出会い
これが書きたくて二話投稿にしました。
反省はしていますが、後悔はしていません
目が覚めるとそこは、薄暗い洞窟ではなく、豪奢なガラスケースの中だった。
…………………………………あれ?
ちょっと待って欲しい。何が起きたんだろうか?
流れを確認してみよう。
岩に擬態して眠った。
↓
起きたら飾られていた
……why?
ダメだ。繋がりがまったく見えない。
見た感じ、擬態は……うん。解けていない。
つまり、俺を眠っているあいだに連れ去ったであろう誰かは俺のことを岩だと思って運んでかざったというわけだ。
……なぜ?
そこまで思考が及んだその時。
部屋に二人の男……それも人間が入ってきた。
一人は一目で富裕層とわかる高価な服を着た男……おそらく、貴族だろう。
もう一人は胡散臭い顔つきの商人。
まさしく悪徳商人と言わんばかりの陰気な男だ。
貴族らしきナイスミドルな男は、俺を値踏みするように見ている。
しばらく男は俺を見ていたが、だんだんとその顔から興味が薄れていったのか、つまらなさそうにし始めた。
このままではマズイとおもったのか、商人は俺を指差しておもむろにしゃべり始めた。
「旦那様。この一見何の変哲もない岩こそが、あの奇岩です」
「……ほう」
「この岩は昨晩にヤコマの洞窟で偶然発見されたものです。見つかるまでの経緯をお話いたしましょうか?」
「頼む」
お。理由が解るか。
「先日、私が懇意にさせてもらっているとある冒険者がヤコマの洞窟にモンスターが現れなくなった理由の調査をするクエストを受け、ヤコマの洞窟に入りました。その冒険者は行けども行けどもゴブリンに出会うことはありませんでした。その事から冒険者は何か強い魔物が侵入し、絶滅したのではと思い、証拠として死体を探しました。しかし、死体どころか血の跡さえも洞窟にはありませんでした。不審に思い奥に進むとそこには!大きな穴がいくつも空いて居るではありませんか!!その穴をよけ、進んでいくと目の前に、腰掛けるのにちょうど良い岩が存在していました。そこでその冒険者が腰をおろすと……なんと!その岩がムニュとゆがんだのです!これは珍しい岩だとその冒険者は思い、その岩を私に売ったのです」
長い。もうちょい噛み砕いてほしい。
あと、血の跡がなかったのは俺が喰ったせいだろう。
俺がそんな事を考えていると、貴族は
「……つまらん」
ボソッとつぶやいた。
「えっ?」
商人はその言葉を聞き、顔をサッと青ざめさせた。
チャンス。この俺から完全に意識がそれたタイミングでなら、確実に逃げ切れるはずだ。
俺は瞬時に擬態をとき、ガラスを喰って穴を開けた。
ズルリ、と俺は這い出す。
おっしゃ、このままなら逃げれる───
「───!?なっ!?魔物!?」
ちぃ!ダメだったか!
貴族に気づかれてしまった。
俺は急いでハイゴブリンに擬態し、走りだした。
ハイゴブリンの体は走りやすい。
ステータスも上がったことだし、普通の人間には追いつかれない───
「───はっ!!」
「グゲッ!?」
───と思ったら貴族に飛び蹴りを喰らわされ、吹っ飛んだ。
俺の体は力を抜けば柔らかくなるのでダメージは無いが……
「ふん。捕まえたぞ」
……貴族の男に踏みつけられ、逃げだせなくなってしまった。
俺は観念し、本来の姿に戻った。
「だ、旦那様!お怪我はありませんか!?」
「大丈夫だ。問題無い」
「すみません!まさか、あの岩が魔物が変化したものだとは思わず……直ぐに処分します!」
ああ、俺、処分されるんだ……。
せっかく転生できたのに……残念だなあ。
今度こそ、消滅するんだろうなあ……
「いや、その必要はないぞ。買い取るからな。いくらだ?」
「えっ!?」
えっ?
マジで?
俺……助かるのか?
「こいつは多分、魔物ではない。魔族だ。俺たちに出来た一瞬の隙をついて逃げ出したし、襲いかかって来なかったしな。娘のペットとして使えるだろう。いくらだ?」
何このおっさん。怖いわ。賢いし、強い。何この無理ゲー。
「金貨5枚です」
「安いな」
「助けて貰った御礼です」
おっさんは商人にポンと金貨5枚を支払い、俺をむんずと掴み上げた。
そして、顔を近づけて……
「来い」
殺気をビシビシと発しながら命令してきた。
……俺に選択の余地は無かった。
*
俺はすぐにおっさんにくっついていって馬車に乗り込んだ。
これを見るに、どうやらこの世界は余り文明が発達していないようだ。
馬車に揺られること二時間ちょっと。
俺は、貴族の家……即ち、豪邸に到着した。
「おい、魔族。これに入れ。ただし、本来の姿でな」
俺が初めてみた豪邸に萎縮していると、おっさんにプレゼントボックスに入るようにいわれた
もちろん、拒否権など無い。
拒否=死なのだ。
圧政なのだ。
俺はプレゼントボックスに入り、リラックスした。
でろーん。
「よし。そのまま待機していろ」
プレゼントボックスの蓋が閉じられ、視界が暗くなった。
俺は暇だったので、ひと眠りすることにした。
*
ドスッ!という音と共に、意識が覚醒した。
体に何かがのしかかっていて、重い。
邪魔だなあと思っていると、のしかかっている何かがしゃべった。
「お父さま、ありがとうございますわ!」
「おお。気にいったか」
「ええ!とっても可愛いですし、触り心地も最高ですわ!」
「そうか。エレ、大事にするんだぞ?」
「もちろんですわっ!!」
そののしかかっている何かは、人間の女性だった。
目の覚めるような金髪。
整った目鼻立ち。
クリクリとした大きな緑の瞳。
そして、その見事な金髪はツインテールでしかも縦ロールになっていた。
胸は……その……将来性に期待といったところか。
まあ、つまるところ、何が言いたいのかというと───
───凄い美人であった。
ヒロインがついに登場です