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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第5章 冒険者

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第98話 戻らないメイ

「エンケリ! エンケリ!!」


 ヨーツェンに押さえつけられているメイは、死んでしまったエンケリを見てぽろぽろと涙を流した。

 それを見たユオはショックで、急いでメイに駆け寄った。


「メイ……しっかりしろ……エンケリは敵だっただろ……」


 ユオはメイの頬を両手で包んで声をかけたがメイは正気に戻らなかった。


「違う! エンケリは私にとって大切な存在なの! どうして殺してしまったの……」


 ユオはメイを抱きしめた。このまま一生正気に戻らないのではないと思えて不安でならなかった。


「嫌! 離して! エンケリの所に行かせて!」


 メイは渾身の力でヨーツェンの氷とユオを押しのけてエンケリの首まで走った。エンケリの首を愛おしそうに抱えて泣き続けている。


 ユオは変わり果ててしまったメイを見て、膝から崩れ落ちた。


「兄上! しっかりしてください!」


 ムスタは崩れ落ちたユオに駆け寄った。


「そうです……まだ、何か……方法はあるはずです……」


 トゥフカは自分で上級ポーションを飲み、喋れるまでに回復していた。


「……そうだ。薬だ……オルガの薬に万能薬があった筈だ……」


 ユオはアイテムボックスから万能薬を取り出してメイに近づいた。

 メイはユオからエンケリの首を守ろうと強く抱え込んだ。


「メイ、頼む。これを飲んでくれ」


 メイは首を強く横に振った。


「分かった……」


 ユオは自分の口に万能薬を含んで、メイに強引に口移した。


「ん!」


 メイの喉がゴクリと音を立てる。するとメイはエンケリの首を落とし頭を抱えた。頭が痛むのか、頭を両手で押さえている。ユオはメイを強く抱きしめた。


「メイ! 戻ってくれ……」


 メイが涙を浮かべた目でしっかりとユオを見た。


「ユオ……ありがとう……… 自分が自分じゃないみたいで怖かった……」


 メイは正気に戻っていた。心底怖かったようで、手が微か震えていた。


「メイ……良かった……… もう、戻らないのかと思った……」


「姉上……良かったです……」


 ムスタもトゥフカもヨーツェンも安堵の表情を浮かべた。


 ユオは再びメイを強く抱きしめて、メイが正気に戻ったことを喜んだ。




「ねぇ、お父さんたちにもこれ使えないかな?」


 メイは魔法カバンから万能薬を三本出して、石像に駆け寄った。


「貸して」


 ユオも駆け寄り、メイから二本万能薬を受け取る。


「これも一応一緒に使ったらいいかも」


 メイは上級回復薬と蘇生薬も、必要な数ユオに渡した。


「ありがとう……」


 二人は薬を石像にかけた。

 薬をかけ終わるとメイは手と手を合わせて、目を閉じて創世の女神に祈った。


 薬をかけられ、濡れたようになった石像から蒸気が上がる。白い岩肌が少しずつ人間の肌へと戻っていった。







「生きてるのか…………?」


 メイはぎゅっと閉じていた目を開けた。目の前には、記憶の水鏡で見たのと同じアルトが動いて喋っていた。


「お父さん……」


 メイはフードを脱いだ。アルトと同じ色の髪を見て、アルトは目を見開いた。


「もしかして………メイなのか……?」


「そうだよ………お父さん、抱きしめてもいい?」


「当たり前だろ」


 メイはアルトに抱きついた。アルトもメイを抱きしめてメイの頭を撫でた。






「母さま……」


 ユオは生き返った母を抱きしめた。


「………この匂い、ユオなの? こんなに大きくなって……夢みたい」


「……これは、一体」


 リュフトも元に戻っていた。リュフトは隣にいるキサが生き返っているのを見て、唇を震わせながら涙を流した。


「キサ………すまなかった。あの時の私は正気を失っていたんだ………」


 キサはリュフトに飛びついた。


「私のことをまだ愛してくれていますか?」


 リュフトはキサを抱きしめた。


「当たり前だ! 愛している」


「なら、それだけで充分でございます。私もあなたを愛しています」







 ムスタは複雑な心境だった。兄たちの家族の輪に入りたい気もしたが、自分のような異物は入るべきではないという気もした。


「ムスタ、おいで」


 ユオがムスタを呼んでくれた。ムスタは恐る恐る近づいた。


「ムスタか……? 大きくなったな」


 そう言うと、リュフトはムスタを抱きしめてくれた。ムスタは安堵の気持ちで涙が流れた。


「母さま、私の弟だ。思う所があるかもしれないが、私は受け入れてるんだ」


 ムスタを見つめるキサの顔は笑顔だった。


「こんなに陛下とユオにそっくりなんですもの。大丈夫。あなたも大切な家族ですわ」


 キサは涙を流すムスタの背中を擦った。



 二組の家族はしばらくの間、十数年ぶりの再会を喜んだ。

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