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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第5章 冒険者

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第85話 新しい仲間

「もうユオやめてよ! トゥフカさんの信用を得るために目を見て話がしたいの!」


 メイはフードを被せて話の腰を折ろうとするユオに文句を言った。


「その係は私がするから、メイはしなくていい!」


 ユオは反論した。ユオはとことんメイを隠しておきたいらしい。


 トゥフカはそんな二人の様子を見て笑った。


「安心しろ兄弟。俺は同族の恋人を奪うような男じゃない」


「信用できない! メイは人誑しの天才だぞ! 最初は興味なくても、段々好きになっちゃうんだ! 今までそうやって何人の男を誑かしてきたことか」


「えぇ!! 変なこと言わないで!! 私、そんな事してないよ!」


「そうやって、自覚のない所がなおたちが悪い」


 二人の喧嘩は暫く続いた。






「メイはもう寝ててくれ。同族同士、積もる話もあるから」


 シッシッと手を振るユオに、メイは渋々折れる事にした。


「明日は、私もトゥフカさんと話するからね! 絶対だよ!」


 メイはそう言うとテントに入っていった。




「仲が良いんだな」


 トゥフカはメイとユオの様子を見て率直な感想を口に出した。


「獣人族は他種族への警戒が強い奴が多い。人族とどうして恋仲になったのか不思議だったが、彼女の人柄のなせる技なんだな」


「やめろ。メイを褒めるな」


 トゥフカはまた笑った。


「俺を殺してしまったほうがいいんじゃないか?」


「私もそうするべきだと思うが、メイが駄目だと言うからな……

 今回は契約魔法で済ましてやる。メイに手を出したら、タダじゃ済まないからな……」



* * *



 こちらと敵対しないことを契約魔法で縛り、ヨーツェンはトゥフカを固めていた氷を溶かした。

 トゥフカは焚き火で冷えてしまった手と足を温めた。


 ユオは自己紹介と冒険者として旅をすることになった経緯をトゥフカに説明した。


 トゥフカは跪き、被っていた頭巾を脱いでユオに謝罪した。頭には尻尾と同じ、グレーの髪と猫耳が生えていた。


「ユオ殿下であったとは、知らなかったとはいえとんだご無礼を働きました。お許しください」


「……許す。トゥフカのことも話してくれないか?」


 トゥフカは自分の父親はユオの母の兄であること。父親は先の内戦で亡くなったこと。亡命してからはアサシンとして働き、同族たちを助けていること等を話した。


「トゥフカと私は従兄弟だったんだな……世間は本当に狭いな。ではトゥフカも内戦などなければ、今ごろ次期族長候補にでもなってたのかもな……」


「そうかもしれません……

 殿下は王位を取り戻す気はないのですか?」


「なかった、が……私の親のごたごたのせいで、国に住めなくなってしまった人たちがいることは、本当に申し訳なく思っている……

 王位を継ぐかまでは考えられないが、皆がまた魔国に住めるように、できる限り協力はしたい」


「ユオ様! では!」


 話を聞いていたヨーツェンは飛び上がって喜んだ。


「あぁ、どっちにしても魔国には行くんだ。メイじゃないが、話し合いで解決するかもしれないし、弟とやらに会いに行ってみる」


 ヨーツェンは喜びのあまり舞を踊っている。


「お供致します、殿下」とトゥフカ。


「仕事はいいのか?」


「この仕事が失敗している以上、次の仕事はありません。元より、同族の安全の為に始めた仕事です。故郷を取り戻せるなら、無理をしてやる必要もございません」


「そうか……トゥフカが仲間に加わるなら心強いな。でも、メイには近づくな。これは絶対だ」


 トゥフカはユオの徹底した態度に笑った。


「殿下、差し出がましいことを申しますが、そんなにメイさんが信用できませんか?疑ってばかりいては嫌われてしまいますよ」


 ユオはビクッと体を震わせた。ユオにとって「メイに嫌われる」はキラーワードだった。


 ヨーツェンがユオの状況を的確に補足した。


「トゥフカ殿、ユオ様はメイさんを信用していないのではなく、ご自分に自信がないのです。だから、こんなに他の男から遠ざけているのですよ」


「自信がない? 殿下がですか?」


「そうです」


 ヨーツェンはユオの肩にとまり、目を細めてユオを見た。


「殿下、何か心当たりがあるなら相談にのりますが……」


 ユオはトゥフカに相談すべきか、かなり悩んだが、メイに嫌われることだけは絶対に嫌だったので、思い切って相談してみた。


「……閨に自信がないんだ」


 トゥフカは一瞬驚いた顔をしてから、腹を抱えて笑った。


「笑うな! こっちは真剣に悩んでるんだ!」


「殿下は秘術の書はお持ちではないのですか?」


「秘術の書とはなんだ?」


「殿下の母君も嫁入り道具として持たされているはずですが、殿下は受け継いでおられないのですね……

 秘術の書とは、獣人族に伝わる秘術が書かれた書物にございます。俺も持っていますので、貸して差し上げましょう」


 トゥフカはアイテムボックスから、一冊の古びた本を出してユオに渡した。


「メイさんに見つからないところで読んでください。

 あと、殿下は閨の時に耳と尾は出した方がいいと思います」


「なぜだ?」


「獣人族が奴隷商に狙われやすいのは、耳や尾など外見の特徴を好む人族が多いからです。メイさんもそうかは分かりませんが、試してみて損はないかと思います」


「分かった……次の機会に試してみるよ」


 ユオは秘術の書を熟読し始めた。


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