4 その男危険につき
前回までのあらすじ
そこで伸びている唐揚げくんだと…?アニキのことか…?アニキのことかポォ!?
4-N
「ニケたん!これを使って体力を回復させるんだ!」
手渡される回復アイテムを一気に飲み干しました。りんごジュースみたいな味で少し美味しかったです。
「聞いて、この雰囲気だ、逃げる事は出来ない…と思う。それにさっきの奴より強いのが出てくるだろう。でも僕は勝ちを諦めたく無い、ずっと逃げたり負け続けてたから余計にね、だからもう一度、2人で勝とう」
こよたんの声は少しだけ、ホントに少しだけ震えていた。
「うん、2人で勝って次の大陸にいこ」
覚悟を決めて入り口を睨みつけます。
『お前がヤングブラザーズを倒した漢か?』
クルッポーさん達の間から堂々と現れる影
《特殊親玉ワンダークルッポーが現れた》
2メートルを超える程の巨体で、鍛えた筋肉はハト胸だけではなく腕も足もお腹も首も全部が太いです。
リュックサックを背負っていてオーバーオールを着ています。
『お前は山が好きか?』
「山は好きだよ、里より美味しいもん」
「ニケたん、キノコとタケノコの話じゃないよ!」『オンナに聞いてないわぁ!!!』
ビリビリビリ!
あわわ
空気が震えてるよーしばらく黙るー
『山はいいゾ?山に登ると全てを忘れ、ただひたすらに己を高める事が出来る。そして何モノより大きい!ワタシと一緒に山に登らないか?』「悪いけど一緒に冒険する相手が出来たばかりでね。山登りは今度にするよ。」
『ふむ、一度登ると山の良さを分かってもらえるんだがな…よし、俺が勝てばお前は一緒に山に登るんだ!』
「やっぱりこの戦闘は避けられないか…」
『ワンダーアニィは山に登る為に筋肉を鍛えすぎて飛べなくなった《クルッポーファミリア》でも異端の存在ポォ!』
タイマツを持ったクルッポーさんが教えてくれました。ワンダーさんがさっきのタイマツクルッポーさんに近づいていきます。
ブゥン!バキィィ!
『クルッポォォォォ!!』
パァン
あわわ、タイマツクルッポーさんが殴られて消えちゃった。
『俺が認めた漢と話している時は勝手に喋るなとあれだけ言っただろう?』
慌てて両手で口を押さえます。
だって消えたく無いですもん。
『さて、失礼した、始めようかどこからでもかかって来なさい。』
どんと胸を叩きます。
「いきなり仲間を殺すなんて狂った野郎だな、最初から全開で行かせてもらう!」
《スキル発動・軽やかな足運び》
こよたんがワンダーさんの懐に飛び込みました。
《アーツ発動・巨大化する剣》
元々大きい剣がさらに大きくなりました!
そしてこよたんが下から剣を切り上げ攻撃がマトモに決まります!
『うん、いい攻撃だったゾ!』
はい!全然効いていませんねー!
「マジか、ノーダメージかよ」
『そんなに落ち込む事はない、ちゃんと効いているゾ、今の攻撃を後380回程食らってしまったら鍛えたワタシでもヤラレてしまうからな!はっはっは!』
「くそ!バケモノめ!」
『しかし、漢同士の戦いに武器なんて不粋なモノは要らないな!』
《特殊スキル発動》
《素手で掛かって来なさい》
こよたんの手の大剣が淡く光り始め粒子となり、光の粒子はワンダーさんの手に渡ってから実体化します。
『うん、大した剣ではないが大事にされているのが伝わるゾ!やはりお前は良い漢だゾ!」
こよたんの剣をタイマツクルッポーさんに渡して、大事に持っている様に言いつけています。
「だったら魔法だ!喰らえ!」
《魔法詠唱開始》
『Bad!漢の戦いは素手だと言ってるだろう?』あれ!?ワンダーさんが消えました。
《特殊スキル発動》
《引き締まった良い大臀筋だ》
『いい大臀筋をしているな、ついでに大胸筋の調べも聴かせてもらうゾ!』
「うわあぁ!何いきなり尻と胸を撫でてんだ!きもぢわりぃ!」
『うん、やはりいい音だ!』
ふぁぁぁぁぁ!あの人男の子の天敵だぁ!
で、でもいきなり消えたと思ったらこよたんの後ろに立ってたしニワトリさんの最終形態より速いかも…
「く、素手でやるしかないのか!」
『やっとお前の中の漢を見れるんだな待ちくたびれたゾ』
やれやれと腕を組みます。
こ、これは大ピンチです。
武器を取られて魔法も邪魔されてしまうとなれば手も足も出ません。
なら仲間が出るしかありません!
私は気づかれない様にタイマツクルッポーさんに近づきます。
まだ気づかれてはいません。
後ろから口を押さえ、タイマツを奪い取り石化させた斧で叩きました。
クルッポーさんは気を失い、他のクルッポーさんも気づいていません。
こよたん、待っててね、私も闘うから!
こよたんとワンダーさんは向かい合い、ボクシングの試合の様な戦いをしています。
ワンダーさんの攻撃は大振りでフェザーステップを使っているこよたんには当たりません。
でもこよたんのパンチはワンダーさんには効いていない様です。
強化した武器の攻撃で残り380回ですからこよたんのパンチは0と等しいものでしょう。
ああ!フェザーステップの効果が切れたのか足元に付いてた光の翼が消えてしまいました。
効果が切れた事でガクンと動きが遅くなり、その変化に対応が遅れた事でこよたんにワンダーさんのパンチが擦ります。
「ぐわあ!」
擦っただけでもこよたんのHPはぐんと減りました。
私は飛び出しワンダーさんの後ろからタイマツを投げてから同時に斧で切りつけます。
「こよたんをいじめるなぁ!」
ズバァ!
やった、攻撃が通用しました。
ワンダーさんがクルリと首だけてこちらを向きとても恐い形相でこちらを見ています。
「あわわわわわ」
『漢の戦いを女が邪魔するだと…?身の程を知れい!!!!!!』
ひえー
「ニケたん!下がって!」
《アーツ発動・正拳連弾!》
『漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢漢!』
さっきまでの大振りじゃなくて細かい突きを連発してくるー。
うわーん、クルッポーファミリーさんたちはこんなのばっかりなのーーー
何とか斧で受けとめてはいますがあまりに重いパンチに斧にヒビが入ります。
「おい!お前の相手はこっちだろ!?ニケたんから離れろ!」
『漢の戦いに邪魔者が入ってはつまらんからな!お前の相手はこいつを始末してからだ!』
「ふん、何が漢の戦いだ!お前はウソをついている!」
『な、なんだと!?山の漢がウソをつく訳がないだろう!』
「それだよ、お前本当に山に登った事があるのか?」
『ば、バカを言うな…ナゼそう思うんだァ?』
動揺して声が裏返っていますね、まさか?
「簡単だ、この大陸には山が無いんだよ。」
『アアァ!言うなァ!黙れだまれダマレだマれダァーマァーレェ!』
えええ!ワンダーで男の子の天敵なのにワンダーさんは山に登った事が無いなんて!
周りのタイマツクルッポーさん達も騒ぎ出します。
ワンダーアニィ山に登った事が無かったのかポォ
じゃあ俺たちが聞かされてた数々の武勇伝は何だったんだポォ?
ああ、あの長くてつまんない話ポォ、ウソに決まってるポォ
俺は薄々気がついてたポォ
あんなのについてきてた俺らがバカだったポォ
ポッポ豆のスープくれるから一緒に居ただけポォ
ワンダーさんは真っ赤になりプルプルと震えながら聴いていましたが、
『ポポポォ、良いことを思い着いたポォ』
こよたんの武器を預かっていたタイマツクルッポーさんに近づきアタマを掴みました。
あ、あ、あ
私は思わず目を閉じます。
『じょ、冗談だポォ、ワンダーアニィは…』
グシャリ!
パァン
『ここにいる奴全員潰せばいいポォ。』
ワンダーさんはニタァっと微笑みます。
残りのタイマツさんの元へ走り、私に放ったのと同じ技を使います。
《アーツ発動・正拳連弾!》
『怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒!!!』
数十秒ほどでタイマツクルッポーさん達の数は半分程になり地面にタイマツがいくつも転がっています。
「ニケたん、大丈夫か?」
こよたんがいつの間にか武器を拾って横に来ていました。
「だいじょぶだよ、こよたん得意の挑発で気を引いてくれたから。」
「ふふ、それくらいしか出来ないからね。」
この人はこんな時でも笑えるんだ…
「で、でも攻撃が効かないんじゃ流石に勝てないよね?」
「ううん、ニケたんの攻撃は効いていたでしょ?」
あ、確かに手応えがあった。
「あいつだってチカラを入れてないとダメージは食らうんだ。」
「不意をつければ倒せる?」
「そのとおり、そして今アイツはタイマツ達をわざわざ自分で倒してこの広場は足元以外は暗くなっている。」
「分かった、ワンダーさんに油を掛けて燃やすんだね!」
「違います、あなた油持ってないでしょ?チキンと同じ作戦でいくよ、暗いと見えないはずだからね。」「鳥目だから!」
「正解!アイツはスペルキャンセルの時以外はそこまで速くはない。今度は外さないでくれよ?」
「あ、ダメだよこよたん、ワンダーさんにはそのスペルキャンセルがあるんだから。」
「大丈夫、奴のスペルキャンセルは尻を触る事で発動する。あいつ…ワンダーだから…ニケたんなら大丈夫…」
後半暗くなったのは嫌な事を思い出したんでしょう。
「それじゃあ、行こうか、勝って次の大陸に」
「あい!」
こよたんは作戦の前に回復アイテムを使い、HPを回復させている。
『さあ、待たせたな後はお前達を喋れない様にすれば完璧だゾ』
あんなにいたタイマツクルッポーさんたちがもうみんなやられたみたいです。
あれ?語尾が元に戻ってる。
暴れたことで少し冷静になったのかな。
「僕たちはお前に勝って次へ行く。早く決着を着けよう。」
《スキル発動・軽やかな足運び》
こよたんが大剣を構え、ワンダーさんに斬りかかり少し距離を空けて隙を見せない様に攻撃している。
《魔法詠唱開始》
前回は全然違う場所に発動させちゃったけどここで失敗しちゃったら2人で笑えない事になっちゃう。
こよたんの足下にセット完了っと
《魔法発動・飛び出せ土の微精霊》
ワンダーさんがどっしりと構え、こよたんに大振りのパンチを繰り出すそのタイミングで私のもけもけさん(元ストーンウォール)がこよたんの足下から勢いよく飛び出した。こよたんはもけもけさんのアタマに足を掛けて勢いを利用して飛び上がる。
あ、もけもけさんはただの土の壁だと可愛くないからこよたんと2人で考えた土の像です。壁に顔と手を付けて可愛くなりました。
《アーツ発動・巨大化する剣》
「がら空きだぜ!喰らえ!」
『良い作戦だ、しかし残念だが見えているゾ!』
ワンダーさんももけもけさんに足を掛けてジャンプをしました。
勢いは利用出来なかったのにこよたんより高く飛び上がり、両手でこよたんを地面に向かって叩きつけます。
「こよたん!」
「うう、そんな…どうして…」
『ワタシはな、いつか山に登った時、夜にテントを張ってコーヒーを飲み星を見ながら真の漢と語り合うのが夢なんだ。
その夢の為には鳥目などという弱点は放って置くわけがないだろう。』
『さて、そう何度もオンナに邪魔されては敵わん、今度こそ貴様から始末してやるゾ!』
ワンダーさんがこちらに向かってきます。
ああ、斧も壊れそうだし次の攻撃は防げそうにないですね。
南無〜
「やめろぉーーーー!」
こよたんが手を伸ばしてくれてるのがみえましたが届きません。
ワンダーさんが近づいてきてその身体はさらに大きく見えます。腕を大きく振りかぶりました。
や、優しくしてくださいね。
私はギュッと眼を瞑りました。
次回は3/8 21時投稿予定です。
「里より山が好きなの?」
「うん!山の方がおいしいよね」
「僕は里の方がザクザクしてて好きだな」
「山の方がチョコの部分がおいしいもん!」
「チョコは同じだよ!」