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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第1章 先生と弟子

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第6話 書店の息子ウィル

 メイが冒険者ギルドを出た後に向かったのは、大通りに店を構える大きな書店だった。

 店の入り口には大きな看板がかけてあり【イブリ書店】と、書かれている。


 メイは書店の入り口から入らずに店の脇から店の裏手にまわり、裏口の戸を叩いた。


「メイちゃんいらっしゃい。入って」


 中から出てきたのは、書店の店長の奥さんだ。


「こんにちは。これ、いつもの薬草です」


 メイは、魔法カバンからオルガに持たされた薬草を取り出し、奥さんに手渡した。


「いつもありがとう。ウィルが二が、薬草は昔からの友人に限って売っていた。メイがオルガに聞くと、薬草は調薬していないから契約違反にはならないと言っていたが、メイには何のことだか分からなかった。


 階段を上がり、二階の突き当りの部屋の戸を叩く。


「どうぞ、入って」


 部屋の中から声が聞こえた。メイは扉を開けて、唯一の友人のウィルに挨拶をした。


「おはようウィル。起きてて大丈夫なの?」


 ウィルはベットから上半身を起こした姿勢で本を読んでいた。

 ウィルはイブリ書店のひとり息子で、明るい茶色の髪で同じく茶色の瞳の少年だ。年はメイより2つ年上である。

 メイはオルガに連れてこられて、ウィルと出会った。ウィルは生まれた時からオルガの治療を受けていたからだ。

 ウィルは生まれつき魔力が多く、身体が多い魔力に耐えられなくて弱ってしまう「魔力過多症」という病に苦しんでいた。人一倍風邪などをひきやすく、すぐ疲れてしまうので、基本自分の部屋から出られずに過ごしている。

 身体が成長し、魔力に耐えられる身体になると改善する病なので、それまで風邪などをこじらせないように安静にしなければならないのだ。


「最近は、すごく身体が楽なんだ。疲れにくくなったから、最近は自分で本も読めるようになったんだよ」


「良かった! それ、何を読んでいたの?」


 メイとウィルはよく本の話をして過ごした。二人とも読書が趣味ということもあり、互いに同じ話を読んで感想を言い合ったり、おすすめの本の情報交換をしていた。


「今は、勇者様の話を読んでいたよ。父さんが言っていたんだけど、この本に出てくる勇者様は実際にいた人なんだって」


 ウィルは頬を染めながら、憧れの勇者の話を熱心に伝えてくれた。


「僕は見に行ったことないんだけど、この街にもこの勇者様の彫刻があるって母さんも言ってたし」


「もしかして、広場にある彫刻かな? 剣を構えたポーズをしていて、すごくかっこいいんだよ! ウィルも部屋から出られるようになったら、一緒に見に行こうね!」


「うん!」


 ウィルは物語の内容を簡単にメイに話してくれた。


 フィンド王国が謎の瘴気に包まれた時、伝承に従って王家は異世界から聖女を召喚し、成功した。

 創世の女神から、勇者の職業を与えられた勇者と聖女がパーティを組み、瘴気の発生源となっていた火山を見つけ、伝説の聖女の力で瘴気を浄化した。

 勇者と聖女は結婚し、フィンド王国で幸せに暮らした。


「勇者様もかっこいいし、聖女様もすてきなんだ! すごく面白いから、この本貸すから読んでみて!」


 ウィルは興奮して、少し息切れしている。


「分かったから、少し落ち着いて」


 メイはウィルが興奮しすぎて倒れないか心配なのだ。メイはウィルを落ち着かせるために、あえて違う話を振った。


 「ウィルは今年、職業診断の儀式だね。いいなぁ、私も早くしたいな」


 フィンド王国では、七才の誕生日に教会で職業診断の儀式を受ける決まりがある。診断された職業で色々な適性がわかり、それに合った職業や業種の修行をするのがこの国では一般的だった。今年で七才になるウィルは三ヶ月後の誕生月に儀式を予定していた。


「ウィルは、どんな職業がいいの?」


「うーん。冒険の物語が好きだから、やっぱり冒険者になれるような職業がいいなぁ」とウィルは言う。


「なれるよ! だって、ウィルのお父さん、本屋さんの前は黒魔道士で冒険者してたんでしょ! ウィルも魔力が多いし、きっと魔法使い系の職業だよ!」


「ありがとう! だといいな!」


 二人はそんな話をしながら、楽しい時間を過ごした。ウィルのベットの横にある窓からは暖かい日差しが差し込んでいた。



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