第97話 討伐
三人と一匹はすぐに動いた。
ムスタの影から巨大な猪の様な魔物が一体飛び出し、エンケリに向かって突っ込んだ。エンケリは前足で猪の胴体を押さえている。
エンケリに操られているメイはひょいと飛び上がり、振り下ろした剣で猪の首をすぱんと切り落すと、猪の魔物は影になって消えた。
その隙にトゥフカは、音もなくメイの背後に回り込んでメイを羽交い締めにした。
「トゥフカ、良くやった! ヨーツェン、メイを氷で動けなくしてくれ!」
ユオの指示でトゥフカとヨーツェンは協力し、メイの身動きを封じた。メイは必死に動こうともがくが、ヨーツェンの氷で動くことができない。
「ユオ様、私はメイさんを抑えるのに精一杯でございます!」
メイの力が強く、氷が所々パリパリと割れていく。その度に、ヨーツェンは氷の魔法をかけ続けた。
「分かった! トゥフカ、ムスタ、前衛をやってくれ! 援護する」
ユオの声でムスタは三体の虎型魔物を召喚し、トゥフカは二本のダガーを抜いてエンケリに斬り掛かった。ユオは十の水球を出して高圧力の水をエンケリに向けて放った。
エンケリは前足の爪や尻尾を振り回し、攻撃してくる。ユオの水魔法はエンケリに無数の傷を作ったが、トゥフカがエンケリの尻尾に捕まってふっとばされた。
「トゥフカ!」
トゥフカは強く壁に打ち付けられて動かなくなった。
こんな時、メイがいれば回復も防御も任せられるのに――とユオは唇を噛んだ。
「兄上! 僕がエンケリを抑える! その隙に!」
ムスタがユオに声をかけて、気持ちを切り替えさせた。
「く、分かった!」
「モンスターテイム!」
「ぐわ!!」
エンケリは地面にひれ伏した。必死に抗おうとするが強力な力で押さえつけられて、悶え苦しんでいる。
「小さい頃の僕のテイムと同じだと思わないでね、エンケリ! 兄上、今だ!」
ユオはムスタがエンケリを押さえつけている間に巨大な水球を水魔法で作っていた。
「いけぇ!!!」
ユオは渾身の力で水魔法をエンケリの頭に叩きつけた。
「凍れ!」
ユオが開いていた手を強く握ると水が氷に変化して凍りついた。ユオは素早く剣に水魔法を付与して、エンケリの首に振り下ろした。エンケリの首が落とされた。
「グアァァァ!!!!」
やったのか………?
ユオがエンケリの落ちた首に近づくと、目玉がぎょろりと動いてユオを睨んだ。
「これで、終わりと思うなよ………必ずや、転生し、僕の望む世界を………」
エンケリは完全に動かなくなった。




