第88話 【番外編】ムスタとエンケリ
ムスタは寂しくなるとエンケリにねだって兄と姉の映像を見るようになった。
兄と姉は大抵はいつも一緒だった。二人の間に座る自分の姿を想像しては、空想の世界で三人で遊んだ。
ある時、兄と姉は他の友も連れてダンジョン攻略をしていた。兄と姉はその時のムスタとは比べ物にならないくらい強く、ムスタは強い衝撃をうけた。
自分もやってみたい……
「エンケリ! 僕も兄上と姉上みたいに戦ってみたい!」
エンケリはいつものように眠そうだ。大きな欠伸を噛み殺しながらムスタの相手をした。
「では、ムスタ様のスキルを見てあげましょうか」
そう言うとエンケリの目がキラリと光った。
「これまた珍しいスキルですね。まさに魔王にピッタリのスキルだ。【モンスターテイム】【召喚】【合成進化】【スキルレンタル】ですか……」
「それってどういう事? 何ができるの?」
「【モンスターテイム】は、ご自分の魔力を対価に魔物を使役できるスキルです。先代魔王の血を引くムスタ様は、無限と言っていい程の魔力をお持ちです。その魔力欲しさに幾らでも魔物が寄ってくるでしょう」
エンリケはまたあくびをした。
「ひとまず、魔王城の近くの小さい魔物からテイムしてみることですね。他のスキルは【モンスターテイム】を使いこなせるようになったら、教えてさしあげましょう」
「ふーん………じゃあまず、エンケリをテイムしてみようかな。モンスターテイム!」
ムスタがスキルを唱えるとエンケリの体が重力で押しつぶされたようになり、エンケリは地面にひれ伏した。
「どお? 僕の家来になりたくなった?」
エンケリは珍しく怒っているようだ。鋭い歯を剥き出しにし、四足の足で踏ん張って立ち上がった。
「舐めるなよ!! 小僧!!」
そう言うとエンケリの体は大きく膨れ上がり、玉座の間の天井に頭がつく位の大きなドラゴンへと姿を変えた。
ムスタはエンリケの変貌ぶりに腰を抜かして尻餅をついた。
「ムスタ様は、少し僕を過小評価し過ぎているようだ……… そもそも僕はムスタ様の魔力を欲していないし、あなたの家来になる気など、毛頭もございません。
家来探しは、外でやってきなさい……」
エンケリの迫力にムスタは、脱兎のごとく逃げ出した。




