第89話 【番外編】初めてのテイム
城から逃げ出したムスタは魔物を探した。
エンケリのアドバイス通りに、まずは小さな魔物にしよう。
ムスタは木にぶら下がって寝ていたコウモリの魔物を見つけた。
「モンスターテイム!」
ムスタが唱えるとコウモリは木から落ち、地べたにぺしゃりと引っ付いた。
「僕の家来になってくれる?」
ムスタがそう言うとコウモリは小さく頷いた。
ムスタの頭の中でお輪のような音が鳴った。コウモリが立ち上がり、甲高い声がムスタの頭の中に響いた。
『ご主人さま、名前をつけてください』
「この声は君の声なの?」
ムスタが聞くと、コウモリは頷いた。
「そうだな……じゃあ、ユクシでいいかな」
『ユクシ……いい名前』
コウモリは気に入ったのか、パタパタと飛び上がりムスタの肩にのった。
「次はどんな魔物がいいかな?」
ムスタは考えた。
お母さんみたいなのがいい……
ムスタは寂しさを埋めるために、母親の代わりを探すことにした。
「お母さんみたいな魔物っているかな?」
ユクシに聞いてみると、ユクシはムスタの肩から飛び立ち案内してくれるようだ。
ムスタはユクシの後を追いかけて走った。
しばらく走ると渓谷についた。渓谷には、遠目からはよく分からないが大きな鳥のような生き物がたくさん飛んでいた。
「あれがお母さんみたいな魔物?」
ユクシはムスタの肩に止まり頷いた。
「キャー!!!」
甲高い女の叫び声のような音が渓谷に響いた。
大きな鳥が集団で、ムスタ目掛けて飛んできた。
「あ! 本で見たことあるよ! ハーピーだね!」
上半身は人間の女のようだが、腕の代わりに大きな翼が生えていて、下半身も鷲のような造りをしている。
「うわぁ!」
ハーピーは交代でムスタに襲いかかってきた。ムスタはギリギリのところでハーピーの鉤爪をかわした。
「キュピピピピ!」
ユクシは近づいてきたハーピーに甲高い鳴き声をあげた。すると、ハーピーは目を回したように地面に落ちてしまった。
「すごい! ユクシがやったの?」
『【超音波】というスキルです。近くまで近づいきたらハーピーを落とせます』
「じゃあ、僕が囮になるから、ユクシがハーピーを落としてね」
一人と一匹の見事な連携プレイで、五羽のハーピーを落とすことに成功した。
ムスタは五羽、全てをテイムして名前をつけた。最後に名前をつけたハーピーは黒髪に黒い瞳をしていて、姿絵で見たムスタの母に少しだけ似ていた。
「君は僕のお母さんをしてくれるかな? クーシ」
ムスタは母に似たお気に入りのハーピーにクーシと名前をつけた。
『もちろんでございます。ご主人さま』
クーシはムスタに恭しくお辞儀をした。




