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序章 錆の騎士23


「おい」


ライは、目が丸になり、口をぽかんと開いたままのティクをペチペチと叩く。

死が直前まで迫ったが、一瞬にして安全なったと、認識はしているが、現実感がない。

所謂自失状態に、ティクはなっているのだ。

そして、ライの経験則で、その治療方法を知っていた。


「ぶべっ!」


叩けば治る。

ライは手刀でティクの頭を叩くと、ティクは現実を取り戻し、夢から醒めた。


「あ、ね、姉ちゃんがいるって、聞いて!」

「こっちに来たと?」

「うん!」

「アホか」


フィラキに任せた道の方は、もうあれこれ面倒な事は終わり、撤収を始めていること。

そして何故ティクがこっちに来たのか。

ライは、全てを聞くまでもなく。フィラキがどういう意図があって止めず、一緒に来なかったのか理解できた。

だからこそ、子供ぽく頷くティクを戒める様に。ライは改めて言う。


「お前俺が来なかったら……」

「信じてたから!」


どうなっていたか。ライはそう言いかけたが、ティクに遮られ。

何を都合のいいことをと、ライはティクを見て。今も尚固く握る。血に塗られていない。

だが、何度か床を叩いたことで、欠けた石を見て。ライはその口を閉じた。

それは紛れもなく。腐物ではなく、最後まで床に叩きつけたという事。


最後の最後まで、己の非力を知ったうえで、最も生還が望める選択肢。

抵抗ではなく、助けを呼ぶ。ただその行為を続けていた証拠だ。

ティクは、ライならば助けてくれる。それを嘘偽りなく、信じ続けた証拠だった。


(これ以上何か言ったら、ただの嫌味だな)


もし仮に、無謀にも戦いを挑んだら。

知恵のない腐物が鳴らすことがあり得ない、規則的に鳴り響く音が無ければ。

ライは駆けつけることはなかったのだから。

最も賢い行動を取った者に、あれこれ言った所で。それ以上の解がないのだから、無駄な口論という物だ。

だからこそ、もっとの実のある話をライをすることにした。


「……まぁいい。ついてくるか?」

「うん!」


例え今引き返しても、文句を言うつもりはないライだったが。

一切迷うことなく、頷くティクに。

ライは、腰鞄から白い液体の入った。麻糸で補強された細長い硝子瓶を取り出し。

ティクの衣服を一部脱がして、瓶の蓋を取る。


「それは?」

「アイツの血だよ」


アイツとは誰なのか、と聞くまでもなく。

その相手に、勢いで言ったことをつい思い出してしまい、赤くなるティクだが。

ならばなぜ、血なのに白いのか。

そんな疑問を思い浮かべたティクに、ライは補足した。


「血の癒者が持つ。他者に癒しを与える血のテロスは、新鮮でなければ効果はない。だがこれは、血の癒者の中でもさらに特別な奴しか取れん。故に一部の者にしか秘匿されている。

大体月一しか取れん特別な血だ。言いふらすなよ?これ一本で、小競り合いが起きる代物だからな」

「そんな貴重な物いいのかよ!普通の血ですら俺なんかじゃ……とても……」

「構わんさ」


血の癒しを受ける価値がない。

それこそ、ライがライ自身の為に残し、使わないほうがいい。

そう言いたげなティクだが、ライは遠慮なく。白い血を、ティクの怪我を負った箇所にかける。

そして、白い血がティクの肌に触れた途端、白色は保存が出来なくなるという意味の赤色に変わるが。

血のテロスによる癒しの力が、ティクの傷を塞ぎ癒す。


「フィラキも、お偉い貴族様や豪商相手の交渉材料に使われるくらいなら、お前に使った方が喜ぶ」


マントで、ティクに付けた血をある程度拭い取り。

ライは立ち上がり、歩き出す。


「行くぞ」


そう、ライはティクに向けて一言声を掛けて。


「おう!」


ティクは、今までよりも遥かに大きく感じ始めた、その背を追い始めた。


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