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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第3章 トーヤ大学入学

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第47話 ユオの冒険【番外編】

 漆黒の宮殿の中で、父と母が言い争っているようだ。

 ユオは喧嘩する二人のことが心配で、止めに入るべきか悩んだが、入ってはいけないような気がして、柱の陰に隠れて二人を見ていた。


「本当にあの女を側室に迎え入れると言うのですか?」


「そうだ」


「私とあの子のことは考えては……くれないのですか?」


「先代も多くの側室を抱え、私も兄弟たちと生きるか死ぬかの死闘を経て、王にまで昇りつめた。私の息子もそうであるべきだと私は思う」


「なら、私を殺してください。あなたが他の女を愛することが我慢なりません。

 どうか、私の願いを叶えてください」


「…………いいだろう」


 父が母を抱きしめたように見えた。母からは、赤黒い何かが滝のように流れていた。

 母は死の間際、父の唇に自分の唇を重ねた。





* * *





「やめろぉぉぉ!!!」


 ユオは、久しぶりにあの時の夢を見ていた。父が母を殺した日の夢だ。

 叫び声を上げると同時に目が覚めた。寝汗をかき、全身が汗でぐっしょりと濡れていた。ユオは夢の中の光景を追い払うように頭を掻きむしった。


 メイと一緒に過ごすようになってから、見ることのなかった悪夢。

 一人になると思い出す、あの不快な感覚。

 ユオは吐き気を感じて、部屋の洗面器に嘔吐した。

 蛇口から水を出し、口と顔を洗った。


 これでいい……あの時の気持ちを忘れるな……





* * *





 ユオは夏休みに入ってから、一人でフィンド王国の南西にある迷宮都市ソッケロを訪れていた。この街にはフィンド王国で一番大きなダンジョンがある。世界中から、このダンジョンを攻略するために冒険者たちが集まっていた。


 ユオはダンジョンに入るために、この街の冒険者ギルドを訪れた。

 ギルドの中は冒険者でいっぱいで、ユオ位の子どもは一人もいなかった。ユオを見た冒険者が皆、怪訝そうな顔をしている。

 ユオはそういった視線に構わず、カウンターの受付嬢に声をかけた。


「冒険者登録がしたい」


 受付嬢がユオに気がつき、辺りをきょろきょろ見渡す。


「新人指導員はいないの? 君くらいの年の子は新人指導の冒険者が一緒じゃないと、冒険者登録もできないし、お仕事もできないのよ」


 面倒な、決まりだ……


「私は、その辺にいる冒険者よりは強い。受付なのに、そんな事も測れないのか?」


 ユオはこの発言で辺りにいる冒険者と受付嬢を敵に回した。皆がユオを睨んでいた。なんだ、あの生意気なガキはと周囲からざわめきが起こる。

 騒ぎを聞きつけて、一人の男がユオの前に出てきた。


「どうしたの? 揉め事?」


 男は穏やかな雰囲気で、受付嬢に話を聞いた。


「聞いてください、エルメルさん! この子、子ども一人で冒険者登録しようとしてるんですよ!」


 エルメルと呼ばれた男はユオを見た。藤色の髪と瞳。長身の男で重そうな鎧を着ている。背中には大剣を背負っていた。

 ユオと目が合い、エルメルの瞳の色が一瞬濃くなったような気がした。


「冒険者登録してあげて。この子は大丈夫だよ。

 ソッケロのダンジョンでも二十階層くらいまでなら、一人で問題ないと思う」


 受付嬢は驚きであんぐり口を開けている。


 この男【鑑定】が使えるのか、見るだけで使えるとは驚きだ。


 ユオは感心して大剣の男を見た。


「でも、エルメルさん……」


 受付嬢はまだ受け入れられないらしい。


「じゃあ、新人指導員の所に俺の名前書いといてくれていいから。何かあったら、俺が責任取るよ」


「エルメルさんがそこまで言うなら……」


 受付嬢は渋々、必要事項を記入し、ユオに登録証となる銀色のプレートを渡した。


「ありがとう……」


 ユオはエルメルにお礼を言った。

 エルメルは笑顔だった。


「全然。気にしないで。本当のこと言っただけだから。

 でも、約束して。さっきも言った通り、二十階層からソロで行くのは無理だから、それ以上は一人では行かないで。」


 ユオはエルメルの忠告に素直に頷いた。


「君の名前を聞いてもいいかな?」


「ユオです」


「オッケー、ユオくんね。

 俺は、エルメルだ。一応この街で最強パーティの「蒼天の鷹」のリーダーをしている。何か困ったことがあれば、頼ってくれていいよ」




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