ってくれたし、実際にそうしてくれたんだ。それに私も彼を守りたい、ついていきたいって思うの」
ちーちゃんの瞳が一瞬うるっとして顔を離します。
「そっか、お姉ちゃんがそこまで言うなら信じられる人なんだろうね。さ、寂しいけどガマンできる…よ」
あう、ちーちゃんが私を信用してくれているのが伝わってきてなんだか涙が出て来ました。「ありがどぉー、わだじしあわぜになるからぁー」
「お姉ちゃん泣かないでよぉ、私まで泣けてくるじゃない」この後2人で思いっきり泣きました。
ちーちゃん、これからもずっとずっと家族だからね。
唐揚げはちーちゃんが残した分もいただきました。味付けが違うのがもう一種類あって大変美味しかったです。
その後子供の頃の様に2人でお風呂に入って少しハシャいでから再びユグドラシルにログインしました。
遅くなっちゃったけどこよたん待ちくたびれてないかな?
ログインすると高台でこよたんは寝転んで本を見ていました。
「遅くなってゴメンね寒かったでしょう?」
「僕も遅くなってさっき来たとこだよ。確かに夜は冷えるからニケたんこそ暖かくした方がいいよ。」
なんだかまるでデートの待ち合わせみたいです。
「何の本読んでたの?」
「物語を記録する本だよ。今日戦ったモンスターの事が描かれていたから見てたんだ。」
なにやら倒したモンスターさんの事を詳しく見れる様になるそうです。
便利ですねー
私も寝っ転がっているとちーちゃんが(いえ、こっちではチルちゃんです。)ログインしました。
「ごめんなさい、お待たせしました。」
「大丈夫ー、2人で本見てたんだー。」
「こよみさんに言ったのよ、お姉ちゃんはさっきインしたばかりじゃない。」
「そうだったー」
こよたんが私たちの会話聞いて笑っています。
「大丈夫です、僕も遅くなって少し前にきたばりなので。」
「そうなんですね、それで聞きたい話って言うのはさっき戦ったシークレットバトルについてなんです。」
「そうじゃないかなと思ってダイアリーを見ていました。それで少しだけ分かったこともあります。」
わー、言われる前に調べてるなんてこよたんって賢いねー
「ありがとうございます。早速聞かせてもらってもいいですか?」
「はい、ティルさんは特殊個体は知っていますよね?」
「通常の個体より強く滅多に出会う事のないレアなモンスターで何種類かは各大陸で確認されていますね。私も倒した事があります。」
「僕は今日、初めて遭遇したんですけどその特殊個体が関係してるんじゃないかなって思っています。」
「確かにレアなモンスターだけど倒したからってあんなのが出てくるなんて聞いた事がありませんよ?」
「あの戦闘が始まる直前に、
《隠された戦闘領域条件解放》って表示されたんです。」
「条件解放ですか…」
「はい、恐らくですけど特殊個体に対して何らかの行動、もしくは倒した後の行動によって条件を満たしたんじゃないかと思います。」
「たしかに何らかの条件を満たしたんだとしても特殊個体は関係ないかもしれないのでは?」
「あのワンダークルッポーというモンスターが出てきた時に《ヤングブラザーズを倒した漢》を探してたんです。実は僕たちブラザーズを倒したけど気を失ったからトドメを刺さずにほっといたんですね。それからすぐ近くの《北の高台》で1時間以上話していました。」
「そっか、たしかクルッポー達は6時を過ぎると巣に帰る習性がある。6時を過ぎて戻ってこないブラザーズを探して見つけた時には倒されていた。近くを探すとノースガーデンに残っていた2人を見つけて戦いを挑んだ。」
「そうだと思います。ただダイアリーにワンダークルッポーの情報が載ってるんだけど出現条件は載ってないから絶対にそうとは言えないけど。」
「もしかしてお姉ちゃんが襲われたのもシークレットバトルだったのかもしれません。」
「ああ!アオイアイツ達に襲われた話か!」
「お姉ちゃんから聞いてたんですね、怪我をしてるモンスターなんて見た事ないし、弱いモンスターだから気にしてなかったですけどもしかしたら特殊個体だったのかも…。」
話がよく分からないので星を眺めていましたがどうやら私が襲われた時の話題になったようです。
「いや、戦闘が始まる前に警戒音が流れるし、ハッキリと《隠された戦闘領域条件解放》って出るんですよ?でもそんな話はニケたんから聞いてません。」
「ごめんなさい、うちのお姉ちゃんの話なので言ってないからって本当になかったとは限らないです。」
む、悪口を言われた気がするぞー
「ニケたん、辛いかもしれないけどアオイアイツ達に襲われたときを思い出してほしいんだ。ニケたんは洞窟に入ってアオイアイツ達の目が赤くなった。嫌な予感がして逃げ出した。そう話してくれたよね?」
「うん、それであってるよー」
「お姉ちゃんの性格を考えたらアオイアイツの目が赤くなったら余計に興味を持つと思うけど?」
むむむ、もう一度良く思い出してみます。
たしか私はあの時ご家族に挨拶しなければと思いました・・・たしかに眼の色が変わった時もチルちゃんと似た色をしているなぁなんて考えていたらなんか騒がしくて・・・あ、
「な、・・って・・・・」
ごにょごにょ
「え、どっち?聞こえない!」
「ニケたん、怒ってるわけじゃないから教えて」
「鳴ってた・・・ビービーうるさかったです・・・すぐに逃げたから文字は読めなかったけどなんか出てました・・・」
「じゃあやっぱりシークレットバトルは特殊個体に対して条件がクリアされたときに発生する隠れイベントなんだ!」
どうやら謎が解けたようで良かったです。
私も襲われた甲斐がありました。
「こよみさん、さっきダイアリーに条件が書いてないって言ってましたよね?」
「そうなんです、ヘルプにもシークレットバトルの事は追記されていませんでした。」
「そっか、それじゃあこのことはあまり人に言わない方がいいと思います。」
「あーそうですね、そうします。」
「チルちゃん、どうして?」
書かれてないなら教えてあげないとみんなわからないんじゃないのかな?
「あのね、私たちがこういうことがありましたって話したとするでしょ?そしたらその人は証拠を見たがると思うの、でもダイアリーにも記載されてない上に試すにも特殊個体はめったに出会えない。」
「ふむふむ」
「私たちは嘘つき呼ばわりされるかもしれないし、便乗した人が本当にウソをつくかもしれない。」
「なるほど」
「信じてもらえたとしたらそれはそれで特殊個体狩りが広まって狩場の占有だったり、足の引っ張り合いが起こってギスギスしちゃう可能性があるの。」
「よく分かってないけど分かったよ、誰にも言わない」
「自分たちの冒険なんだ、隠された条件だって自分で見つけた方が楽しいよきっと。」
「それなら分かる!」
答えを教えてもらうより自分で見つけた方が楽しいし嬉しいよねきっと
「あ、流れ星だ。」
こよたんがポツリとつぶやきました。
「あ、ホントだこっちのも流れた。」
チルちゃんも見つけた様です。
「私も見たい!どこどこ!?」
「こっちこっち」「今あれも流れた」
「どこー!?」「ここここ」「こけこっこー」
今ふざけたのどっちだー
二人にからかわれました。
なのでこよたんの手を掴んで大きな声で言い放ちます。
「うわぁぁん!この人にイタズラされました!」
「なんで僕だけ!?そのセリフ他人が聞いたらヤバイから!」
「もう、お姉ちゃんってば、ここで寝転んで上を向いて。」チルちゃんがこよたんを掴んだ方とは逆の手を取り三人で寝転びました。
「星って金平糖みたいでキレイだねぇ」
「普通逆じゃないかな?」
「また食べ物のことばかり言ってるんだから」
天に広がる星々の輝き、あちらでもこちらでも次から次へと流れていきます。
流星群は途切れる事なく続きました。いつまでもいつまでも
この世界はゲームです。作り物です。
この景色も偽物です。本物ではありません。
それでも偽物の中で出会ったこよたんは本当に存在します。
彼に貰った優しい言葉や楽しい気持ち、三人で見たこの景色は想い出として私の中にずっと残ります。
それは全部私の宝物なのです。
ずっとこのままついていけますように
『漢星が落ちたポォ…』
『ポポポォ、奴は我等伍ポォ星《伍老星》の中でも最弱ポォ』
『どうせまた油断したんだポォ!次は俺が出るポォ!』
『いや、俺が出るポォ、我が友ワンダーの為にヤツラの叫びで鎮魂歌を奏でるポォ』
本編に登場する予定は現在有りません。