外伝-1 その頃、地球では
ブックマーク登録数50件突破記念の外伝です。前半は若干鬱が入りますので注意してください。
電車に轢かれて兄さんが死んだ。
警察からの電話で私は、頭の中が真っ白になった。
*
私の家は4人家族だ。
お父さん、お義母さん、そして兄さんだ。
兄さんはお母さんが死んだときも私を励ましてくれた。
酒に溺れそうになったお父さんとお話し(物理)をして社会復帰させた。
私の、自慢の兄だった。
高校に受かって嬉しそうにしていた。
どんな新生活が始まるのかと楽しみにしていた。
なのに。
「なんで···なんで寝てるのよ···起きてよ、兄さん···」
小さな箱に入った兄さんはもう動かない。
警察によれば、事件性は一切無く純然たる事故らしい。
そんなわけがない、と思った。
兄さんは強かった。
おそらく、誰よりも強かった。
今世紀最強の剣豪と呼ばれたお父さんを打ち負かしたぐらいなのだ。
それなのに足が滑って死んだなんて···理解できない。
兄さんの葬式にはほとんど誰も来なかった。
強いていうなら、兄さんの幼なじみのお隣さんぐらいなものか。
その人は普段はこちらが辟易とするぐらいにエネルギッシュなのだが···今は不気味なほど静かだった。
静かに、さめざめと泣いていた。
*
葬式の次の日。
「兄さーん。おき···」
いつものように兄さんを起こそうとドアを開けたが···兄さんは居なかった。
「···そっか。兄さんは、もう居ないんだったね···」
私は改めて悲しくなり、視界が歪んだが泣くのはこらえた。
私が泣いていたら、兄さんは安心できないだろう···。
そう思ったのだ。
私は部屋からリビングに降りて、テーブルについてお義母さんとご飯を食べて、身だしなみを整えて家を出た。
お父さんは、最後まで起きてこなかった。
*
学校に行くと、既に噂は広まっていて私は見事に腫れ物扱いをされた。
でも、中には「大丈夫?」と声をかけてくれた子もいた。
そんな優しさが嬉しかった。
*
最近、お父さんが荒れている。
毎日毎日夜遅くに帰って来てはお義母さんと言い争いをしている。私ではお父さんとお話し(物理)はできない。
お父さんも早く落ち着くといいんだけどな···。
*
お父さんが死んだ。泥酔状態でモンスタートラックに轢かれたらしい。
また私の家族が減った。なんなんだ。私が何をしたというのか。
お義母さんが棺にしがみついて泣いているのが印象的だった。
*
それから、1ヶ月。。
お義母さんも心労で体を崩し、この世を去った。
私の周りの人間がどんどん死んでいくせいで私に『死神』というあだ名がつけられた。
あほくさい。
もう、私の大切な物は何一つとして残っていない。
私も、とても疲れた。
もう、いいだろう。兄さん後を追っても···。
「兄さん、今会いに行きます···」
私は、首の紐を勢いよく引いた。
*
光一つ無い暗闇の世界。
そこには、一柱の女神が佇んでいた。
人は、その女神のことをこう呼ぶ。
『イザナミ』、と。
またの名を黄泉津大神《よもつおおかみ》。
地球の日本における死と転生を司っている神だ。
そんな彼女は常に激務なのだが···今日はいつもよりもひどかった。
そうなった切っ掛けは一匹の小鬼の伝令から始まった。
彼女がいつもの空間で仕事を処理していると、
「い、イザナミ様~!!大変です~!!」
一匹の小鬼が血相を変えて飛び込んできた。
「···なんですか?今、忙しいのですが?」
「たたた大変なんです!!」
「大変なのはわかったから早く要件をいいなさい」
彼女は、どうせ大したことではないだろうとたかをくくっていた。
しかし、小鬼が伝えたことは予想の斜め上の出来事であった。
「も、亡者の一人が地獄で『兄さんに会わせろ、責任者を出せ』と言いながら大暴れしています!閻魔大王様すらもボコボコにされてしまいました!正直、手に負えません!!」
「はぁっ!?」
まさかの反乱···それもたった一人によるものであった。
このままではまずい。魂を消去するのは簡単だが、それをすると平行世界が大量に出来上がってしまう。
そんなことになれば、仕事量は今の10倍···いや、20倍にはなる。
それはまずい。非常にまずい。
ならば、早いところ兄に会わせてやった方がいいだろう···。彼女はそう考えた。
「ならば、早いところ兄に会わせてやって大人しくさせなさい」
「···出来ないんです」
「なに?」
どういうことだ?イザナミは眉をひそめた。
「彼女の兄は···イザナミ様が異世界に転生させられたお方です」
「·······え?」
えー···と。要するに···
「彼女も同じ世界に転生させるのが手っ取り早いかと···」
「······」
*
「···というわけで、あなたの兄と同じ世界に転生してもらいます」
「···つまり、兄さんは記憶を持ったまま異世界に転生したからそこに私も記憶を持ったまま転生させる、と?」
「そういうことです」
今、私はあのイザナミと話している。
私が大暴れしたせいだ。
···いや、仕方なかったんですよ?だって、あの世にいけば兄さんに会えると思ってやってきたのにそれを聞かれた鬼が『会えるわけないだろアホじゃねえのwww』とか言ったんですよ?私、思わずかちーんときちゃいまして。鬼の武器を奪って滅多うちにしてやりました。そしたら鬼が出てくる出てくる。イラついたので責任者を引きずり出すために暴れたのですが···
まさかあの有名なイザナミが出てくるとは···。
「能力とか容姿とかもすべて前世と同じにして転生させます」
そう言いながらイザナミは空中の何も無い空間に手を滑らせる。
···ウィンドウとかでも出ているんだろうか?
ちょっと気になる。
「構いませんよ」
「わかりました。では設定を開始しま···」
イザナミがそう言ったその時、イザナミがいきなりずっこけた。
そして、イザナミの手が滑って···
ポチッ
あ、なんかクリックした。
次の瞬間、私のからだに電撃を浴びたような衝撃が走り気を失った。
*
やってしまった。
イザナミは深く落ち込んだ。
この部屋は神にしか触れない床がある。
そのため神にとってはただの部屋なのだ。
そして、イザナミは結構···いや、かなーりずぼらだった。
詳しくいうと、書類などが床に散らばっているのだ。
しかし、書類の場所をすべて把握していたので問題は無かったのだが···
書類を踏んで、足を滑らせてしまった。
あげくに、間違えてランダム設定を押して送り出してしまった。
その、内容は···
☆☆☆
名前:ユウカ
種族メドゥーサ
称号:白の魔王
種族スキル:ダンジョン形成(★★★★★★★)
石化の魔眼(★★★★★)
スキル:不幸体質(☆)
生誕西暦0年
☆☆☆
······。
······。
「まあ、いっか」
これなら大して問題はないだろう。
イザナミは放っておくことにした。




