銀の少女
長らくの間お待たせしました。第二章開始です。
銀の少女は奇声を上げながら走り去って行ってしまった。うーん…なんでだろう?ちょっと考えてみるか。
えーっと、今の俺の状況を少女視点で見てみると……
《家の前に居た人間を殴ったら腹が弾けとんだ。そのあと、殺してしまったことにショックを受けて呆然としていたら足元に転がる生首から話しかけられた》
……いや、そりゃ怖くて逃げ出すよな、うん……。なんでもっと早く気がつかなかったんだよ俺!?
くそ、早く少女を追いかけて誤解を解かなきゃ……!!
俺はHPを30000ほど消費して急いで体を修復すると、丘を駆け上がっていく少女を追いかけ始めた。追いかけ始めたんだが……
「おーい!待ってくれー!!」
「……ひぃっ!?やめてこないでごめんなさい殺しちゃうとは思ってなかったのだからお願い呪わないでーー!!」
「いや呪わねえよ!?呪わないからちょっとまて!!」
「わたししってるもん幽霊は意識しなくても生きている相手を呪うってことだから絶対に止まるのはいやー!」
「いやいや落ち着けそもそも俺は死んでねえ!」
「ウソだウソだ人間が胴体ふきとんでいきてるわけないもん!」
「おいこっちよく見てみろ胴体くっついているだろが!」
「えっ!?……キャアアアアアアア!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいい!!謝るから追いかけないでーーー!!」
「ちょっ!!なんで更に加速してんだよ!!ほんとちょっと待て!!」
「やめてわたしにらんぼうする気でしょエロどーじんみたいに!」
「オイコラ誰だよ子供にそんなこと教えた奴は責任者出てこいコラアアアアアアッ!!」
「うぇぇぇんたすけておししょうさまーー!!変態幽霊さんだよぉーーー!!」
「誰が変態だあああっ!!」
あああもう!!埒があかない!なんであいつあんなに速いんだよ!?畜生、使いたく無かったけど超速機動発動!!
俺が超速機動を発動すると、周囲の時間が停滞する。いける。俺はガクンと遅くなった少女目掛けて走り出すとあっという間に彼女に追いつき、彼女を抱え込んだ。
何が起きたかわからずに顔を真っ赤にして混乱する彼女を抱えて俺は即座に移動し、あっという間に一軒家の目の前にまで戻った。
そこで丁度超速機動の効果が切れて元の時間の流れに戻った。
「……ふう。あー……だるかった。やっと落ち着けた……。お前もいい加減に落ち着いたか?」
俺は抱えていた少女を地面に下ろすと、俺も地面に座り込んだ。
スライムだから肉体的な疲れは無いけど(超速機動のペナルティーはあるが)精神的疲労がハンパじゃない。はあ……地面が冷たくて気持ち良い。
そろそろ落ち着いた頃合いかと思い、少女を見てみると……
「ひぅっ!?ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……ふぅ」
「あっ!おい、大丈夫か!?」
少女はビクッと震え、ポロポロと泣き出してしまったうえに恐怖で気絶してしまった。
うーん……困ったな。俺、なんでこんなにこの子に怖がられているんだ……?
俺が途方に暮れていたそのときだった。
俺はゾワッと全身の毛が逆立った。
やばいやばいやばいやばい!
何か、物凄く強い力を持った存在がやってくる!
俺は全力でその場から逃げ出そうとして……
ガシッと首根っこを捕まえられてしまった。
「お主……一体、何があったのか教えてはくれんかのう?」
「は、ハハハ……」
ギチギチギチ……と、錆びた機械のようにぎこちない動きで後ろを見ると、凄くイイ笑顔の身長2m近くありそうな厳つい老人が立っていた。そして、その全身からは物理的な圧力すら感じそうなほどの強烈な怒気が発せられていた。
……俺、ここで死ぬかも。
*
とりあえず俺は老人を刺激しないように気をつけつつ、少女に話しかけられたこと、少女にいきなり弾け飛ばされたこと、少女が呆然としていたから思わず声をかけてしまったこと、そしたら逃げ出されたこと、誤解を解くために追いかけて捕まえたことを話した。
すると、老人は頭を抱えてしまった。
「はぁー……。お主……さてはアホじゃな?」
「なっ!?俺のどこがアホだって言うんですか!?」
「血塗れな上に全裸というこれ以上無いくらいに変態的かつホラーな格好で、泣いて逃げる少女を全力で追いかけるやつがおるかたわけっ!!」
「え……?あ゛っ、しまった裸だった!」
「お主気づいておらんかったのか!?」
うわやばいよく見てみれば俺の愚息が丸見えじゃないか。しかも血塗れ……。早く服着ないと……って畜生!そういえば少女の攻撃で俺の一張羅が無くなっちゃってたじゃないか!あれしか持ってなかったのに!と、とりあえず血だけでも喰って掃除するか……。
「というかどうやってここに来たんじゃお主は……」
「え、普通に転送装置使ってきましたが?」
「なんで惑乱結界張ってあったのに転送装置に近づけたんじゃお主はっ!!」
「………………………うーん、根性?」
「根性で破れるほどヤワな結界ではないわたわけっ!」
んなこと言われてもな……。実際、適当に歩いていたら着いたわけだし……。
俺がどう老人に説明したらいいものかと困り果てていると……
「ぅ……ん……?あれ、私なんで倒れて……?」
銀の少女が目を覚ました。
「む。リオナよ、起きたかの?」
「あっ!お師匠様!大変です!変態幽霊が家の前にいたんです!」
「オイコラ誰が幽霊だ。俺は紛れもない生者だぞ!」
「へ……?ちょ、なんでコイツがいるんですかお師匠様!」
「尋問しておったんじゃよ……というか、なんでお主生首から復活したのじゃ?」
「そりゃ、そもそも人間じゃないですから俺。この体は仮の姿ですしね」
「なるほどのう、自動修復するゴーレムといったところかの?」
「全然違いますが、能力的にはあってます」
「どうでもいいけど早く服着てくれない!?このド変態!露出狂!」
「んな!?誰が露出狂だチビッコ!ただ単に予備の服が無いだけだ!!」
服さえあれば、愚息を隠せるのに……!こんなことになるなら服を買っておけばよかった!
「んむ?服なら昔の服を貸してもよいぞ?」
「おうふ……今までの俺の葛藤は一体……。すみませんが、貸してくれませんか?」
「よし、しばし待っておれ」
*
三分後
「……おい、じーさん」
「タメ口じゃと!?」
「どうでもいいから答えろ。この服は……何だ?」
「ふふふ……どうじゃ?イカすじゃろう?」
「いや全く微塵もかっこ良く無いんだが」
「な……!?この良さがわからんのか!?」
「ブーメランパンツの何処が格好いいんだよ!!」
なんとこのじいさん、服を貸すと言ったのにあろうことかブーメランパンツを推してきやがった。解せぬ。
「このツヤツヤとした生地!洗練されたフォルム!筋肉によく映えるじゃろうが!?」
「確かに筋肉に似合うかもしれないが、それ以上に恥ずかしいだろうが!」
「そうですよお師匠様!」
「よく言ってくれたリオナ!」
「やっぱりブーメランパンツは白じゃなくて黒じゃないとダメだと思うんですっ!」
「違ああああああうっっ!!そこじゃないだろ!?問題なのはそこじゃないだろ!?」
「あっ……ベルトも欲しいの?」
「要らねえよ!どこのボクサーだよ!?」
「ふむ……リオナよ、間をとって黒と白のストライプはどうじゃろうか?」
「それですっ!」
「ねえよ!」
この後、結局1時間かけて説得してなんとか普通の服を借りることができた……。




