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82・頭突きを極めるのはヤバイ

鍵行動キーアクションが決まったことで、訓練のやり方が変わった。

例えば、木刀を使った素振りなどだが、鍵行動キーアクションによって領域テリトリーを展開している木刀を素振りに使うことになったのだ。

無論、消費が少なくなったといっても俺の場合濁りがすごいので魔力の燃費はやはり悪い。

硬さを操作するなどの性質支配を行わずに維持だけをしているのでたった数回使っただけで魔力切れなんてことにはならないが、やはり元来の濁りからくる不適合素材への膨大な魔力消費はどうにもならないのだ。

鍵行動キーアクションは確かに世界観を補助し、ダンジョンの操作のしやすさや魔力の燃費が改善される効果がある。しかし元々のスペックで燃費が悪いものがどうにかなるというわけではない。


ガーショによると、これは実際の戦闘で使うというよりは、やはりメインの戦い方を鍛えるための訓練としての意味合いが強いそうだ。

通常より操ることが難しいことを練習することで激しい戦闘中でも集中して操れるだけの技術を鍛えるだとか、相手の領域テリトリー拠点ベースによって支配力が妨害された場合でもダンジョンが操れるようにしておくみたいなことだ。

つまりはこの木刀強化のようなことは実際の戦闘では使わない可能性が高い。


「せっかく練習してるのに、本番で使っちゃダメというのはなんだかもったいないですね」


「無論、使ったらダメだというわけではありやせん。しかし、サイのお客人ほど濁りが酷く、超適合素材も見つかっている状態のダンジョンマスターであれば、やはり超適合素材をメインに据えた戦い方をするのがいいでありやしょうね」


「超適合素材、俺の頭ですか」


「そうでありやす。今日は魔力が残り少ないのでやりやせんが、明日からは拠点ベースである頭を使った訓練もやっていきやしょう」


「その訓練でやることが、実戦で使うメインのダンジョンの使い方になるわけですね」


「まあ俺っちは頭を使った戦い方なんてあまり思いつかないんでありやすがね」


「え?」


「今まで自分の頭をダンジョンにしたような人がいればその人を参考にしたりできたんでありやしょうが、生憎とそういう人は知りやせんからね、パッと思いつくのは、頭をめちゃくちゃ硬くして頭突きとか・・・くらいでありやすかね」


「・・・頭突きだけでBランク冒険者ってなれるんですか?」


「10年くらい頭突きだけを極めまくればあるいは・・・」


「いや、一年以内にできなきゃダメですからね」


「まあ、操る練習はしやすが、あくまで戦い方を考えるのはサイのお客人自身でありやす。俺っちが教えるのは精々取り返しがつかないような操作をしてしまわないようにという補助とか、サイのお客人が思いついた頭の使い方をするためにはどうしたらいいかを一緒に考えて助言、とかくらいでありやしょう」


「・・・いろいろ考えてきます」


「そうしてくだせえ」


それから俺は魔力が切れるギリギリまでは領域テリトリーを維持したまま訓練をして、切れかけたら残りのノルマは領域テリトリーを維持せず行った。

今の目標は領域テリトリーを維持したままで訓練を最後まで続けることだ。

鍵行動キーアクションによる補助があるといっても、やはり集中を欠いたりすれば領域テリトリーの操作が乱れたり、下手をすると消えてしまうことがある。

これを意識しなくても維持できる集中力と、維持できるだけの魔力量を作ることが当面の目標になりそうだ。


訓練が終わり、ヘトヘトになって自分の寝床で気絶しようと歩いていると、ガーショから声が掛かった。


「明日でありやすが、どうするつもりでありやすか?」


「明日ですか?」


「サイのお客人は俺っちが与えたノルマをクリアして、明日からは戦闘系の依頼を受けることができやす。それをどうするのかという話でありやす」


「ああ、そういえばそうでしたね。でも、どうするっていうのはなんですか? 普通に受けるつもりでしたけど」


「お嬢様のことでありやす」


「ああ、なるほど」


イリスボックを連れて戦闘系の依頼を受けるつもりなのかという話なのだろう。


「安全を考えれば受けるのはやめておいたほうがいいと思いやすが・・・」


「もしかして、戦闘依頼を受けるのは禁止になるのですか?」


「そういうわけではありやせん。執事長曰く、サイのお客人はゼロット様から受けた要求も同時にこなさなければいけないので、どんな依頼を受ける判断はサイのお客人自身に任せるようにと言われてやす。しかし俺っちとしてはやはりお嬢様が戦闘依頼というのは不安でありやす」


「でも戦闘依頼を避ければ遠慮されているのだというのが丸わかりでしょうからね。受けずにいるわけにもいかないでしょう」


「せめて公爵からの連絡があるまではやめておくのも手だとは思いやすよ? 連絡次第ではその時点で解決という可能性もあるんでありやすし」


「すでに何日も雑用系の依頼ばかりしてますからね。これ以上戦闘依頼を避け続けてたらさすがに怪しまれます。一週間後に解決というのも希望的観測ですしね。現状維持を考える上でも戦闘依頼を受けておくことは必須だと思います」


「しかしそれで危険に晒すというのは・・・」


「流石にそんなに危なそうな依頼は受けないですよ。あくまで初心者が受けるような戦闘系依頼からはじめて徐々に難易度を上げていくつもりですが、一週間後までは様子見で軽いやつのみにしておくつもりです。それなら違和感はないでしょうから」


「・・・・・・」


ガーショはそれでもやはり心配が大きいようで、複雑な表情を浮かべて悩んでいるようだ。


「お嬢様は戦争への参加も見据えた戦闘訓練も受けてるんですよね? きっと大丈夫ですよ」


「・・・わかりやした。サイのお客人の判断に任せやす。ただ、本当に無茶はしないようにしてくだせえ」


ガーショは渋々といった感じでそう言った。


「わかってます」


そう言いつつ俺は内心ガッツポーズを作っていた。

正直なところ、俺は戦闘依頼を受けてみたくてガーショを説得していたからだ。

確かに俺も、お嬢様を連れて戦闘依頼を受けることに対する不安はある。

しかしそれ以上に、今まで訓練をしてきて自分がどれくらい強くなったのかを確かめたいという思いがあったのだ。

頭がダンジョンになり、ピョコやユーレという仲間ができて、この数日死ぬ気で色々訓練してきた。

俺は今どのくらいネネコの近くに進めてるのか、それを知りたい。

不安がるガーショには悪いが、俺もいつまでも訓練だけでは不安が大きいのだ。やはり自分の成長は確かめたい。

お嬢様もレアスキルや俺を昨日押し倒したような武術の心得のことを考えればまず大丈夫だと思う。

公爵からの連絡は一週間も掛かるのだ。状況によってはその後の方が戦闘依頼を受けにくいという可能性もあるだろう。

このチャンスは逃したくない。


そうして俺は、まるでどこかに出掛ける前日の子供のようなどこかワクワクした気持ちを持て余しながら、ベッドの上で気絶したのだった。

82話使ってやっと主人公が訓練じゃないちゃんとした初戦闘しそうっていう・・・

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