第90話 【番外編】遊戯
始めは楽しかったテイムも回数をこなすごとにに、ただの作業になってしまった。それでも暇だったムスタはひたすらにテイムを繰り返し仲間を増やした。
大きく成長したムスタはすっかり自分のスキルを使いこなせるようになっていた。使役した魔物の数は1000を優に超え、大きな軍隊へと成長していた。
兄たちを真似して、魔物達と魔国のダンジョンに行ってみたこともあった。しかし、ムスタの軍隊ではあまりにも簡単過ぎた。【スキルレンタル】を使って、使役した魔物達の能力を借りてムスタ自身で戦ってみたりもしたが結果は同じだった。ムスタには満たされない思いが残った。
「つまらない……」
玉座に座ったムスタは口癖のように呟いた。
「では、戦争でもしてみては如何ですか?」
エンリケは相変わらず眠そうな調子でそう言った。
「魔国との国境から一番近いエーデンのイーリス砦を落とすのです。城攻めは色々な方法がありますし、良い暇つぶしになると思いますよ。落とせたら、魔国の領地も広がりますし、近頃文句を言ってくるようになった族長会も黙らせることができて、一石二鳥かと」
成長したムスタに魔王としての仕事をするように族長会は求めてくることが増えてきていたが、今まで族長会で回していた物をどうしてムスタがしなければいけないのか、ムスタには理解ができなかった。城に誰かがいた事もない、世話になった覚えもないのにどうして自分が国のために働かなければならないのか納得がいかなかった。
「こちらに戦術書や兵法が載った本が何冊かございます。読んでみると良いでしょう」
「分かった……」
ムスタはすぐに戦術書にのめり込んだ。
エンケリが言うように、確かにこれは面白いと感じることができた。
石魔法が使える魔物のスキルを借りて、ムスタは模型を作り始めた。最初にイーリス砦の模型を作ろうとしたが、形が分からなかった。
「エンケリ、イーリス砦ってどんな形?」
エンケリは欠伸をしながら答えた。
「そんな物、ムスタ様の使役している魔物に調べさせてください。兵の数や武器の種類も調べさせるんですよ」
「あぁ、なるほどね。ユクシ」
ムスタはコウモリの魔物のユクシを召喚した。名前を呼ばれたユクシはムスタの影から飛び出してきた。
「エーデンにあるイーリス砦を見てきて。【意識共有】で見てるからね」
ムスタは新しく【意識共有】のスキルを覚えていた。使役している魔物の意識を共有できるのだ。
『お任せください。ご主人さま』
ユクシはパタパタと飛び立っていった。
ユクシも数年の間でレベルアップしていた。【影飛び】というスキルで影と影の間を瞬間移動できるようになっていた。
一時間と待たずに、ユクシはイーリス砦にたどり着いた。ユクシは砦の周りをぐるっと飛んだ。
ムスタはユクシの目を通してみた情報を基に、城壁や砦の形を正確に模型にした。兵の数もざっとではあるが、数えて模型にした。
「この砦はバリスタもあるんだね…… あと、魔法使いもたくさんいるね……」
ユクシは砦の特徴を気がついた限り、全て模型にした。
「よし。次は魔王軍だ」
ユクシはどの魔物なら、この砦を落とせるか想像しながら模型を作っていった。
「よし。この布陣なら砦を落とせそうだ。さっそく試しに行ってみる」




