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20・強制的にヤバイ①

「・・・危険でもダンジョンコアを使えるようになりたいです。危険だからと諦めていたら、追いつけるのも追いつけない気がするんで」


「・・・君は本当にネネコくんのことが大好きなんだな。そこまで人に思われているネネコくんが、少し羨ましくなるくらいだよ」


「・・・・・・・」


俺はなんとも言えなくて、押し黙ってしまう。

そんなに俺がネネコのことを好きなことはわかりやすいのだろうか。できるだけ隠してるつもりなのだが。


「まあ、あまりからかってやるものでもないか。話を戻すぞ。不透明度が高いダンジョンコアの持ち主に、適応しない素材でも領域テリトリーを無理に展開させる方法があるにはある」


「適応しない素材に無理に展開・・・その方法というのは?」


「私が何度か君にもかけている、領域テリトリーによる支配威圧を使った方法だ」


俺は村と狼との戦闘で味わったあの二回のロインからの威圧力のような感覚を思い出し、少し身震いする。


「・・・あれですか。あれでどうするんですか?」


「あの支配威圧を詳しく説明すると、領域テリトリーに対する支配力を魔力で増幅させ、その場に留まることに危機感を覚えさせているのだが、あの危機感を覚えるのには少々の条件があるんだ」


「危機感を覚える条件ですか? あの威圧には誰もが危機感を覚えるわけじゃないんですか?」


「ああ。あれは魔物や野生の動物などの感覚が鋭い生き物、そして無防備なダンジョンマスターだけに効く威圧なんだ」


「感覚が鋭いかダンジョンマスター・・・ダンジョンコアを持ってない人間や、野生の感覚が麻痺した家畜なんかはあまり反応しないってことですか?」


「そうだな。ダンジョンマスターでない人間の場合、よほど魔力感覚や野生の勘のようなものが働くものでなければ感じ取れないはずだ。まあ違和感くらいは覚えることはあるだろうが、それでも君やあの狼たちのように危機感を覚えて逃げたりだとか、思わず震えてしまったりということはないはずだ」


「・・・ダンジョンを持ってる人間と持ってない人間で感じるものが違うということですか?」


「ああ、そうだ。これはダンジョンコア自身の生存本能だと言われている。ダンジョンコアが支配を受けることに対する危機感が、コアに寄生されたダンジョンマスター自身の危機感となって感じているのだというな」


「ダンジョンコア自体が感じる危機感・・・」


「ダンジョンコアをある種の魔物であると唱える学説などもあるみたいだからな。まあ私はただの冒険者兼貴族で学者ではないからそこら辺の詳しい話は知らん。それを詳しく知りたいと思うならそれこそ学園にでも通うしかないだろうな」


ロインの学園に通うという言葉に思わず何か反応しそうになってしまったが、今重要なのはダンジョンコアを使えることになることだ。そちらの話を聞くべきだろう。


「つまりは、そのコアが感じる危機感が、俺が領域テリトリーを使えるようになる方法に関係あるということですか?」


「話が早いな、その通りだ。説明するなら先ほど、君が私の領域テリトリーの支配感に怯えている時、ガーショは割と平然としていたことを覚えているか?」


「・・・すいません。逃げ出さないようにとか、跪かないようにとかするのが精一杯で、ガーショさんの方はあまり見てなかったです」


「そうか。こういうのは一度そうであることをちゃんと確かめて置いたほうがいいだろうからな。・・・ガーショ君、もう気絶からは目覚めているんだろう? ちょっと起きてこっちに来てくれないか?」


「・・・・・・バレていたんでありやすか?」


「言っただろう? 私は領域テリトリー内の全てを知覚できると。相手が気絶していたフリをしていたり、隠れて息を潜めていることがわからないなら、Aランク冒険者などになれていないさ」


「気絶から優しく起こしてもらう目的で待っていたんでありやすが、無意味だったんでありやすね。ちなみにロインの姐様、万象の理解っていうのは俺っちやサイのお客人の股間のサイズとかも理解できるんでありやすか?」


ロインからのプチりと血管が切れた音が聞こえた気がする。

ガーショさん、俺もそれは気になってはいたけど、絶対聞いたらダメなやつだろう。


「・・・今は貴様が必要だからやらないが、後で1000発は蹴り飛ばしてやる」


目が本気だ。これは本当に後でやりそうだな。


「さ、さすがにそんなに蹴られたら死んでしまいやす!」


「そう言ってるんだ。ちなみに貴様の方が小さいとだけ伝えておく」


「14歳にサイズで負けたでありやす!! 精神的にも死にそうな気分でありやす!」


「こいつに付き合っていたらいつまで経っても話が進まないな。とりあえず、今からあまり強くない威圧感で、サイ君とこのゴミを領域テリトリーに入れる。このゴミの反応を観察してもらって、その後にどうしてこのゴミが支配感に威圧されないのか説明するから、威圧感と、どうしてこんなゴミを観察しなければいけないのかというつらさの方には耐えてよく見ておいてくれ」


「とうとうゴミ扱いされ始めやした! その冷たい感じも最高でありやす! ごちそうさまでありやす!」


俺はなんでこの人は喜んでいるのだろうと、侮蔑の視線でこういう大人にだけはなりたくないとロインに言われた通り観察する。

するとロインから3度目になる威圧感を感じ始めた。

ロインが言う通り威圧は先ほどよりも弱くかけているらしく、逃げ出したいような気分であるが、耐えられなくはない。


ダメな大人はロインの冷たい態度に光悦とした表情を続けていて、威圧に対する反応は感じず、俺よりもかなり楽そうだ。


「とまあこんな風に、領域テリトリーによる威圧は結構簡単に防げるんだ。その方法は察しがついてるかもしれないが、基本的には自分の領域テリトリーを開けばいい。今、このゴミは、自分の領域テリトリーを開くことで、私の領域テリトリーから発せられる威圧を防いでいるんだ。領域テリトリー領域テリトリーはお互いに干渉し合い、相手の領域テリトリーの支配を打ち消す効果がある。まあ、悪意がなかったり、支配を受け入れていれば干渉しないし、魔力を強く込めれば干渉を超えて相手のコアにダメージを与えることもできるが、それはまた別の話だな」


ロインから威圧の感覚が消える。

それに対して俺は一つ安堵のため息を吐いて、溢れていた冷や汗を拭う。


「さて、これから私が君にやることだが、それは、君に限界まで強化した支配威圧をかけることだ」


「・・・それをするとどうなるんですか?」


「多分君は、今までの威圧で感じていた恐怖とは比べ物にならないほどの感覚を感じることになる。場合によっては体調にも変化を起こすほどに精神負荷がかかる可能性が高い」


「・・・でも、それをすれば俺も領域テリトリーを展開できる可能性が出てくるんですね?」


「話が早いな。その通りだ」

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