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15・領域と拠点がヤバイ③

「なんでこんな内装に?」


「そらお客人、女口説いて自分の車に乗せて走ってデートしたら、最後にすることは決まってるでありやしょう?」


そしてガーショは右手を例の●●●の形にして俺に見せる。

その顔面はとてもいい笑顔だ。

この迷宮車のラブホ内装といい、この人たぶんかなりの好き者なのだろう。


「ネネコのお嬢と使いたいならおっしゃってくれれば貸し出しやすよ。景色のいいポイントに設置もお任せくださいやし。最高の夜を演出して見せやす」


「借りるのはやめておいた方がいいだろうな。ラブホテルダンジョンでも言えることだが他人のダンジョンというのはどんな仕掛けがあるかわからん。知らぬ間に彼女との逢瀬の一部始終を見られていたなんてことになったら最悪だ。そういうのは自分の家か自分のダンジョン、もしくはダンジョンでない普通の宿屋でやるのがいいだろう」


その声に後ろを振り向くとロインがいた。

全く気配を感じなかった。いつの間に背後に忍び寄ったのだろう。かなり驚いてしまった。

どうやら気がついてなかったのはガーショも同じだったらしく、俺以上に驚いて、さらには顔を青くしていた。


「あ、いや、その、ロインの姐様、これはなんというか、男同士の冗談と言いますかなんといいますか・・・というか、ダンジョンに人が入ってきた気配が全くなかったはずなのに、どうやって・・・」


「ふむ、実はな、領域テリトリーの使い方にはコツがあって、上手く使えばこういう風に気配を消して他人のダンジョンに入り込むこともできるんだ。知らなかったか?」


「ま、まさかそんな使い方が・・・」


「先ほど少し説明を省いた部分なのだが、他人のダンジョン内で領域テリトリーを展開するのはそうでない場所で展開するのと比べてかなり魔力の消耗が多い。それにあまり広く領域テリトリーを展開しすぎると、相手のダンジョンの支配力に干渉して、機能を損なう可能性があるんだ。この迷宮車ダンジョンの場合、機能が損なわれれば、走っているのが急に止まってしまったり、下手をすれば操作が効かなくなって事故、なんてこともありうる。だから先ほどは走行中に迂闊に領域テリトリーを開くことはしなかったんだよ。だがまあ今は止まっているから、あまり問題はあるまい」


なるほど、先ほど迷宮車内で領域テリトリーを展開しなかったわけはそこにあったのかと俺は納得する。

確かにそれならば一度外に出てからというのは正しい判断なのだろう。


「ふむ、少々内装が気になりはするが、かなり寝心地の良さそうなベッドではあるな。どうだサイ君、今晩は私とともにこのベッドで野営するというのは」


「え? いや、あの・・・はい? それはその、どういう・・・」


俺はロインの言葉の意図がわからずに困惑する。

貴族というのは添い寝程度なら気にしないのだろうか?


「おいおい、ただの冗談だよ。そこは即答で『俺にはネネコがいるのでダメです!』って言ってくれなきゃダメじゃないか。それに私はいくら寝心地が良かろうが、こんな趣味の悪い部屋で寝るのはゴメンだしな」


いやいや、急にそんなこと言われて反応できる方が少ないだろう。

反応できたとしたってそんな返しはしない。そんなに普段からネネコネネコと言うのはどうかと思うからな。

まあ、からかわれただけで本当にそう言えとは思ってないのだろうが。


「とりあえず二人とも出てくだせえ。中に人がいると内装を戻せやせんので」


ガーショは少し落ち込んでるようだ。

ロインに部屋の趣味が悪いと言われたからだろうか?

いや、逆に言いたいが、この部屋の趣味がいいと言い出す女がいたらどうなんだろうと思う。

普段からミラーボールやらピンクの照明が大好きな女とか、付き合ってて疲れそうなイメージしか湧かないんだが。


「とまあこんな風に、領域テリトリー拠点ベースでは少々やれることが異なるんだ。拠点ベースに関しては今すぐにどうこうという話ではないので今回は説明だけだが、将来的にどのようなダンジョンにしたいというのの参考にするのはいいと思う」


「はい、参考にします。ちなみになんですけど、俺のダンジョンコアのサイズで作れる領域テリトリーとか拠点ベースの大きさってどのくらいなんですかね?」


「あー・・・えっと、一応サイズは聞いてるんだが、実際にコアはまだ見せてもらってないよな? できればコアを出してもらっていいか?」


「・・・どのくらいのサイズって聞いてるんですかね?」


「歴代最小の10センチより小さいとは聞いてる。ちなみに10センチのダンジョンコアが展開できる拠点ベースの大きさは、半径75センチだ。領域テリトリーでも半径150センチ。半径というのは高さも含まれるからな。しかも球形にした場合の半径だ。四角く部屋状にすればさらに高さは狭くなる。拠点ベースにした場合、少し屈まなければ入れないサイズになってしまうだろう。それは結構辛いものがあるよな」


最小サイズより小さいとしか聞いてないのか。

それならば俺のコアのサイズを見せるのはかなり勇気がいる。

なんせ俺はその最小の5分の1のサイズなのだ。どんな反応になるかわからない。

見せた挙句やっぱり諸々の話はなしだという話になったらどうしよう。


俺はロインにダンジョンの使い方を教えると言われて、実は少し期待しているのだ。

こんな小さなダンジョンでも、なんとか使いこなせればネネコに追いつけるのではないかと。

一緒に学園に通うにしても、冒険者になるにしても、やはりダンジョンの扱いの上手さであったり機能であったりというのは重要な話だ。

それを教わるに当たって、平民から貴族になったというロインの話はかなり為になるだろう。

ここでやはり教えるのはなしだという話になれば、今後俺にこのようなチャンスは二度とこないかもしれない。

だから怖かった。


「どうした? 見せてくれ。それとも何か不都合があるのか?」


だがそれはここで頑なにコアを見せなくても同じことだ。

ダンジョンの使用法を教わるに当たって、いつまでもコアを見せないままというわけにもいけない気がする。



結局、俺は思い切って、ロインの前で自分のダンジョンを顕現させた。

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