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26・1匹目の住人がヤバイ①

最初はただの見間違いかと思い目をこすってみた。

しかし俺の頭の上には間違いなく芽が生えていた。

次に実は角度的にちょうど何かが後ろにあって芽が生えているように見えるだけじゃないかと思って、頭を動かしてみる。

やっぱり芽は俺の頭についているのは間違いないようで、俺の頭について動いている。


となれば、あと試すことは一つしかない。

頭に手を伸ばす。なんだか緊張して恐る恐るだ。

俺は自分に大丈夫、多分ゴミかなんかが引っかかっているだけだと言い聞かせ、頭の芽に触る。

やはり俺の頭には本当にこの植物に見えるものがあるようで、水面に映っている通り、手には葉っぱの感触や、茎のような感触があった。

しかし軽く触った程度ではその植物の芽のようなものは取れる様子がない。

意を決して俺はその植物の芽の根元を触ってみる。


「・・・やっぱり頭から生えてる」


しっかりと頭に根ざしている植物の感触を手で感じて、俺は絶望のあまり口から声が出てしまった。

さて、これはどうしたらいいのだろう。抜いてしまおうかとも思うが、頭から生えているものを抜くというのはなんだか怖い。

まずはロインやガーショに相談してみるのがいいだろうと俺は泉を離れて迷宮車の方に向かった。


「おお、戻ったか。次の体力訓練は素振りをしようかと・・・ん? なんだ? その頭から生やしているものは。ゴミか?」


迷宮車に戻るとロインが木刀を持って待っていた。

いや、まだ体力訓練をさせられるのかと思いつつも、今はそれどころではない。

ロインもすぐに頭の植物には気づいたようなので、俺はどういう経緯でそれが現れたのか語る。


「ほう? 頭を洗っていたら急に生えてきたと。ちょっと触ってみてもいいか?」


俺は少し頭を触られるというのに抵抗はあったが、相談している手前無碍にもできないので、それを了承する。


「ふむ、触ってみると普通に植物だな。頭から生えているのも間違いない」


知らない女性に頭を弄られまくるというのはなんだかゾワゾワしたものがある。

しかも見やすいように頭を下げて触られているのだが、ポジション的にちょうどロインの胸が目の前にある体勢になっているのも少し気になってしまう。


「ふん!」


ロインがなんの合図もなしに頭の植物を抜きにかかった。


「痛たたたたたたたたたっ!!!」


「ふむ、かなりしっかり頭に根ざしているようだな。しかも丈夫だ。かなり強めに引っ張ったんだが、抜けるどころか千切れる様子も全くない」


「なんで急に抜こうとするんですか! せめて一声掛けてくださいよ!」


「だって声を掛けたら君がそれを断ったりとか、力を入れすぎてしまったりとかしそうじゃないか。抜けないか試すなら黙ってやるのが手っ取り早い」


「・・・一見凄く合理的なことを言ってるようにも見えますが、それは相手の意向を無視してやりたいようにやってるだけですからね?」


「そこは分かっていても黙って騙されたフリをしてくれてればいいのに。そんなことではイイ男にはなれないぞ?」


それはイイ男ではなく都合のいい男だろうと思ったが、これ以上その話を続けても無意味そうなので口にはしないでおく。


「それで、これってなんなんですかね? 生えてくるにしても全く身に覚えがないんですが」


「うーん、おそらくだが、さっき君の頭に落ちた鳥の糞が原因だろうな。鳥は食べた植物の実に含まれるタネを消化しきれずに糞と一緒に排泄することがあると聞く。おそらくそんなタネが君の頭で芽吹いたんだろう」


「鳥の糞にあったタネが芽吹いたんだろうって・・・頭に鳥から糞を落とされて芽が生えてくるんなら、今頃そこら中に頭に植物生やして歩いてる人がいなければおかしいでしょう」


「その辺は多分君の頭がダンジョンになっていることと、多分だがこの植物が魔物であることが原因だろうな。ちょっと私の領域テリトリーで見てみるか」


そういってロインの周りの空気が少し変わる。威圧などは別に掛けてないので恐怖は感じない。

だけど俺は正直ロインの領域テリトリーによる威圧に対して少しのトラウマを覚えているので、ちょっと警戒してしまう。


「ぬぬ、君の拠点ベースの支配力はかなり凄まじいみたいだな。私の領域テリトリーのレアスキルでも、ノイズがかかったかのようにうまく見通せない。少し支配力を弱めるか、私の領域テリトリーから干渉されることを拒絶しないで貰えるか?」


「支配力を弱めるとかって、どうすればできるんですか?」


「ん? ああ、まだそこまでのダンジョンの扱いはできないんだったな。それならばとりあえず、頭に生えている芽の部分だけ見てみるか・・・うん、やはりこの植物は普通の植物でなく、魔物のようだな」


「マジですか? ・・・俺はこのままで大丈夫なんですか?」


「わからん。人のダンジョンに野生の魔物が勝手に住み着いてしまうことは割とよくあることなんだが、そのときどうなるかはピンキリだからな。それにこの植物がなんの魔物かも分かってない。君に即座に害があるかは判断しかねる」


「植物の魔物ってどんなのがいるんですか?」


「そうだな、私が知ってるのだとマンイーターという人食い植物だとか、ドレインバインという生物を捉えて養分を吸い尽くす寄生蔓なんかがいるな」


「すぐに俺の頭のこれを抜いてください!! ロインさんの本気で!」


「やってもいいが、もし深く根ざしていたら君の頭の中身を傷つけてしまうか、下手をすれば君の頭の方が抜けかねないけど、それでもやるか?」


「・・・それはさすがに嫌です」


「かといって上の芽の部分だけ切るにしても、根まで取り除かなければ意味がないというのが植物魔物の特性として大きいからな・・・どうしたものかな」


ロインはそんな感じで思案し始める。

俺は自分で頭の植物に手で触れる。そこには変わらず植物の芽が我関せずと鎮座していた。ただの鳥の糞がこんな事態になるとは・・・俺は今後どうなるんだろう。

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