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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第4章 高等部

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第52話 隠れ身のミサンガ

 メイは大切な家族や友人たちを守るために何をすべきか考えた。

 自分もケープを被るようになってから、穏やかに学校生活を送れるようになったので、そのような働きをする道具がいくつかあればいいのではないかとメイは考えた。

 メイは何か良い方法がないか学校の図書館で調べることにした。

 トーヤ大学には、とても大きな図書館があり、メイは初等部の頃から毎週一冊本を借りて読んでいたが、とてもじゃないが全ての本を読むことはできていなかった。

 メイは司書の先生に相談することにした。いつもエプロンをつけた先生で図書館の奥のカウンターで本を読んでいる先生だ。メイは心の中でエプロン先生と呼んでいた。


「先生……相談したいことがあるのですが……」


 毎週本を借りていくメイは図書館の常連で、エプロン先生もメイのことを覚えてくれていた。


「あら、メイさん。どうしたの? あなたが好きな物語の新刊は入口の近くに並べましたよ」


「あ、ありがとうございます! それは、そのうち読みます…… 今日は心配なことがあって……

 敵から身を隠す魔法とか、御守みたいな物が知りたいんです」


 エプロン先生はメイの質問を勉強のためと思ったようで感心している。


「メイ、あなたは実技のテストでも、いつも学年首席ですのに、本当に勉強熱心ですね。

 そうですね……いくつか方法はありますが……

 魔法となると継続時間に限りがありますし……

『隠れ身のミサンガ』はどうです? 今、本を出してきますね」


 エプロン先生はメイのために本を探しに行ってくれた。しばらくして、エプロン先生は赤い表紙の分厚い本を一冊出してきた。表紙に「冒険に役立つ手作りアイテム」と書かれている。

 エプロン先生はこの本のページを開いて丁寧に説明してくれた。


「これです。この本のここを見てください。「隠れ身のミサンガ」の効果と作り方が載っています。プロの魔道具師でなくとも作れる、簡単なアイテムですよ」


 メイは本を見て、エプロン先生が指さした箇所を読んでみた。


________________

「隠れ身のミサンガ」

 効果

 敵意や悪意のあるものから、見つかりにくくなる。(自分から声をかけたりすると見つかってしまうので注意)

 材料

 ・好きな色のミサンガ糸

 ・月影石のビーズ

 ポイント

 魔力と思いを込めながら作ってみましょう。

________________


 続きには編み方の編み図が挿絵付きで丁寧に説明されていた。


「材料はトーヤの学用品デパートの手芸コーナーに売っていますよ」とエプロン先生は付け足してくれた。

 メイは目を輝かせてエプロン先生にお礼を言った。


「先生、ありがとうございます! 早速買いに行きます!」


 メイは本を借りて、図書館をあとにした。





* * *





「おはよう……ソニヤ……」


 次の日の朝食。メイはソニヤがいる薬学部のテーブルに来ていた。ソニヤは友人たちと仲良く朝食を食べている。


「おはようございます、お姉さま! どうしましたか? 目の下に隈ができていますよ……」


 メイは昨日夜なべをしてミサンガを作ったので、殆ど寝ていなかった。


「これ、ソニヤのためにミサンガを作ったんだ。つけてもいい?」


 ソニヤが頷いたので、メイはソニヤの左手首にしっかりと緑色のミサンガをつけた。


「お姉さま……これはなんですか?」とソニヤ。


「これはね、悪いものからソニヤが見つかりにくくなる御守だよ。お姉ちゃん、ソニヤが心配だからつけさせてね」


「ありがとうございます! 綺麗ですね!」


 ソニヤは気に入ってくれたようで、自分の手首を見て喜んでいた。





 メイはユオとリンドの分も作ってあった。

 いつもの魔法剣専攻のテーブルに行くと二人は既に食べ終わったのか、お茶を飲んでいた。

 メイに気がついたユオがメイより先に声をかけてきた。


「メイ、目の下に隈ができてるぞ……昨日寝てないのか?」


「うん……これ作ってたら、結構時間かかっちゃった」


 メイは黒いミサンガと葡萄色のミサンガを二人に渡した。黒がユオで葡萄色がリンドの物だ。


「悪いものから見つかりにくくなる『隠れ身のミサンガ』っていうミサンガだよ。図書館の先生に教えてもらったんだ。

 二人とも聖女様のこと苦手みたいだから、御守になればいいかなと思って作ってみたよ。気休め程度にしかならないかもしれないけど……」


「メイが作ってくれた物なら、なんでもうれしいよ。ありがとう。つけてくれるか?」


 ユオが喜んでくれて、メイはほっと息を吐いた。

 「こんな物、鬱陶しくてつけられない」と言われるのではないかと少し心配していたのだ。

 ユオの手首にメイはしっかりとミサンガを結びつけた。


「メイ、昨日は悪かったな…… 聖女様とは何もなかったか?」


 リンドは昨日のことを謝ってくれた。昨日あったことを二人に相談すべきか、メイは悩んだが食堂には他の生徒も沢山いたので、言葉を濁した。


「うん…… あったには、あったよ。ここでは、言えないからまた今度相談させてね。はい、リンドにもつけてあげるよ」


 メイはリンドの手首にもミサンガをつけた。


「これでよしと。あんまり効果が感じられなかったら、言ってね。他の方法も検討してみるから」


「メイ、ありがとう」とリンドは心を込めてお礼を言った。


――その時、背後から急に声をかけられた。


「メイ、おはよう。今日はリンド様はいないの?」


 ユウは今日も気配なく現れた。

 一同はビクッと驚いたがユウは気にしていないようだ。

 そして、ユウには目の前にいるリンドが見えていないらしい。

 メイはびくびくしながらユウに返事をした。


「おはよう……先輩はもう食べ終わって行っちゃったよ」


「ふーん。そっかぁ…… メイ、昨日言ったこと忘れないでね……」


 ユウは不気味にそう言い残すと食堂を出ていった。

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