第二の出会い
難産でした……
……………………。
………………。
…………。
……はっ!?
こ、ここはどこだ……?
俺は気がつくと砂漠特有の柔らかい砂の上で気絶していた。
気絶する直前まではサンドラゴに擬態していたはずなのだが、気絶したことで擬態が解けてスライムの姿になってしまっていたようだ。
幸い周囲に生物がいる様子は無く、襲われる心配が無かったみたいだ。
ただ、着地時の衝撃に体が耐えきれず爆散してしまったのか、辺り一面に俺の体と思われる小さな赤いゼリー状の欠片が散乱している。
……ちなみに、通常時のスライム形態の大きさは大体一般的なバランスボールくらいの大きさだ。
しかし、今の俺は大体サッカーボールよりもちょっと小さいくらい。……ほんと、なんで体の半分以上失って生きているんだろう?
……まあ、それはともかく。
現在の太陽の位置から考えると、吹き飛ばされてから1、2時間は空を飛んでいたはずだ。それに、物凄い勢いで飛ばされていたから、もしかしたらオアシス周辺都市近辺に着陸したかもしれない。
俺は期待に胸を膨らませつつ、西へと飛行を再開した。
……なお、削れに削れた体はHPを10000ほど消費したら何事も無かったかのように回復した。
*
次の日の夕方、オアシス周辺都市にようやくたどり着いた。たどり着いたんだけど……
俺の目の前に聳える雄大な山。そしてその麓に栄える都市……
その名前はオアシス周辺都市『ウル』と言った。
……どうやら俺は途中の二つの都市を飛び越してしまったらしい。飛びすぎだろう……?ウルとドザ砂漠入り口って3000kmちょいくらい離れていたはずなんだけどなあ……。
とりあえず、今日のところは休んで、明日の朝に俺はヤコマ山の洞窟へ行くことにした。
目的は闘神への弟子入りだ。
*
ヤコマ山は推定標高5000m級の霊峰だ。山の麓から中腹には豊かな森とたくさんの動物や魔物が住んでおり、更にはヤコマの洞窟と呼ばれる洞窟があるが、山の6合目付近からは森が減り、基本的にゴツゴツとした険しい岩山になる上にランクA魔物も沢山生息しているために誰も頂上に登った者がいない。
また、ヤコマの洞窟にも強さこそ劣るが数々の魔物が潜んでおり、今だに全貌が解明されていない危険な洞窟だ。
しかし、その洞窟からは大量の魔物が発する濃い魔力を浴びて変質した金属……魔金属の類いがしばしば採掘されるため、立ち入る冒険者が後を絶たない。
豊かな森の恵みと鉱物資源。
それらを求めて人間が集まってきて、開拓を始めたのは当たり前のことだったのだろう。
しかし、彼らは知らない。
その洞窟にはある秘密があることを。
*
「うわぁ……懐かしいなぁ」
ウルに到着した次の日。
俺はヤコマ山中腹の洞窟……通称ヤコマの洞窟の深部にやってきていた。
今、俺の目の前には大量のトゲがある大穴が幾つも空いている。
そう、ここは俺の転生した場所だ。
いやあ、懐かしいなぁ……ハハハ。
……別に、現実逃避とかじゃ、ない。地面に穴が空いて居て「この先、呪われた場所につき危険」と書いてある看板が立って居たりなんかも、しない。しないったら、しない。う、ウソジャナイヨ?
……コホン。とりあえず、これ以上精神を削られる前に俺は鳥に変身して穴を飛び越えた。
*
あれから三日。
昔居たところを越えてさらに奥へ奥へと進んで行き、何回分かれ道を曲がったかもわからなくなったころ。
急に視界が開けた。
その先にあったのは……
「……転送装置か?」
明らかに人に作られた石レンガの小部屋。
その中央にSFで出てきそうな転送装置らしきものが存在していた。
……俺の勘が危険は無いと囁いているが、念のために鑑定してみよう。
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名前:転送装置
材質:神黒曜石や神結晶など
備考:神界から闘神に送られた魔導装置。神界特有の素材と異界の技術によって作られた。神々の祝福が込められており、絶対不壊。
闘神の住む場所につながっていて、上に乗った物を対になる場所へと送り出す。
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……うん、危険は無さそうだ。
これに乗れば闘神の住む場所へと出られることがわかったし、さっさと行くとしようか。
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転送装置によって送り出された先は森の中にある湖の畔だった。
周囲には背の高い木々が生い茂り、枝葉の間からは木漏れ日が柔らかく湖面へと降り注いでいる。
突然現れた神秘的な景観にしばらく見惚れていたが、俺はハッと我に返ると闘神の家を探そうとして……違和感に気づいた。
何故……山の上のはずなのに地面が平たいのだろうか?
俺は急いで木々の隙間を縫って走り出した。
数十分ほど走り続けると……
「……は?」
見渡す限りの草原に飛び出した。
思わず振り返ると、先ほど飛び出してきた森があり、その向こうに小高い丘があるのを見つけた。
……全く持って訳がわからない。山の上に出るんじゃなかったのか?
そう思い、鑑定結果を思い出すと……ハッと気づいた。
どこにも、山の上とは書いてないっ!!
やられた……。つながる場所はあくまでも闘神の住む場所であって、そこが山の上とは何処にも書いていなかった。
ただ、そうなるとなぜ女神がわざわざヤコマの洞窟にいけと言ったのかがわからない。直接行けるなら直接行ったほうがいいだろう。
これらの事を考えると、ここは……
「別大陸……いや、亜空間、か?」
直接行けない場所だということだ。
*
俺は考えをまとめると、闘神の家がありそうな所に向かうことにした。
これはただの勘だけれども、おそらく闘神の家は丘にあるだろう。
という訳で俺は丘へと歩いていった。
*
丘には闘神が作ったであろう砂利を敷き詰められた道があったので、俺はそこを登っていった。
しばらく歩くと、一部平たくなっている場所があり、そこにはレンガ造りの一軒家がポツンと建っていた。
おそらくここが闘神の家だろう。俺はそう思ってドアノッカーを鳴らそうとしたその時。
「なにしてるの?」
「っ!?」
後ろから突然声を掛けられ、俺は思わず飛び上がった。
一体誰が声を掛けたんだろうと後ろを振り向くと、そこには一人の少女がいた。
年は俺より2、3才くらい下だろうか?透き通るような白い肌と、日の光を浴びて輝く艶やかな銀髪を持っている。
それだけならばどこぞのご令嬢に見えたであろうが、勝ち気そうな大きな赤い瞳と無造作に括られたポニーテールがその印象を崩していた。
かなりの美少女だ。胸は洗濯板だけど。
俺はとりあえず返答をしようと思って顔を上げて口を開けたその瞬間。
「なっ…!?に、人間……!!」
少女は目を大きく見開いた後、眦をギギンッと吊り上げて瞳を憎悪に燃やし濃密な殺意を撒き散らし始めた。
何故殺意を撒き散らしているのかはわからないが、どうやら誤解をしているようなので変身を解いて戦いを回避しようとした瞬間。
───パァンッ!!
いきなり俺の胴体が弾けとんだ。
肉片と臓腑が宙を舞い、ストックしていた血が辺り一面にペンキのようにぶちまけられる。
俺は胴体を失い生首の状態でゴロンと道に転がった。
チラリと少女を見てみると、これほどの惨状になるとは思っていなかったのか呆然としている。
少女はハッと我に返ると、恐る恐る血に染まった両手を見て「ウソ……」と呟き震えている。
……もしかしたら、人間をみて思わず殴ってしまっただけで殺すつもりは無かったのかもしれない。
……いやまあ、死んで無いんだけどね?とりあえず、安心させてあげよう。
「あのぉー……」
「……?っ!?キャアアアアアアアッッッ!!!」
彼女は不思議そうに辺りをキョロキョロと見渡すと、声が俺から出ていることに気がついて悲鳴をあげて逃げ出した。
……俺、なんか悪いことしたかなぁ……?
これで第一章転生と出会いは終了となります。




