ランクアップ
………。
………。
……ん?
……ここはどこだ?
……ああ、そうか。
俺は気がつくと、いつかの真っ暗闇な空間を漂よっていた。
…俺は何故、こんなところに居るんだろう?
皆目検討がつかない。
……ふむ。
少し、記憶を巻き戻してみるとしよう。
あれは……そう、盗賊の頭を殺し、お嬢を助け出した後のことだったか。
俺の息子と出会って気絶してしまったお嬢をどうしようかと考えていたその時、外に出回っていたらしい盗賊が帰って来たのだ。
その数およそ30人。
俺は気絶したお嬢を守るために、必死で戦った。
斬って、突いて、薙いで、割った。
そして、返り血に染まりながら最後の一人の首を飛ばして殺したその時だった。
全身に電撃が走るような、そんな、なつかしい感覚が俺を襲い、意識が薄れていった。
……そうだ。転生のときと同じ意識が薄れていく感覚に襲われたんだった。
それにしても、もう残党はいないのであろうか?
お嬢は……安全なんだろうか?
「その心配は無用よ。ちゃんと盗賊団の残党が全員いなくなったところで呼び出したから」
そのとき、不意に暗闇に聞いたことのある声が響き、見たことのある姿が浮かび上がった。
……いや、別に『不意に』では無いか。
俺をこの空間に呼び出すやつなんか、一人しかいないのだから。
俺を転生させた女神しか。
……で、何でまた俺を呼び出したんだ?
もしかして俺、また死んだのか?
「いえ、別に君は死んでないわよ。条件を満たしたから、ランクアップのために呼び出したの」
……ランクアップ?
なんだそりゃ?
「上位種に生まれ変わることよ。……とはいっても、転生とは違うのだけれど」
……余計にわからなくなったんだが?
「もっと言うと、レベルが1にもどって違う種族になることよ」
ステータス下がっているじゃん!弱くなるのかよ!
「ただ、レベルが1あがるごとに上がるステータスの増加量は増えるし、スキルも強化されたものになるわ」
ああ、より強く育つようになるのか。
「理解が早くて助かるわ。さて、今から今回のアップデートについて教えるわね」
……アップデートって。ネトゲかよ。
「まず、スキル『暴食』が『暴喰』にパワーアップ。今までは変身してもステータスの配分は変わらなかったけれども、今回からはステータスの総量はそのまま、配分が変わるわ」
……なるほど。つまり、雀に変身するより、ハヤブサに変身したほうが速くなるけどその分防御力は落ちるっていう感じか。
「そうそう。よくわかってるじゃない。次に、スキル『武器創造』が『武器職人』にパワーアップ。これにより、属性付加と銘付けが可能になるわ」
おお。魔剣を作れるようになるのか。
「いや、魔剣と言うよりも魔法剣ね。属性付加だけだから」
なるほど。で、銘付けってのは?
「今まで、無銘の武器しか作れなかったでしょ?これからは銘をつけることによって、この世に唯一無二の武器を作れるようになったのよ。創作者の名前情報もステータスに入るしね」
ふうん……というかさ、一般人でもステータスは見れるのか?
「ええ、見れるわ。とはいっても、あなたとは仕様がだいぶ違うし、そうそう見ることは出来ないけれど」
そうなのか?
「冒険者ギルドの鑑定部しか見れないわ。それでも、スキル情報しか見れないし、しかもギルドに登録するときだけだけど。……あ、武器は別よ?武器は武器鑑定の土魔法があるから」
なるほど。覚えておこう。
「……さて、そろそろ時間だから、最後に神託を渡しておくわね。心して聞きなさい」
ゑ。神託?
ちょ、ちょっと待て!いきなり言われても覚えていられるかどうか……!!
「ヤコマ山の洞窟の最奥部に行き、闘神に武技を習いなさい。それがあなたの力となるでしょう……」
そういい終えた女神はスーッと闇の中へと消えていった……。
*
……っは!?
俺が目を覚ますとそこは、ふかふかのベッドの上だった。
ピンクを基調とした女の子の部屋。
つまるところ、お嬢の部屋だった。
俺はむくりと起き上がると、まず始めにステータスを開いた。
☆☆☆
名前:ゼノン・グリモワール
種族:血色弾性円形物質
称号:調停者
種族スキル:『暴喰』(★★)
スキル:『武器職人』(★★★★)
Lv:1
HP:500(500)
SP:500(500)
ATK:10
DEF:10
INT:10
RES:10
SPD:450
HIT:10
ボーナスポイント:1200
☆☆☆
……ほんと、スキルの後ろの黒星ってなんなんだろうな?増えてるんだけど……レア度か?
そして一つ言いたい事があるぞ、女神さんよ。
どこのメ○ルスライムだ俺はっ!?
いや、防御ですら低いからある意味メ○ルスライム以下だ。
どんな雑魚だよ。
ああでも、変身すれば多少マシになるのか?
お嬢は居ないし、人間に変身してみるか。
俺は軽く目を瞑り(目玉とかは無いけど、意識すれば見えなくなる)、頭の中で人間になりたいと念じた。
そして目を開けると、俺の体は人間のそれになっていた。
んでもって再度、俺はステータスを開いた。
☆☆☆
名前:ゼノン・グリモワール
種族:血色弾性円形物質
称号:調停者
種族スキル:『暴喰』(★★)
スキル:『武器職人』(★★★★)
Lv:1
HP:500(500)
MP:500(500)
ATK:80
DEF:5
INT:10
RES:5
SPD:200
HIT:200
ボーナスポイント:1200
☆☆☆
……俊足で相手に詰め寄って一気に抜刀、首を確実に飛ばすってか……。
完全に刀を扱うやつのステータスだな。
まあ、人間だったころに引っ張られているんだろうけど。
……そういや、人間の姿とは言うけど……どんな姿なんだろ?
かっこいいといいんだが……不安だ。
ちょっと鏡で見てみるか。
俺はそう思い、お嬢のドレッサーについている鏡を覗きこんだ。
……。
……。
……。
……あ、
「あんのクソ女神いいいいいいいいい!!!」
俺の容姿は人間だったころと大体同じだった。
だが。
なぜ。
「なんで厨二仕様なんだよ……っ!!」
なぜ片目が赤くなっているんだ……!!
今度あったら文句いってやる……!!
……ふう。まあ、一旦落ち着こう。
次は『武器職人』の確認だ。
俺は『武器職人』を起動した。
目の前にお馴染みのウィンドウが開かれる。
そこを俺は軽く目を通していって……お。
あった。
@@@
特殊加工
必要HP&SP:火、氷、風、土属性値1につき10。光、闇属性値1につき30。
@@@
ほー。結構簡単に作れそうだな。
まずはダガーでやってみようか。
@@@
鉄のダガー
必要HP:20
必要SP:0
@@@
【作製しますか?】
【はい】【いいえ】
俺は迷わず【はい】を選択。
【特殊加工を施しますか?】
【はい】【いいえ】
ここでも俺は【はい】を選択。
【特殊加工を選択してください】
【属性付加】
【銘付け】
属性付加っと。
銘付けは今度でいいだろう。
【属性を選択してください】
【火】【氷】【風】【土】【光】【闇】
うーん。火でいいかな。試しだし。
【属性値を選択してください】
【±0】
属性値かあ。40もあればいいだろう。
俺は属性値を40に設定した。
で。作製した結果なのだが……
「うわっ、あっつ!?」
温度が400度ぐらいであった。
常に刀身が赤熱している。
俺はそれを掲げて、振り下ろす真似をし……
「ただいまですわー……え」
「うん?……あ」
……いまの状況をお嬢視点で見てみよう。
部屋に戻ったら素っ裸で刀身が真っ赤なダガーを持った男がダガーを振りかぶっていた。
………。
………。
………。
あれ?俺、死んだんじゃね?




