表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

 いまでも、思い出すことがある。

 きっと全ての始まりだった、7年前の暑い日を。

「おかあさん見て!兎だ!」

「・・・。」

 母に初めて、森に連れてきてもらった日のことだった。

 当時五歳の俺は見たことのない生物に驚喜して、母親に話しかけた。

 しかし、返事は帰ってこない。

 おかしいな、いつもだったら笑いながら返事をしてくれるのに、具合でも悪いのかな、なんて、流暢に考えていたのが、間違いだったのだ。

 そんな母が可笑しいと思って見ていれば、こんなことにはならなかったのに。

 自然に気を取られ、母親なんて見もしなかった俺がいけなかった。

「おかあさん、あれ、な・・・に・・・?」

 ささっ、と目の前を通った小動物が何なのか気になって母親の方を向いた瞬間、腹に鋭い痛みが走った。

 一気に赤く染まる目の前。

 ニコ、と母は笑っていた。

 そして、母の手の中で光る刃物は、包丁か、短剣か。

 母に腹を刺されたんだな、と思った瞬間、俺は意識を失った。

 最後に見たのは足早に去る母と、こちらへ向かってくる一尾の狐妖怪の姿だった。

 そして、今日で七年がたつ。

「ほらほら、起きろ!

 今日から八月じゃ、しゃんとしろ!」

「あーあー、分かったよ・・・

 そういえば、今日も友達と約束があるんだったっけー。

 ご飯食べたら出掛けてくるな」

「おう。

 寒いから気を付けろよ」

 これは、低級な狐妖怪に拾われた俺と、夏が来なくなってから七年目の話。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ