第80話 指名手配
メイとユオはヨーツェンの案内でフィンド王国とエーデン王国の国境近くまでたどり着いていた。
国境には高い石壁があり、入国審査を通らないと入国できない。
「ここまで私の捜索願いが届いてたらどうしよう……」
――というのもここにたどり着くまでの街でも大きな街だとメイの姿絵が貼り出され、大々的に指名手配されていたのだ。新聞にもメイの失踪を知らせるニュースが一面に載っていた。
新聞の内容はこうだった。
__________________
「天使の歌声で有名なメイの失踪!」
昨年大ヒットを記録した「天使の歌声」でデビューした、歌手のメイさんが失踪していたことが判明しました。
メイさんの失踪を彼女の実家でプロデュースにも関わっているヴィーエラ商会に取材した所、トーヤ大学を卒業し、帰宅後すぐに失踪してしまったとのことだった。
我々独自の取材では、恋人と夜逃げしたといった噂や彼女を追いかける過激なファンに攫われたとの噂もあり、情報が錯綜しています。
ヴィーエラ商会は現在、メイさんの捜索に多額の懸賞金を出しており、今やフィンド王国中の冒険者がメイさんの行方を探しています。
デビュー後初のコンサートを予定し、あの素晴らしい歌声を生で聴けることを心待ちにしていたファンたちは大きく肩を落としています。メイさんが無事にファンの前に戻ってくることを祈り、我々はこれからも取材を続けていきます。
__________________
新聞を読んだメイは鳥肌がたった。
私のニュースのはずなのに知らない情報が多すぎる!
「天使の歌声」ってなに? いつの間にコンサートの予定まで組まれていたの?
祖母の暴走によるものなのだろうが、ここまでの大事になっているとはメイは思ってもみなかった。
「少し飛んで見て参ります」
ヨーツェンが入国審査場までパタパタと飛んでいき、しばらくしてから戻ってきた。
「駄目でした。ここにもメイさんの姿絵が貼り出されていました。入国審査に引っかかるでしょう」
「こうなったら、強行突破しかないのか……」とユオ。
「駄目! 関係ない人が怪我するかもしれない。確かお母さんが持たせてくれた物の中にいい薬があったはず! ちょっと待って」
メイは魔法カバンからオルガの薬籠を取り出し、地面に置いた。
一番下の薬が整理されている引き出しをごそごそと物色していく。
「あった! これこれ、変身薬!」
メイは変身薬のラベルを読んだ。
「なになに……
変身薬――30分だけなりたい姿になれる薬――だって!
すごい! やっぱりお母さんは天才だ! さっそく使ってみるね」
メイは薬瓶の蓋を開けて一気に飲み干した。すると、メイの体がボワンと煙に包まれた。煙が消えると地面にはメイの服が落ちていた。服が丸く盛り上がり、もごもごと動いている。
「ニャ…… ッニャ!?」
服の中から淡い色の茶トラ柄の猫が出てきた。メイは猫に変身してしまったらしい。言葉が喋れず、一生懸命ニャーニャー鳴いている。
ユオはなぜか自分の口を押さえた。
「ニャニャ、ニャー?」
メイは猫語でユオに話しかけた。
「ごめん……今、猫のメイも愛せるか考えてた………メイは猫になってもかわいいね……」
ユオは猫メイを抱き上げ、メイの鼻にキスをした。
「ニャー!」
メイは猫語で文句を言ったが、ユオには通じなかった。
「あ、メイの服と荷物、ひとまず私のアイテムボックスに入れておくな」
ユオはメイの服を丁寧に畳んでしまい始めた。
「ニャー! ニャ!」
メイの下着まで畳んでいたユオにメイは文句を言ったが、ユオには届かなかった。メイは恥ずかしさで死ぬかと思った。
「はいはい。いちゃいちゃしてないで、さっさと行きますよ。三十分しかないんですから」
ヨーツェンは冷めた顔で二人に声をかけた。




