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序章-2 修道院の朝にて7

朝の騒動が終わって、しばらく経った後。

ガチャンと大きな音を立てて、ライ達の目の前で修道院の門の扉は閉ざされた。


助祭曰く。

助けてくれたことには礼を言うが、黄金教団と因縁あるものを置くわけにはいかん。

何も問わぬが、二度とこの修道院の門をくぐるな。

とのことだ。


「酷いもんだぁ」


黄金教団から助けてやったのに。

俺はお前より、格が高い白竜騎士だ。

男の代わりに俺が、狼藉をしようか。


そんな立場を逆転できる事を、傲慢をしようと思えば、いくらでも出来るライだが。

荷物を持って、締め出しを食らったライが最初に吐き出した言葉は。

立場関係なく締め出しを食らわされた人が、誰もが思い浮かべそうな文句だった。


「まぁ、いいじゃない。雨風除けの一泊だったんだし」

「イー」


宥めるフィラキに、ライは尚不満そうに悪態をつくが。

アーメットの上からではあるが、両手の人差し指を、両の口端辺りに当てる。

そんな子供っぽい行動をふざけた真似をしているようでは、不満がまったく本気でないことくらいは、誰の目が見ても明らかだった。


そして、こういった行動によって、誰もがライの力を見ても。

この世で最も尊き聖王に選ばれた、白竜騎士だとは思われない理由でもあった。

付いた二つ名が、白竜騎士ライではな。錆の騎士ライである由縁だった。


「ん?」

「…………」


ライの行動が意味を成したのかは不明だが、修道院の門は再び開かれた。

そこにいたのは真っ赤な顔をして怒る助祭ではなく。例の子供だった。

無事だったらしく、そして運よく。あまり子供が見るべき光景を見なかった為か、目は濁りがないままだった。


「はい」

「…………」


そして、子供が差し出すのは花の知識がまったくないライには、花が持つ言葉の意味を知らない。

ただ白い花。

だが、くれるのであればライは小さな手が持つ花を受け取り、香りを楽しみ。

子供の心意気(感謝)だけは受け取り、ライは腰を屈めて花を子供に返す。


「花はな、野郎が持つより。女の子が持った方がいいんだ。それに、俺に花をやるくらいなら。今日、いなくなった(死んだ)奴にあげてやれ」

「うん」

「いい子だ」


言った通りにしてくれるかどうかは、花を返したライにはもう知らぬ話だ。

だが、きっとこの子供は素直に祈りを捧げてくれるだろう。

確信はないライだが、それでもフィラキと共に、川の渡り場へ再び歩みだした。


が――。


――――――――――――――――


川の前で両膝を着き。頭を垂らして、落ち込む男達が複数人。

ライはそんな男達を尻目に、黒やら赤やら血に汚れたサーベルを川に浸して流して。


「案の定時間稼ぎだったな」

「何が?」

「朝の急襲と、ここの話だ。朝は渡し場を無茶苦茶にする為の時間稼ぎ。ここは渡り船の破壊。なりふり構っていられない。そんな焦りを感じる」


川を渡る為の、目的地だった渡り場にたどり着いたライ達に待っていたのは、また腐物達による急襲だった。

朝と変わらず。

当然の様にライとフィラキは、腐物と腐物を操っていた黄金教団の信徒を切り伏せたが。

時すでに遅く、川を渡る為の船は全て壊されており。ライの疑惑は確信になった。


追っている人物は、大事な何かを抱えており。

だからこそ、なりふり構わず犠牲を出してでも足を止める。

そして足を止める人物達が、題目はともかく自らの命を賭してでも、守りたい程の重要な物である。

ライにはそう思わずにいられなかった。


(雲行きが怪しくなってきたな)


一筋縄ではいかないことが起きそうだと、ライの心中はざわついていた。

だが、それは面倒という意味よりも。

次に間違いなく起きるであろう、より大きな戦いに対する期待だった。


「何にせよ……イカダでも作るか」

「そうねぇ」


どの道、川を渡らなければいけないライ達がやらなければいけないことは一つ。

ライとフィラキは、木と荒縄やツタを拾い集め適当なイカダを作り始めた。

短いですが序章-2は終わりです。

次回からは序章-3ですが、その前に時系列まったく関係ない閑話を入れます。

年末年始でごたつき、少し時間が空きますが。また貯まったら徐々に放出していきますので、楽しみに待ってください。

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