第41話 帰省
秋も深まり、朝の気温は大分低くなってきた11月の朝。食堂で朝食を食べているメイの所に青い隼が手紙を一通落として飛んでいった。
ユオの失踪事件以来、メイとユオの間には少し距離ができていた。メイはユオに嫌われたくなかったので、ユオと適切な距離で接することに努めていた。対価で魔力を渡す時には、どうしても手をつながなければいけなかったので、手をつないだが、ユオはメイの顔を見ないようにそっぽを向くようになっていた。食事の時も以前だと、常に隣に座っていた二人だったが、朝食の時は大抵間にリンドを入れて座った。リンドも最初は「なにこれ!? なんで、僕を間に入れるの!」とツッコんできたが、最近では慣れたのか何も言わなくなっていた。
手紙の宛名を見ると、その手紙はオルガからだった。手紙には、メイのことを心配していることや、年末年始の休暇で早くメイに会いたいといったことが書かれていた。
追伸
メイを驚かせたくて、内緒にしていることがあります。会ったら教えるね。早く会いたいです。
オルガより
と最後に付け加えられていた。
「そうか……もうちょっとで、年末年始休暇か……早く先生に会いたいな」とメイは呟いた。
「メイは、休暇は実家に帰るのか?」とドルが話に入ってきた。
「もちろんです! ドル先輩は帰らないんですか?」
「帰らないね。残っていても良いことがあるんだぞ。新年のお祝いに、ご馳走がでる」
「そうなんですね!」
「私も学校に残る」とユオが急に言い出したので、メイはびっくりした。当然一緒に帰るものだと思っていた。
「え? なんで? しばらく会えなくなっちゃうよ? 魔力も渡せなくなっちゃうよ?」とメイはユオに聞いた。
「向こうに帰ると、猫で過ごさなきゃいけないだろ? 急に人型で行ったら、皆びっくりするだろうから……
それに猫型だと、食事がほぼ煮干しの生活に戻ってしまう。私はトーヤの食事が気に入っているから、残る。魔力のことは気にしなくて大丈夫だから、メイだけ帰ればいい」
また、ユオに会えなくなってしまうと考えるとメイは寂しさで胸が締め付けられる思いだった。
* * *
帰省の日、他の生徒はスーツケースを持って、続々と帰っていった。
ユオは校門までメイとウィルを見送りに来てくれた。
「本当に残るの……?」
「あぁ。休みが終わったらまた会えるから……」
メイはユオに抱きつきたかったが、また嫌がるだろうと思って我慢した。
「じゃあ、またね」
メイはウィルと馬車に乗った。馬車が走り出し、ユオが見えなくなるまで、手を振り続けた。
* * *
フィンド王都につくと、馬車の停留所にはオルガとセヴェリが待っていてくれた。二人を見つけたメイは馬車を飛び出して走り、オルガに抱きついた。
「おかえりなさい、メイ」
「ただいま、先生! 会いたかった!
あれ……先生、今、先生のお腹、ぐるんっていったよ」
「え! 嘘! ちょっと聞かせて」とセヴェリもオルガのお腹に耳を当てた。
オルガはその様子を見て笑っていた。よく見ると前に会った時よりも、オルガは少しふくよかになった気がする。
「メイ、赤ちゃんができたのよ」
メイはオルガの報告を聞いて、きらきらした目でオルガを見た。
(先生に赤ちゃん! うれしい!)
「先生! おめでとうございます! 私、お姉ちゃんになるのね!」
「そうよ。うれしい?」
「うれしい! すっごくうれしい! 生まれてくるのはいつですか?」
「六月はじめが予定日なの」
「じゃあ、夏休みで帰ってきた時に会えますね! 楽しみです!」
メイはオルガの少しだけ膨らんだお腹に何度も頬ずりをした。




