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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第5章 冒険者

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第75話 ヤーコブの鑑定

「おい、聞いたか! エルメルのやつ、ソッケロの100階層に続く階段を見つけたらしいぞ!」


「ソッケロの迷宮ダンジョンが出現してから15年か……とうとう完全踏破される時がきたのか?」





 ギルドに依頼の報告に来たメイとユオはそんな噂話を聞いた。


「すみません。依頼の報告に来ました。90階層のボスのドロップアイテムの納品です。確認お願いします」


 メイは依頼されていた品をカウンターの受付嬢に提出した。


「はい。確認が取れました。ありがとうございます。黒猫ブラックキャットの御二人の活躍には目を見張るものがありますね! こんなに早く90階層までたどり着いたパーティは御二人が初めてですよ!

 そんな御二人に御相談したい案件がございます。先日、蒼天の鷹の皆さんが100階層につながる階段を発見しました。100階層のフロアボス討伐のための募集が始まっています。黒猫ブラックキャットの御二人にもぜひご参加をお願いしたいのです」


 メイとユオは顔を見合わせてから頷いた。


「ぜひ参加させてください」とメイは受付嬢に伝える。


「ありがとうございます! 本日の午後から街の広場で決起集会や作戦会議が行われますので、集合してください」




* * *




 広場に行く他にも沢山の冒険者が集まっていた。数えてはいないが、ざっと二十名前後位だろうか。五組〜六組のパーティが参加するようだ。中にエルメルの姿もあり、ユオとメイに気が付いて手を振ってくれたので、ユオだけ手を振り返した。


「こんなに沢山の人がいて、いきなり協力できるのかな?」


 メイは集まった冒険者を見て、そわそわした。


 少しすると広場の中央に冒険者ギルドの制服を着たおじいさんが現れた。長い白髭が立派でThe魔法使いといった見た目だ。どうやらソッケロのギルド長らしい。


「おほん……えぇ、皆さんよく集まってくれました。ここにいるのは、ギルドから声をかけられた実力のある冒険者たちです。即席のメンバーで、少し不安かもしれませんが、力を合わせてボスを討伐しましょう。

 儂はソッケロのギルド長を任されているヤーコブじゃ。今回のボス討伐では司令塔の係をすることになった。よろしく頼みますよ。

 ソッケロのダンジョンは出現してから十五年、その大きさからなかなか完全踏破には至りませんでした。いつスタンピードが起こり、中の魔物たちが街に溢れないとも限りません。ダンジョンの完全攻略はフィンド王からも依頼があり多額の報酬が出ますし、国を救った英雄として讃えられることでしょう。

 皆さんならできます! 戮力協心りくりょくきょうしんして頑張りましょう!」


「おぉ!!」


 何人もの冒険者が、ヤーコブの言葉に鼓舞されたのか声を上げた。メイも参加したそうにむずむずしていたが、目立ちたくないようで我慢している。


 静まるのを待ってから、再びヤーコブが話し始めた。


「それでは、作戦を立てるために皆さんの職業やスキルを儂に教えてください。勿論、儂以外の誰かに情報が漏れることはない。一人ずつ、儂に教えに来てくれ。防音魔法をかけて、他の者には聞こえんようにする」


 ぞろぞろとヤーコブの周りに人が集まった。

 メイとユオもその輪に加わった。


 一人ずつヤーコブに近づいて話をした。ヤーコブは胸ポケットから、スティック状の短い杖を出し、一振りすると、ヤーコブの周りの音はこちらからは全く聞こえなくなった。ヤーコブは冒険者の手を取り何かを話していた。

 ユオがメイに耳打ちする。


「恐らく【鑑定】のスキルを使っている。隠し事はできそうにない」


 メイの番がきて、メイはヤーコブに近づき手を出した。


「よろしくお願いします。黒猫ブラックキャットのメイです」


 ヤーコブは杖を一振りして、メイの手を取った。


「よろしくね。おや……君はヴィーエラの娘さんだね。家族から、ギルドに捜索願いが出ていたよ」


「え!?」


 どうやらオルガはセヴェリの説得に失敗したらしい。


「あの………事情があるんです……内緒にしてください」


 ヤーコブは少し考えているようだ。


「君はかなりの強者のようだから、ぜひ今回の討伐に参加してほしい。ボス討伐までは黙っていてあげられるけど、その後は逃げなさい。ボス討伐の報酬は全国の他のギルドでも受け取れるから」


 メイは胸をなで下ろした。


「感謝します。ヤーコブさん」


 ヤーコブはうんうんと頷いて笑った。


「彼氏と夜逃げなんて、楽しそうだ。儂は君たちを応援しているよ。彼氏の方は、ヴィーエラから暗殺者も雇われたと聞いたから、気をつけてね」


 メイが胸をなで下ろしたのも束の間。ヤーコブは不吉な事を言った。


「さて、話がそれてしまったね。えぇと、職業は……驚いた。【調停者】とは……」


「何か知っているんですか?」


 ヤーコブは首を横に振った。


「こういう変わった職業は女神様から何らかの使命を与えられていることは知っておる。それ以外は分からんな。

 スキルも変わっているね。【真実の瞳】【初級薬学】【魔法︰全属性使用可】【上級魔法使い】【マスターヒーラー】【武器︰全武器使用可】【ショートソードマスター】【記憶の水鏡】【強制送還】……

 随分と沢山覚えたんだね。普段は魔法剣を使うのかな? 前衛と後衛はどっちをやってるんだい?」


「普段は魔法剣を使っています。前衛と後衛はどちらでもできます。人数の足りない方に入れてください」


「それは心強いね。では、基本後衛に入って、全員の能力の底上げをお願いしていいかな? できるかな?」


 メイは頷いた。二十人にバフをつけるくらいなら楽勝だった。





 全員がヤーコブと話をして会はお開きになった。


 広場を出ようとしたユオにエルメルが声をかけてきた。


「ユオ、飲みに行きたいから、付き合え。奢ってやる」


「メイは連れて行きませんよ」


「うん。全然いいよ。ユオと二人で話したいから。メイちゃんごめんね、ユオ借りてくよ」


 メイは頷いて、ユオとはそこで一度別行動となった。

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