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10・迷宮車での旅路はヤバイ①

迷宮車の中に乗り込んだ俺は驚いた。

話には聞いていたが、迷宮車の中は外から見た見た目とはなかの広さがだいぶ違ったからだ。

そこはもはや車の中というよりは、お屋敷といった雰囲気だった。

貴族の御用達の迷宮車だからか、その内部は華美に彩られ、広さもかなり広い。これだけの広さがあれば村の子供たちは鬼ごっこでもかくれんぼでも好きに遊び回れるだろうと思えるほどの広さだ。

天井も高く、しかも真ん中にはきらびやかに輝くシャンデリアまで備え付けてある。


「おお、気づいたかい? あのシャンデリアに紛れてこの迷宮車の御者のダンジョンコアがあることに。上手いこと考えるものだよな」


ただ眺めていただけなのを何か勘違いしたのか、ロインがそう同意を求めてきた。

気づいていたフリをして頷くべきか、正直にただ眺めていただけだと答えようかと悩んでいたが、別段俺の答えはなくてもいいようで、ロインは話を進めた。


「さあ、掛けたまえ。ここでも敬意を忘れるわけにはいかないから立ってるなんて言わないでくれよ? 帰りはそれほど飛ばして帰るつもりはないから少々長旅になる。その間ずっと私だけ座っているというのは心苦しいからな」


ロインがそういうが俺は座れなかった。


「ああすまん、流石に私が先に座らねば少々座りにくいか。ほら、私は座ったぞ。次は君の番だ」


それでも俺は座らない。そして視線だけで訴える。

その視線で俺が言いたいことに気づいたのか、ロインが答える。


「ん? もしかしてあそこに立っているフルアーマーの彼が座らない限り自分は座れないとか思っているか? 護衛役でも貴族に仕えてる者なら平民よりは身分が上だからみたいな」


「はい。あの人が立っている限りは俺もできる限り立ってようと思います。立ってても話はできますし、あの方が休むときは俺も休みますのでそれでいいですか?」


「・・・二つ言っておこう。まず一つに、君は身分は平民かもしれないが、今は貴族に招かれている客人だ。過剰に礼儀を気にしてしまう気持ちはわからないでもないが、客人がもてなされることをあまりに拒否することは逆に失礼にもなりうる。二つ目に、彼は護衛役の従者などではないよ。おい、君。ちょっと兜を取ってやれ」


俺が視線を飛ばしたフルアーマーの人物はロインのその声に頷くと、留め具を外し兜を持ち上げる。

その兜はフルフェイスタイプの兜で顔が確認できない物だったのだが、その兜の中に隠されていたものに俺は驚いた。

兜の中には何もなかったのだ。


「見ての通り、彼はまず人間じゃない。こっちの方では珍しいのかな? 彼はパペットというタイプの魔物で、この迷宮車ダンジョンのマスターが召喚している護衛魔物なんだよ。だから、立ちっぱなしで疲れるなんてことはないし、一緒に座ったところで仲良く談笑というわけにもいかないんだ。これで納得してもらえたかな?」


言いながらロインは手で俺に席を促した。

俺は単純に相手のペースに飲まれないように座りたくなかっただけなのだが、ここまで頑なに席に座ることを促されてしまえば、流石に座らないわけにはいかなかった。

俺が席に座ると、ロインは満足したような顔でしゃべり始める。


「さてさて何からネタバラシしようかな。ふむ、まずは最初に誤解を解いておくべきか」


「誤解、ですか?」


「ああ、君は私に、ひいてはアーブソリュー公についても誤解している。その誤解を一つ一つ解いて行こうと思う」


「はあ」


誤解とはなんのことだろうか。まあ、俺がかなり警戒しているから、その警戒を解いてもらいたいとそういう話になるのだろう。

しかし、俺は余程のことがない限り警戒を解くつもりはない。

俺とネネコのこれからがかかっている状況なのだ。慎重にことを進めるべきだろう。


「ふむ、まずそうだな、最初に言っておこう。私が連れてくるように頼まれたのは、歴代最小コアのダンジョンコアを授かったサイ君、君を連れてくることであって、君のフィアンセであるネネコ君を連れて行くつもりは最初からなかったんだ」


「・・・・・・は?」


「ぷっ。鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているぞ。そんなに予想外だったのか?」


「え? だってその・・・え?」


「まず、前提としてだ、ネネコ君はすでに学園に通うことが決まっているのだろう? それなら貴族は手出ししない。それは昨夜に君達も話していただろう。紳士協定があるとね。君は知らないかもしれないが、実はその紳士協定の案を当時の国王に進言したのはゼロット様のお爺様、先先代のアーブソリュー公爵なんだ。自分の家が提案した協定を真っ先に無視するようなことをすれば、この協定はめちゃくちゃに破綻しかねないからね。ゼロット様はそんなことはなさらない」


「昨夜・・・なんで昨日の話を知ってるんですか!?」


「おっと口が滑ってしまった。ハハ、すまない。話の順番が前後してしまうかもしれないが、そのことを先に話しておくか。実はな、我々が君の住む村に到着したのは今日じゃなく昨日の夜なんだ」


「昨日の夜に着いていた?」


「ああ、着いてはいたんだが割と時間が遅かったので、寝ている村人を起こさないようにと配慮して村に入るのを控えたんだ。迷宮車なら野営も苦ではないしな」


「村のそばで野営を?」


「そうだ。で、まあ、村に入らないにしても様子くらいは確認しておくかと見つからない程度に探索していたら、その、あれだ」


「・・・一緒に話している俺たちを見つけたわけですか」


「その通りだ。すまない。盗み聞きなどするものではないとは思っていたのだが、一人は今回連れて帰る予定の人物だったからな。情報収集のためにつけてしまった」


「・・・ちなみにどの辺りから話を聞いてたんですか?」


「『夜這いにでも来たのか?』のあたりからだ」


「ほとんど最初からじゃないですか!」


「いやー、二人とも、実に微妙な距離感で面白かったよ。もしかしたら外でおっぱじめてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしてたけどね」


「ちなみにおっぱじめてたらどうするつもりだったんですか?」


「情報収集のためだ。余すところなく観察したことだろう」


「・・・勘弁してください」


更新ペースを保つため、しばらくこのくらいの文字数で行くかもしれません。

筆が遅くて申し訳ないです。

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