第79話 夜逃げ再び
「あれ? ユオとメイちゃんは?」
ダンジョンを出て、他の冒険者たちと打ち上げの相談をしていたエルメルは、ふとユオとメイがいなくなっていることに気がついた。
エルメルはギルド長のヤーコブにユオとメイがどこへ行ったのか尋ねた。
「ヤーコブさん、ユオとメイちゃんを見ませんでした? 打ち上げに誘いたかったんですが……」
ヤーコブは長い髭を撫でて、ほほ笑んだ。
「彼らはもう旅立ってしまったよ。恋の逃避行かの」
* * *
「ユオ行くよ」
メイとユオはソッケロのダンジョンを出ると、すぐに街を出ていた。
ヤーコブがメイ達のことをセヴェリに連絡する前に街を出なければいけないからだ。
「エルメルさんに挨拶だけしたかったな……」
ユオは寂しそうにしていたので、メイは申し訳なくなった。
「ごめんね……問題が解決したら、二人で会いに行こう。
次はどこに行こうか」
方向感覚ゼロのメイは勢いだけで先頭を歩いていた。
「微かだが、魔国のある方角から優香の気配を感じる気がする。もしかしたら、優香ではなく新しく魔王になったという奴の気配かもしれないが、近づいてみないと分からないから魔国を目指そうと思う」
「新しい魔王?」
ユオは頷いた。酒場でエルメルから聞いた話をメイにも聞かせた。
「え……ちょっと待って……
魔王と優香の息子ってことは……
ユオの弟で、私の弟でもあるってこと?」
「そういう事になるな」
「なんかちょっと複雑な気持ちだな……
ソニヤみたいに可愛いと良いんだけど」
ユオはメイの言葉の意図が分からず、首を傾げた。
「だって、姉弟なら仲良くしたいでしょ。
ユオのちっちゃい頃に似てたらどうしよう……可愛いすぎるでしょ……」
メイはユオとは違って能天気ないらない心配をしていた。
「兎に角、魔国へ向かう。
魔国に入る方法はヨーツェンにでも聞いてみるか…… ヨーツェン」
ユオがヨーツェンを呼ぶと、ヨーツェンはいつものように空中に黒い穴をあけて転移してきた。
「ユオ様、お久しぶりでございます! 息災でしたか?」
「あぁ、元気だったよ。魔国に入りたいんだが、どうやって入るのが一番いい?」
「ま、魔国に!? ユオ様、遂に王位の奪還に動いてくださるのですね!!
あぁ、ヨーツェン、胸がいっぱいでございます!」
「違う」
「ち、違う! では、何故に魔国に?」
ユオはヨーツェンに詳しい事情を話していなかった事を思い出し、ヨーツェンに事情を説明した。
「なんと、そんな事が!?
私はあの優香とかいう女は初めから怪しいと思っていたのでございます! まさかそのような人の道から外れたことをしていたとは!
分かりました。ここからの旅は私ヨーツェンが御二人のガイドを勤めさせていただきます!」
「やったー!」
ヨーツェンが仲間に加わってメイは嬉しそうだ。一方、ユオは若干不満気だ。
「道だけ教えてくれれば自分たちで行くけど」
ユオはメイとの二人旅じゃなくなるのが不満らしい。
「いいえ、そういう訳には参りません。
私が案内する場所は鳥族の隠れ里にございます。そこには魔国につながる転移魔法陣がございますので、そこから入国すれば比較的安全に入国できるかと思います。
ただ、新魔王から隠れております故、御二人だけでは見つけることは難しいでしょう。
大丈夫です、ユオ様! 私が完璧なガイドを勤めてみせます!
さぁ、隠れ里はエーデン王国の中にございます! 私に付いてきてください!」
ヨーツェンは張り切って先陣をきった。




