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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第4章 高等部

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第59話 ダンスパーティー

 中庭では、パートナーを待っているのか男子生徒が何人か待っている。ウィルもその中にいた。今日も肩にケサランを乗せている。黒の燕尾服を来て、髪も後ろに流していた。


「じゃあ、頑張りなさいね!」


 ティナとアイニとエイネは猫背になっていたメイの背中を叩いて励まして、自分たちのパートナーの所へ行ってしまった。


 メイはケープで顔を隠していないのでそわそわと落ち着かない気持ちでウィルに声をかけた。


「ウィル……お待たせ……遅くなってごめんね」


 ウィルは振り返ってメイを見た。大きく目を見開いて息を飲んでいる。


「メイ、ドレスすごく似合ってるよ!」


「ほんとに……?」


 メイは自信がなくて涙目だ。


「ほんとだよ。すごく綺麗だ」


 ウィルがメイの目を見て褒めてくれるので、メイは胸が高鳴るのを感じた。


「はい、メイ。お手をどうぞ」


 ウィルが差し出した手にメイは自分の手を重ねた。






 二人が食堂に入ると、いつもはあるテーブルや椅子が綺麗に片付けられて、食堂はホールのようになっていた。もう、他にも沢山の生徒が集まっている。


 メイはユオは来ているのか、きょろきょろ探してみた。ユオはリンドはすでに来ていて、一緒に飲み物を飲んでいた。

 メイがユオを見ていると、ふとユオと目が合い、ユオは信じられないものを見たとでもいうような表情を浮かべていた。



 そんなに、私のこと嫌だったかな……

 ちょっと傷つくな……




 生徒会長の挨拶が終わり、パーティーがスタートした。

 メイはウィルと一緒にダンスを踊る。授業で習ったので、困ることなくスムーズに踊ることができた。ダンスは剣術の型と似ていて楽しいとメイは感じていた。きれいにターンできると達成感も感じ、あっという間に一曲目が終わってしまった。


 ふたたびユオとリンドの方を見ると、二人は一曲目は誰とも踊っていなかったが、二曲目以降はファンクラブの子たちと順番に踊るようだった。ユウ事件の感謝の思いもあるのだろう。


 四曲目が終わり、次はファンクラブNo.4のメイがユオと踊る番だと思い、ウィルに断りを入れる事にした。


「ウィル、私、ユオとも踊りたいから、行ってきていい?」


 いつものウィルなら、快く送り出してくれるとメイは考えていたのだが、今日のウィルはいつもと違った。


「メイ、お願い。次の曲、好きな曲なんだ。メイと一緒に踊りたい……」


「そっか、オッケー。踊りましょう」


 メイは、せっかくウィルが誘ってくれたので、ウィルを優先することにした。


 ウィルが誘ってくれなかったら、一人で壁の花にならなきゃいけないところだったからね。


 そう、メイは自分に言い聞かせたが、心の中が少しだけもやもやした。


 ダンス中に、またユオと目が合った。今度はメイを睨んでいるような気さえした。




 結局、メイは最初から最後までウィルとダンスを踊った。二人とも休まず踊ったので、額にじんわり汗をかいていた。


「はは……流石に喉乾いちゃったな…… ユオとリンド先輩と合流して、何か飲もう」


 メイはウィルの手を引いて、ユオとリンドが休憩していた所に合流した。

 リンドがメイとウィルに気が付き声をかける。


「お二人さん、ずっと一緒に踊ってたね。僕も今年で卒業だから、メイとも踊りたかったんだけどな」


「それは、ファンクラブの子たちも一緒だろ? 今日はメイは僕が頼んだからね。譲ってあげられないな」とウィルが返した。


 メイは置いてあった飲物を一気に飲み干した。


「はぁ、楽しかった……ダンスってこんなに楽しいだなんて知らなかったな。

 ウィル、誘ってくれてほんとにありがとう!」


「こちらこそ、メイと踊れて楽しかったよ」


 ウィルは笑顔で答え、ハンカチでメイの額の汗を拭いてくれた。



 ユオが不機嫌そうにしているので、メイは何と声をかければいいか分からず話しかけなかった。



 この人は、何をこんなに怒っているのだろうか……



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