第77話 ボス戦
「準備はいい?」
エルメルが先頭に立ち、大きな扉の前で全員に声をかけ、一同は静かに頷いた。
エルメルと他にも同じような全身甲冑の男たちが、大きな扉に力を込めて開けた。
中は薄暗く、壁をには青く光る炎が燭台に灯されていた。燭台は等間隔で壁に配置されている。
「奥を見ろ!」
誰かが、部屋の奥にいる何かに気が付き、指を刺した。
奥から五体の大きな影がのっしのっしとこちらに近づいてきていた。
「オーガだ……しかも、かなりデカいぞ……」
一体15mはあるだろうか。巨大なオーガが横一列に並んでいた。
「それでは、皆さん作戦通りに………行くのじゃ!!」
ヤーコブの合図で、全員が一斉の動き出した。メイは【加速】の魔法をかけた。全員のスピードが上がり、エルメルを始めとした甲冑を着たタンク五人が先頭を走った。五人は左右に散らばり、一人が一体のオーガを対応する構えだ。後衛の魔法使いたちが先頭の五人に【シールド】を張った。
魔法使い達は大規模魔法を使う為に詠唱を始めた。
「グォォォォォ!!!」
オーガたちは一斉叫んだ。物凄く大きな音で、空気がびりびりと震えるのを感じた。
オーガ達は持っていた大きな棍棒を振り上げ、タンク達に強く振り下ろした。【シールド】とタンク達の盾により、何とか持ちこたえているが長時間は持ちこたえることはできないだろう。
ユオや他の武器を持ったアタッカーがオーガの周りを取り囲み攻撃を始めた。オーガに膝をつかせる為に、脚を中心に攻撃を入れていく。
オーガはじたばたの脚を動かしてアタッカーたちを蹴り飛ばした。何人かに攻撃が当たってしまい、壁まで飛ばされてしまった。壁にぶつかった冒険者たちは口から血を流している。ユオはうまくかわして無事のようだ。
ヤーコブが新たな指示を出した。
「残っているアタッカーは負傷者を後方まで下げる! ヒーラーは負傷者の回復に専念! 遠距離攻撃部隊はオーガの目を狙って攻撃して、負傷者の撤退を援護するのじゃ!」
エルメルのパーティの弓術士がオーガの目を射抜いていった。女性の体でどうやってあんなに大きい弓を引けるのかと、メイは感心した。一匹のオーガがその弓術士に気が付き、タンクを振り切って、弓術士めがけて走った。
「危ない!」
メイは急いでオーガと弓術士の間に炎の魔法で壁を作ったが、オーガは自分の肌を炎で焼かれながらも弓術士に向かって突っ込んできた。振り上げられた棍棒が無情にも弓術士に振り下ろされようとした。
その時、エルメルが盾を持って間に立ち、弓術士への攻撃を防いだ。
メイは走って、弓術士の所まで駆け寄り腕を引っ張って離脱させた。
メイは弓術士を助け出せて安堵したが、エルメルが担当していたオーガもエルメルの方に走ってきて、エルメルが一人で二体のオーガの攻撃を受けた。片方は盾で受けながら、反対の手で剣を持ち、もう一方の攻撃を捌いていく。まさに神業と言えるだろう。
しかし、ずっとガードし続けたせいで、エルメルの盾にヒビが入ってしまった。次の攻撃は受けられないだろう。エルメルは死を覚悟した。
「エルメルさん。一つ貸しですよ」
エルメルが抑えていたオーガの後ろで大きな雷が光った。オーガの一体が雷に打たれて倒れていた。ユオが雷魔法を放ち一体を伸したのだ。
ユオの雷の光に引き寄せられて残りのオーガ四体が一斉のユオめがけて走り出した。
他の残ったタンク達は、オーガの気を引こうと剣で盾を叩いたが、よっぽどユオを危険と判断したのか、言うことを聞かない。四体で一気にユオに畳み掛けるつもりらしい。
メイはユオを助けるべく走っていた。他の冒険者にかけていた【加速】をとき、自分の足に一点集中してかけた。
一気にオーガとの間合いを詰めたメイは一体のオーガの足の小指を水の魔力を付与した剣で切り落とした。
「グァァァァ!!」
小指を切り落とされたオーガは苦痛の声をあげて座り込んだ。メイを捕まえようと手を伸ばしたが、間には剣を構えたユオが待っていた。
ユオの剣はオーガの掌を突き刺し、オーガの手からは血が噴き出した。
「皆のもの、離れろ! 魔法隊、今じゃ!」
オーガの周りにいた冒険者はオーガと距離をとった。
ちょうど一箇所に集まっていたオーガを大きな炎が包み込んだ。魔法隊が長い時間をかけて唱えていたのはこの魔法だったのだ。
炎は天井につくほど高く上がり、熱風が辺りを包んだ。ユオは他の冒険者が火傷をしないように、全員頭上に水球を作り、水をかけた。
オーガたちは大きな炎になす術なく倒された。全てのオーガが倒れると炎は消え、オーガの姿も消えた。オーガのいた所には五つの宝箱が現れた。
一同が戦いの勝利を察し、声をあげて喜んだ。
メイは気が抜けて、その場に座り込んだ。他の冒険者の様に勝利を喜ぶことはなかった。心臓を大きく脈打ち、まだ息が切れていた。
「メイ! 大丈夫か?」
ユオがメイの手を取り立たせた。
「大丈夫……緊張の糸が切れただけ………
すごく……楽しかった………」
メイの瞳孔は開いていた。オーガから出た血飛沫を思い出して鳥肌がたった。
ユオはメイの様子がおかしいことに気が付き、メイの頬をつねった。
「いてててて! ユオ、やめて!」
メイは我に返った。
「ユオ……助かったよ……」
エルメルがユオに近づいてきて声をかけた。
「今度またごちそうしてください」
エルメルは笑って答えた。
「そんなんで良いのか? いくらでも奢ってやる!」




