女神からの転生からの……スライム?
……ここは……何処だろう……?
辺りにあるのは、闇ばかり。
気が付けば何も無い暗い空間を俺はただただ漂って居た。
しかも、何故か温度を全く感じない。
……何故、俺はこんなところをただよっているのだろう?
直前の記憶を呼び覚ます。
今日(?)は確か……そうだ、高校の入学式だったな。
新品の制服を着て、新品の鞄を下げて、高校生活に期待を膨らませて意気揚々と家を出たんだった。
その後、かなりアレな性格の幼馴染に遭遇して逃げ出した以外は特に何も起こらずに駅にたどり着いて改札をくぐり、階段を登ってホームに立った。
そして電車がやってきたその時。
俺の背中がドン、と強く押された。
酷くゆっくりとした時の中で、俺の体がレールに落ちて、電車の巨大な車輪が目の前に迫ってきて───
───その後の記憶が無い。
つまり、そこで俺は死んだっていう事なのか……?
「その通り。正解よ」
「!」
唐突に聞こえて来た声と共に、暗闇の中に一人の女が現れた。
一体、誰だろうか?
「私は、世界の管理者。まあ、所謂神ね」
俺の思考を読んだのか……?
「当然ね。ここで喋れる人間は居ないのだから、念話は必須よ」
そうなのか。まあ、神様だし、そんなもんなのかなあ。
で。質問なんだけど、何で俺はこんな所に居るんだ?
死んだら消滅するんじゃ無いのか?
「うん?それはね、貴方に頼み事が有るからよ。その為にここに呼んだの」
頼み事……?何で俺?
「死にたての人間だったからよ」
……要するに、誰でも良かったと?
「ええ、そうよ」
そうか……。まあ、いいや。で、頼み事?
「ええ。実は今、とある世界で困ったことになってしまって居てね……」
そうなのか。でも、それ、自分でやれば良いんじゃないか?神様だし。
「いえ、神っていうのは基本的には世界に直接影響を及ぼす事ができないの。だから、代わりにやってくれる人が必要なの」
なるほど。で、頼み事って?
「頼み事って言うのは、とある魔王がすっごいアホでね……。そいつがその世界の人間と殲滅戦争を始めちゃったのよ。このままじゃあ人間と魔族両方が滅ぶの。それは避けたいから、新たに魔王になって欲しいのよ」
魔王……?
魔族に転生しろって言う事か?
「そうよ。あ、ちなみに、転生するにあたって名前は剥奪させてもらったから」
え?
そう言われて俺は生前の名前を思い出そうとする。
だが、思いだせなかった。
「名前があると、何かと不便だから……」
でも……
「大丈夫よ。魔王になったら返してあげるから」
そうなのか。なら良かった。
「で、どうするの?受ける?まあ、断れば記憶を消して輪廻の輪に組み込むだけだけどね」
受けるしかないんだろ?
「そうとも言うわね。じゃあ、何か質問はある?」
質問?うーん……じゃあ、一つ目の質問。
能力とかってくれたりしないのか?
「ああ、それはね、貴方は向こうで貴方以外に一匹も居ない種族に転生するのだけど……その種族スキルが凄く強いからたぶん無くても大丈夫よ。……ああでも、やっぱり何かあげるべきかな?まあ、何か適当に見繕って与えておくよ」
そうか。わかった。二つ目の質問。
ステータスってどうやって見るんだ?
「ステータスが見たいと思えば見られるわよ。まだある?」
いや。他には無いよ。
「そう。じゃあ、転生開始ね。いってらっしゃい」
その言葉を聞いた瞬間。
全身が雷に焼かれたような激痛が走り、俺は意識を失った……。
*
暗い。
凄く暗い。
そして、寒い。
暗くて、寒くて、じめじめしている。
ここは一体何処だろう?
いや、そもそも……俺は一体何に転生した?
岩の感覚が腹?にあるんだけど……。
少なくとも、人間では無さそうだ。
そういえば、魔族に転生って言ってたもんな。人型とは限らないか。……騙されたな。
まあ、いいや。落ち着いてステータスを見る事にしよう。
俺は、ステータスを開いた。
☆☆☆
名前:無し
種族:弾性円形物質
称号:調停者
種族スキル:『暴食』(★)
スキル:『武器創造』(★★★)
Lv:1
HP:20(20)
SP::20(20)
ATK:5
DFE:5
INT:5
RES:5
SPD:5
HIT:5
☆☆☆
弾性円形物質って……女神さんや、生物ですらないってどういうことだよコラ。転生じゃねーじゃん。生きてねーじゃん。
……まあ、とやかく言っても仕方ない。考察を続けよう。
弾性円形物質……強いて言うならスライムのことだろうか?
……スライム……か。
ていうか、弱いな。
強いから能力要らないとか言ってたくせに……。
そして、あの星はなんだ?
まあ、いいや。それよりも、今は能力の把握の方が優先だ。
まずは、種族スキルの『暴食』からだな。
暴食って事は、食うってことだよな?
スライムのお食事方法って……確か、対象に触れて包み込んで食べるんだったよな?
うーん……何を食べようか?
えーっと……ここに有るのは……
→岩
→岩
→岩
→岩
……うん。見事に無機物ばかりだな。食えるのかは微妙な所だ。
まあ、これしか無いし、試してみよう。
……決して、石を食べてみたかった訳じゃあ、無い。
*
結果。
ふつーに食えました。
と言うか、あれを食ったと言っていいのかは微妙なところだと思う。
だって、触れたらしゅわしゅわと音をたてて消えていったし。
多分、あれが食ったっていうことなんだろうけど……うーん。
取り込んだのか?あれで?
まあ、取り込めたのはいい。だけど、ほかに効果は無いのか?
取り込めたなら、出せそうな物だ。
取り敢えず、念じてみよう。
岩よ、出ろ!
ムリムリムリィ……←岩が体から出てきた音。
……いや、うん。出たけどさあ……もうちょい、スピーディに出せないもんなのかな?
まあ、仕方がない。練習すれば、もうちょいマシになるだろう。
最後の確認だ。
分解&吸収と、それに伴った俺への影響。
取り敢えず、吸収を命じる。
すると、体の中で何かが分解され、体内で消えて行く感覚があった。
どうやら、成功したようだ。
という訳で、変化を確認するためにステータスを見る。
☆☆☆
名前:無し
種族:弾性円形物質
称号:調停者
種族スキル:『暴食』(★)
スキル:『武器創造』(★★★)
Lv1
HP:20(20)
SP:20(20)
ATK:5
DEF:5
INT:5
RES:5
SPD:5
HIT:5
☆☆☆
変化無し……?
おかしいな?ちゃんと吸収したのに……。
取りあえず、現時点でどの様な効果なのかがわからないので、どんどん岩を吸収して行く事にした。
で、195個めでやっと効果が現れた。
☆☆☆
名前:無し
種族:弾性円形物質
称号:調停者
種族スキル:『暴食』(★)
スキル:『武器創造』(★★★)
Lv1
HP:20(20)
SP:20(20)
ATK:5
DEF:5
INT:5
RES:5
SPD:5
HIT:5
ボーナスポイント:1
☆☆☆
ボーナスポイント…?
あれか?ゲームのキャラメイクとかで使うやつ。
うーん……。現時点でどれが必要なのかわからなくてポイントを振る気が起きないな。
何だか応用が効きそうだし、とって置いて損はなさそうだ。
次。『武器創造』。
こいつはどうやって使うんだろう……?
正直な話、鍛治スキルじゃねえよな?鍛治とか出来ないんだけど?
まあ、種族スキルは強かったし、期待してもいいと思う。
……そういえば、どうやってつかうんだろ?
………
まっ、取りあえず念じてみよう。
むむむ……。『武器創造』!
そう念じた次の瞬間、俺の眼の前にパソコンのウインドウみたいな物が現れた。
……うん。気にしたら負けだ。何故ウインドウとか言ったら負ける気がする。
えーっと、どうやら樹形図のようだな。
現在開放されているレシピは……
@@@@@
錆びた鉄のダガー
必要HP:15
必要SP:0
@@@@@
ザコッ!?
何か考えていたよりも弱い!
あと、HPけずって大丈夫なのか?
これ、削るのが最大HPだったりしたら目も当てられないな……。
取りあえず、作製してみよう。
ポチッとな。
俺は錆びた鉄のダガーを選択し、その時ウインドウに表示された
【作製しますか?】
【はい】【いいえ】
の'はい'を選択するように念じた。
すると、
チーン!
という音と共に虚空から錆びた鉄のダガーが突然現れた。
……音がおかしい気がするが、気にしたら負けだ。
取りあえず、作ってみたことだし、装備して……あ。
忘れていた。今の俺はスライムだった。
装備、出来なくね?
………まあ、取りあえず、取り込んでおこう。うん。そうしよう。
まあ、これで取りあえず俺自身の考察は終わったな。
次に考えるべきなのは……衣食住か。
スライムだから衣は関係ないし、食も必要無さそうだ。
問題は、住だ。
これは俺が自分で作るしかない。
どうやってかって?そりゃあもちろん・・・
スキルを使うんだよ!
*
という訳で完成したのがマイホーム。
洞窟の壁を『暴食』で食って穴を開けた。ポイントをゲットすることも目論んでいたけど、手に入らなかった。
まあ、そこは運だから。仕方がないだろう。
部屋の広さはそこそこ。何畳かとかはよくわからない。部屋の広さを目算するような能力は俺には無いからね。
さて、これで住も大丈夫だ。魔物が来ても怖くない!
次は、レベル上げだろう。レベルがあるっていうことは、モンスターを倒せば強くなれるっていうことだ。
強くならないと、魔王は倒せない。
だから、まずは魔物をコツコツ倒して力をつけないと。
……どうやって倒すか考えないといけないなあ。
不定期更新です。気が向いたら書きます。
4/21誤字修正しました
闇はかり→闇ばかり
12/2誤字訂正しました
受けるしかないだろんだろ?→受けるしかないんだろ?
何でウインドウとか言ったら何だか負けた気がする→何故ウインドウとか言ったら負けた気がする