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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第5章 冒険者

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第86話 馬

「ふぅぅ! よく寝た!」


 メイが起きるとユオはまだテントの中で寝ていた。

 昨日、よっぽどトゥフカとの話が盛り上がったのか、いつもメイより早く起きるユオが今日は寝坊していた。


 メイがテントから出ると、いい匂いがした。焚き火の周りには串に刺さった魚が並べられ、いい具合に焼けていた。

 メイは思わず涎が出そうになった。ここ最近移動続きでまともな食事を取っていなかったからだ。


「メイさん。おはようございます」


 起きてきたメイにトゥフカが挨拶をした。今日は頭巾を被っておらず、グレーの髪と猫耳が見えた。


「おはようございます。これ、トゥフカさんが用意したんですか?」

 

「はい。数日追い回してしまいましたから、そのお詫びです。調度焼けていますから、どうぞ」


 トゥフカは魚の串焼きを取ってメイに渡した。

 メイはしっかり味わいながら串焼きを食べた。


「おいしいです。塩加減も抜群ですね!」


「喜んで頂けたようで良かったです。昨日、殿下とは話したのですが、俺も旅にお供させて頂くことになりました。よろしくお願いします」


「あ、そうなんですね! それは嬉しいです! こちらこそ、よろしくお願いします」



 匂いに釣られたのかユオも起きてきた。メイの隣に座り、メイの頬にキスをした。まだ寝ぼけているらしい。


「殿下、おはようございます。魚が焼けていますので、どうぞ」


 ユオは何も言わずに受け取り、器用に寝ぼけながら食べ始めたが、口に入れた瞬間に目が覚めた。


「うま!」


 久しぶりに食べたちゃんとした料理にユオの目も覚めたらしい。


「殿下、慌てなくても沢山焼きましたから」


 ユオの様子を見て、トゥフカは尻尾を振って喜んだ。





 フンフン


 メイは後ろから動物の鼻息を感じ、びっくりして振り向いた。茶色の馬がメイに鼻を近づけ鼻を鳴らしていた。


「ルーホ、こっちにおいで」


 ルーホと呼ばれた馬はトゥフカの方へ移動した。トゥフカはアイテムボックスから林檎を出して馬に与えた。馬はバリバリと音を立てながら、器用に林檎を食べていく。


「かわいいですね。トゥフカさんの馬ですか?」


「そうです。長距離移動に自分の馬は必需品です」


「そうなんですね…… 私たち馬を持っていなくて、しかも乗合馬車にも乗れなくなってしまって困っていたんです」


「では、メイさんと殿下の馬を捕まえてきましょう。確かこの辺りにも野生の馬がいたはずなので」


「え!? そんなに簡単に捕まえられるんですか?」

「俺は【動物言語】というスキルが使えるので、動物と意思疎通ができるんです。ちょっと探してきますね」


 そう言うとトゥフカは森の中へ入っていった。

 小一時間程すると、トゥフカは二頭の馬の手綱を引いて現れた。


「予備の馬具があって良かったです。これで、すぐに御二人も使えますよ」


「私、馬に乗ったことないんですが、大丈夫でしょうか?」


「では、教えて差し上げます」


「トゥフカ……私がやるからいい」


 ユオがメイとトゥフカの間に割って入った。


「出過ぎた真似を致しました」


 トゥフカはユオに頭を下げて、焚き火の後始末をしに行った。


「ユオ、馬に乗れるの?」とメイは訝しんだ。


「子供の頃によくヨーツェンと乗り回していたから大丈夫だ。ちょっと待って」


 ユオはメイの馬の顔をじっと睨んだ。何かを察したのか、馬はユオに頭を下げた。


「よし、これでいい」


 ユオはメイを抱き上げ、メイを馬に乗せた。


「そのやり方ほんとに合ってる? なんか馬さん、怯えてない?」


「私は父親から、こうするように習った」


 ユオはメイの馬の手綱を引いて、メイの練習に付き合った。



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