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カッとなってやった。いまは反省している。

作者: ゆかれっと

 先日、繁華街で行われていた、選りすぐりのお食事とお酒を楽しむためのイベントに行ってきました。

 日曜なのでなかなかに混んでいます。

 でも、嫌いじゃないこの空気感。むしろワイワイしたこの雰囲気を楽しむために来たようなものです。

 お酒の気分ではなかったので、お食事だけ購入して、さて、どこで食べようかと席を探します。混んでいるだけあって飲食用のテーブルもどこもいっぱいです。正直、どのテーブルに着いても相席になりそうな混み具合、どこか空いている席があればいいのですが。


 ――あ、あった。

 やはり相席にはなりますが、ちょこんと入れそうなスペースがあります。

 左隣にはビールだけを置いて立ち飲み中のカップル、でも、もうすぐ飲み終わりそうです。

 右隣は簡易的な椅子が設置されていて、中年のご夫婦がカバンやお酒、空いたお皿などを置いて陣取っています。でも、こちらももうすぐ飲み終わりそう。

 よし。ここにしましょう。




 それがすべての間違いでした。



 空いたスペースに自らの食事を広げて、さあ食べ始めよう、というそのとき。運悪く、持っていたポップコーンのフタがズレてしまい、中身の一部を地面にばらまいてしまいました。

 そんなに多くはありません。散らばったのは自分の足元程度。

 お腹の空いていた私は、とりあえず何か食べたい、という欲求に勝てませんでした。

 どうせ食べ終わって席を立つころには片付けるのだし、足元のゴミもそのときに片付ければいいや、と。

 左隣で立ち飲みをしていたカップルも既に食事を終えてどこかへ行ってしまったようなので、周りには、右隣で空の皿とカップを前に談笑しているご夫婦だけです。


 正直な話、もう食べ終わったのだったら、さっさと空けてくれてもいいのに……と思いました。だって混んでいるんですよ?混んでるのにダラダラと空いた皿を前におしゃべりだけしている。もしかして、もう酔っていらっしゃるのかしら。


 すると、一時離席していたらしいご主人のほうがビールを片手に戻ってきて、また飲み会をはじめました。


 ああ、そっか、まだ飲んでいる途中だったのね。

 ならしかたない。

 見知らぬ人とはいえ、お互いにイベントを楽しむために来た者同士。たとえ相席でも、おいしいもの食べておいしいもの飲んで帰りましょう。


 これでようやく食べられる。

 そう思ったとき、突然、ご夫婦の妻のほうが私に言いました。


「ねえ、片づけないの」

「すみません。食べ終わってから片付けますね」

 できるだけ物腰柔らかにお伝えしたつもりでした。でも、ご婦人にはご理解いただけなかったみたいです。

「はあ。自分で散らかしておいて、片づけないなんてねえ。非常識だわ」

 いや、だから、()()()ちゃんと片付けるって言っているじゃないですか。

 片付けはします。でも、いまはお腹が空いているんです。とにかくなにか食べさせてくれ!!

 幸いにも、汚れたのは自分の足元だけでしたから、通路全体を塞ぐほど散らかったわけではないし、なら、食べ終わって席を立つときにテーブルの上と足元の散らかしたゴミも片付けて行けば問題ないんじゃないですか?

 しかし、それでもこのご婦人にはご理解いただけなかった様子で……。

「そうだよなァ、非常識だよなァ」

 ご主人のほうも、妻を援護えんごするようにあおります。

 しかたがないから、重い腰を上げてティッシュを取り出し、地面に散らばったゴミを片付けようとしました。

「わかりましたよ、いますぐ片づければいいんですね」

 ご夫婦のほうは未だにネチネチと言っています。

 思えば、ご夫婦の目の前には並々注がれたビールのカップがあり、空いたカップもありましたから、相当飲んでいたのかもしれません。酔って気が大きくなっていた可能性は大いにあります。素面シラフであれば「ああ、あとで片づけるのね、お願いね」で済ませられていたことも、酔っていれば、ささいなことさえ気になるのかもしれません(私自身はそこまで酔うほどお酒を飲んだことがないのでわかりません)


 ――うるさい。

 ――いま会ったばかりの他人に、どうしてここまで言われなければならないの。

 ――まったく腹が立つ。

 ――このご主人(ジジイ)ご婦人(ババア)、どうしてやろうかしら。


 私の脳裏に不穏な考えがぎり始めたとき、ふと、ババアの足元に、散らかしたゴミが飛んで行ってしまっているのに気づきました。

「あら、ごめんなさいね」

 一瞬の出来事だったと思います。

 私はゴミを片付けるために、思わず、ババアの身体を押しのけました。

「きゃぁああっ」

 ババア、発狂。

 ジジイは、これは一大事だ、とスマホを取り出して一部始終をカメラに収めようとしました。

「ちょっと、なに撮ろうとしてるんですか。やめてください」

 カッとなった私は、ジジイのスマホを奪おうとしました。

 ジジイ、興奮。

 私も興奮。

 ババアも興奮。

「誰かぁあああ!!!スタッフ呼んできてぇええええ!!!」


 やがて、ババアの声で、イベントスタッフが到着しました。

「この人がぁあああ!!!この人が、あたしのこと、押したのぉおおおお!!!!」

「ちがうんです、これは……!」

 興奮した様子のご夫婦を前に、こちらが何か言おうとすればさえぎられ、イベントスタッフの対応では対処しきれず、警察を呼ぶ騒ぎになってしまいました。



 ああ。平穏な日曜の昼下がり。

 周りの賑やかな様子を見ながら、楽しく食事がしたかっただけなのに……。


 駆けつけた警察からは「いくら煽られても、先に手を出したら、それで万が一にも怪我をさせたりしたら、傷害罪になるんだからね」と厳重注意を受けました。

 おまわりさん、ごめんなさい。いまはちゃんと反省しています。

酔っ払いに絡まれ、警察を呼ぶ騒動になった結果、きちんと反省(シラフのくせに喧嘩買うなよ、って感じですよね、すいません)

感じた怒りをどうコントロールすべきか、よく考えたうえでこのエッセイを書くことになりました。

いやな思いはさせられたけど、結果として、こうしてネタにするきっかけをくれたご夫婦、ありがとう!



参考:


アンガーマネジメントとは?怒りの感情をコントロールする6秒ルールや実践方法 (ALL DIFFERENT株式会社-人材育成コラム)

https://www.all-different.co.jp/column_report/column/angermanagement/hrd_column_94.html


【心理士監修】アンガーマネジメント とは?意味や実践方法、怒りのタイプ診断を解説 (Smart相談室)

https://smart-sou.co.jp/mag/article/anger-management

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