平穏なる日々
結局書いてるし……
こんにちは。俺はスライム。神の使いだ。
この家で飼われ初めてから4日が過ぎた。
とはいっても、俺は元人間。
腐っても、元人間で男なのだ。
愛玩動物などには成り下がらないのだ!
そんな俺は現在……
「………」(スヤァ)
金髪縦ロール美少女の抱き枕と化していた。
……どうしてこうなった……。
いやまあ、確かに俺はプニプニだ。スライムだからな。
だが、だからといって抱き枕にするか?ふつー。
いや、しない!(反語)
というか、この状況では元人間である俺は目が冴えてしまって眠れない。
いまの俺には性別が無いからこそ大事にならないというだけなのだ。
出来れば、やめて欲しい。
だが……
「ふへへぇ……」
眠りながらニヤニヤしている様はとても微笑ましい。
この幸せそうな寝顔を見るたびにまあいっか、と思ってしまうのだった。
彼女の名前はエレナ・グリモワール。
俺の飼い主で、グリモワール伯爵家の次女だ。
愛称はエレ。
このままならば、政略結婚するのが確定している13才の美少女だ。
*
お嬢の朝は早い。
だいたい日が登る直前ぐらいに起きる。
「ふわ~ぁあ……よく眠ましたわ……」
そして、起きた後は……
「起きなさいまし、ゼノ」
俺のことを起こす。
……ああ、言い忘れていたけど、ゼノっていうのは俺の愛称だ。
本名はゼノン・グリモワール。
お嬢につけてもらった。
お嬢は俺のことを揺り起こし、俺に抱きつき、手で、足で、全身で、感触を楽しむ。
「はあ~……この感触!この触り心地!良いわぁ~……」
恍惚とした表情で俺をもみくちゃにする。
一通り俺を楽しんだあと、お嬢はラフな格好に寝巻きから着替えて髪をまとめ、ランニングに出かける。
俺はお嬢の護衛だが、走っているお嬢に追いつくことが出来ないため、家の中を散歩しながらバイトをする。
バイトというのは……
「おや、ゼノンかい。相変わらず綺麗好きだねえ。魔族だとは思えないよ」
家の掃除兼探索だ。
なぜこんなことをしているのかというと……
「いーつもありがとうねえ。はい、これ。おばちゃんからのプレゼント。お肉ね」
綺麗にすると、メイドさんからお肉などが貰えるのが一つ。
もう一つは、死体安置場を探すためだ。
この屋敷には、侵入した泥棒や間諜の死体安置場があるのということを護衛兵士がポロっと零していたのだ。
そこにいけば、人間の死体を吸収出来る。
人間の体は非常に便利だろう。
ぜひとも欲しいものなのだ。
ただ、屋敷はかなり広いため、かなり時間が掛かりそうだが。
探索が終了すると、お嬢がランニングから帰ってくる前に急いで部屋に戻る。
前にお嬢が帰ってきたときに部屋にいなかったときがあったのだが、そのときにお嬢が大泣きしながら屋敷中を巻き込んで捜索するという事態に陥った。
それ以来、お嬢が帰ってくる前に必ず部屋に帰ることにした。
もうお嬢の泣き顔は見たくないしな。
お嬢はランニングから帰ってくると、シャワーを浴びて汗を流す。
汗を流した後は、俺を腕に抱えてダイニングへ。
家族が揃うと、一斉に朝御飯を食べ始める。
朝御飯を食べた後、お嬢は家庭教師に数学と魔法と歴史を習う。
お嬢は俺を抱えたまま家庭教師の元へ。
この世界には魔法が存在しているらしい。
この世界において魔法は固定砲台のような役割をはたす。
魔法を使うには、適性がひつようだが。
属性は基本属性の火、氷、風、土。
そして上位属性の光と闇。
この六つだ。
お嬢の適正は風。
風属性には補助魔法が多い。
攻撃魔法もあるにはあるが、数は少しだ。
俺の適正?さあ?調べてないからわからないな。
お嬢の魔力量は中の下らしい。
ただし、これからもっと伸びるだろうが。
ああ、そうそう。あと、この世界について語っておこう。
この世界には四つの大陸が存在する。
四つの大陸はそれぞれ、紅の大陸、蒼の大陸、翠の大陸、白の大陸と呼ばれている。
紅の大陸は火山や洞窟、砂漠などが多く基本的には温暖でカラッとした気候で鉱物がよく取れる。生息人種は小人族と人間。魔王と人間は対立している。
蒼の大陸は湖や入り江、大河が多く、漁業が盛ん。
気候は暖かく、ジメジメとしている。
生息人種は人間と獣人族と魚人族。
魔王は人間や獣人や魚人と話し合い、魔族を統治している。
翠の大陸は山や森が多く、農業と畜産業、林業が盛ん。
気候は一年を通して涼しく、湿潤。
雨がかなりの頻度で降る。
生息人種は妖精族と人間。
魔王は特に何もしていない。
白の大陸は極寒の地。詳しくは不明。生命体は存在しないのではと考えられている。吹雪に阻まれ、謎にみちている。
俺がいるのは、紅の大陸のグリモワール領。
つまり、俺が倒すべき魔王というのはこの大陸の魔王だ。
お嬢の勉強が終わると、次は剣術の授業。
お嬢は生き生きとした顔で師匠に打ちかかる。
お嬢はまだまだ弱っちいが、その身のこなしには光るものがある。
訓練を積めば、かなりよくなるだろう。
剣術の授業が終わり、昼食をとると、お嬢はお忍びで俺と一緒に市井に出かける。
民の声を聞くためだ。
お嬢はなるべく地味な市井の民が着ているような服を着ると、髪を下ろしてストレートにする。
かく言う俺も、ハイゴブリンに擬態して、フードをかぶる。
市場や酒場、鍛冶屋などを覗きあるく。
「おや、いつもの嬢ちゃんじゃないかい!どうしたんだい?」
「テング草を売って欲しいの」
「あいよ。毎度あり。小銀貨2枚と銅貨1枚だよ」
「あら?ちょっと値段が上がりました?」
「ああ、どうもテング草の輸入が減っちまったみたいでね。仕入れ値が上がっちまったのさ」
「あら、そうなんですか」
「ああ。どうも海賊が増えているらしい」
「へえ……はい、小銀貨2枚と銅貨1枚」
「あいよ確かに。ありがとうなあ~」
こんな感じで市井の声を聞いて回る。
あと、テング草というのは、地球でいう青ネギのことだ。
言うまでも無いことだが、お嬢は美少女だ。
それもかなりの。
だから当然、出歩けば……
「なあなあ嬢ちゃん、俺らと一緒に遊ばねえかい?」
「そうだぜ?すぐに気持ちよくなれるさ」
こういった下品な輩に絡まれる。
だが……
「ゼノ、お願い」
「……」(コクリ)
俺がいるので問題無い。
チンピラどもは粋がっているだけなので、一人沈めれば問題ない。
俺は度重なる飲酒で体を壊したチンピラの顎を殴り、脳震盪を起こさせて気絶させる。
俺は前世で頭のおかしい危険な幼馴染みに引っ張られていろんな危機にあってきていたため、非常に喧嘩慣れしている。
そのため、そこまでステータスが高くなくても勝つことが出来るのだ。
「げっ!?一撃かよ!」
チンピラはあわてて気絶した仲間を置いて、一目散に逃げ出した。
夕方になり、俺とお嬢は屋敷に帰った。
屋敷に帰り、姿を元に戻して風呂に入る。
俺とお嬢で一緒に、である。
前世ならばまず間違いなく犯罪者だが、今の俺はスライム。性別など無い。
お嬢は上機嫌で俺をごしごし洗い、湯舟につける。
俺の体は水分を吸収し、ふやけてさらに柔らかくなる。
そんな俺にキャーキャー言いながらお嬢は抱きつく。もちろん、裸で。
風呂からでて、晩御飯を食べ終わると、お嬢は俺に座って魔法指南書を読み始める。
俺は俺で『武器創造』を起動して、武器の作成を行う。
ちなみに、結局ボーナスポイントは全てHPとSPに振った。
結果、新しくレシピが開放された。
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鉄のダガー
必要HP:40
必要SP:0
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ショートソード
必要HP:60
必要SP:69
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ロングソード
必要HP:100
必要SP:10
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刀(無銘)
必要HP:200
必要SP:200
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鉄のバスターソード
必要HP:200
必要SP:200
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鉄のレイピア
必要HP:200
必要SP:200
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鉄のハーフソード
必要HP:200
必要SP:200
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木の槍
必要HP:30
必要SP:0
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鉄のショートランス
必要HP:60
必要SP:0
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鉄のロングランス
必要HP:90
必要SP:10
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薙刀
必要HP:200
必要SP:200
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ショートボウ
必要HP:40
必要SP:80
鏃
必要HP:1
必要SP:1
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ヘビィボウ
必要HP:100
必要SP:200
鏃
必要HP:5
必要SP:5
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手持ち投石機
必要HP:200
必要SP:200
石
必要HP:100
必要SP:100
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今のところは以上である。
俺は人の姿を手に入れたら、刀を使いたいと思っている(使いなれているから)ので、刀はHQ品を作ってある。
なお、HQ品は百本作って一本できればいいほうであるレベルだ。
また、必要なHPとSPの合計値が高ければ高いほどHQ品は出来にくくなり、それどころか作成に失敗することすらある。
階級は無印→Q品→HQ品だ。
ただし、たくさん一つの武器を作れば作るほど、HQ品は出やすくなるようだ。
また、HPとSPはどうやらねむっているあいだに回復するらしい。
そのため、寝る直然のこの時間帯に体内で武器の作成練習をするのが一番効率がいいのだ。
お嬢の読書タイムが終わると、お嬢は寝巻きに着替え(ピンクでフリフリな可愛いやつ)、髪を解いて俺を抱いて
「おやすみなさいまし、ゼノ」
と言って眠りについた。
10/7 銅貨21枚も持ち歩くのは大変であることに気づいたので、小銀貨2枚と銅貨1枚に変更しました。
12/2誤字訂正しました。
変えることにした→帰ることにした